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番外編

 季節の移ろいはあっという間。

 秋が寒い冬に変わり、指折り数えていれば春はもうすぐ目の前なのだから。


 それでもまだ私には暖炉の暖かさが必要だ。

 椅子に座る私の膝上には優しい柄のブランケット。

 身体を冷やさないようにと皆が気遣ってくれる。


 大きくなりつつあるお腹はきっと夏が来る前には私に幸せを持たらすだろう。

 それが例え、偽りだったとしても私にとっては得難いのだから。


 ジョルジュの話ではカークス様がメリル様と正式婚約したという。

 しかも伯父である国王陛下の祝福も受けたのだとか。


 なんという差だろうか。


「未練がましいわね、私も……」


 つい、こぼれてしまう本音。


 だが、後悔してはいない。 ジョルジュと結婚した事。


 寄宿学校在籍時、先生という名を騙る魔術師は言った。


『他人の心を操りたいなら、それ相応の対価が必要だ』


『対価とはどのような?』


『お前の身だ』


『私の純潔が対価だとおっしゃるの?』


『ずいぶんと自分を高く見ているのだな』


『どういう意味ですの?』


『数年後にはそれがわかるだろう』


 ヒューゴもジョルジュも、メリル様もカークス様も夢のお告げに騙されて思い通りになった。

 そこに私への様々な感情があったから利用できたのだ。


 なのに、あの魔術師はペテン師だ。

 本来なら私のお腹にはカークス様の子が宿るはずだったのに、どうして。


 私は魔術師に会いに行った。

 ジョルジュにはキャンベル家に行くと伝えて。

 信じたかどうかはわからないが、考える余裕はなかった。

 だから満月の夜だったのは気付かなかった。


『カークス様の子はできなかったわ』


『当然だろう、それが運命なのだから』


『では、貴方の言う対価とは何ですの?』


『それを今から頂くのだ』


 あの魔術師の言う対価というのは、もしかしたらそういう事だったのだろうか。


『見た目がそなたの夫に疑われる事はないだろう』


 そう、あの魔術師は私の中に魔術そのものを授けたのだ。

 憎らしい、このお腹を蹴ってやりたい。

 なのにそれでも、身体中から感じるこの喜びは隠しようがない。


「アイリス、身体は冷えてないか?」


「えぇ、大丈夫」


「春とは言ってもまだまだ寒い。 大切な身体だからね」


「もちろんよ」


 ジョルジュは心から愛してくれている。

 きっと産まれて来る子はジョルジュによく似ているだろう。

 その子が魔術を持って出て来る事など、彼は何も知らずに。


 それでもいい。 私は全てを受け入れる。

 これが私の運命なら、この子の運命もまた逆らえない。

 私は男爵家の令嬢だ。 アイリスだ。

 アイリスとして、ジョルジュを愛して行くと決めたのだ。



これにて番外編を含んだ完結となります。

評価等、お待ちしています。

よろしくお願いします。

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