そこのけ、そこのけ、沖田が通る!!
静寂の中に色がある、座れば野花、立てば野に吹く風の如し、
美奈兎がその女に感じた事だ、今は睨みをきかされて動けない己を感じている、
鳥肌が立つ、空気が清んでいく、いや、凍りつく、美しい──それ以上に恐ろしくもあった、
例えるなら、それは月と狩りの女神アルテミスである。
そして、その時間は唐突に破られる。
ガン、ガン、ガン、ガァン。
「なぁ、何で雄二、アンタはいつも、いつも、他の女にチョツカイだすのカナ」
ガン、ガン、ガン、ガン
「そんなに下半身に血溜まっているのカナ?……
私ならいつでも……『ポッ』
そうだ、今しよう、直ぐしよう、子作りしよう」
「いぃ、痛くしないで……しくしく」
盛りのついた牝犬と首根っこ掴まれ、頭ガンガンされている駄犬がじゃれあう……
まるで浮気がバレた若夫婦の修羅場映像だが、
つまる所、銀狼の女は葉月──
チャンチャンっう落ちでした。
っうか、この腑に落ちない感……すげえ可愛い子ちゃんを見つけたのに彼氏がいて、しかもバカップルで拗らせまくちゃっている感じ……
この心を何に例えよう、願わくば時間を返して欲しいという残念な結果である。
「っで、そっちのパンツちゃんは私の雄二をこんなにして、
どうするのカナ」
あぁ多分、突っ込んだら負けだろう、残念……
もとい、葉月が因縁をつける。
「……私は、すでに死んでいる……」
見ろ、雄二がゴミのようだ。
新ためて見ると葉月は銀色のモフモフ犬耳娘、四谷はボロ雑巾、
美奈兎は苦笑した……後。
ばっ。
「……興醒めです、でも、ここは引くのが吉でしょう、
それと二度と私の前に姿を見せないで下さ……ゲフ、ゲフ、ゲフ」
カミカミで彼女は悠然とこの場を立ち去る、
何故か?
いや、
今咳き込んだ時に吐いたであろう、血、血溜まりを残して。
一方、安堵と共に二人は困惑している。
「「…………」」
「何故?何故?血──?雄二との戦いのせいカナカナ?」
「ち、違う──俺の剣など1ミリも当たりもしなかったゼ、ありゃ化け物だ」
「「…………」」
((はぁっ、吐血、三段突き──))
「「今は皆、何もかもが懐かしい、沖田──」」
((キャラか──キャラなのか──
沖田 総司のキャラ立ての為か──))
面白夫婦が残念妄想を育む頃、
二人の中で、沖田歌舞れのパンツ女を
『残念無双』と認定した事を間宮 美奈兎は露も知らなかった。
次回、第2章爆進!!