鎖す世界 3
少しづつ凶悪犯罪の描写がありますのでご注意下さい
3、4人位の大人が倒れてる暗い部屋に
必死で灯油を投げかける
背後に小さい少年が立ち竦む
その小さな首に両手を回し押し付ける
苦しい声が聞こえ少年の手が俺の方に伸びてくる
躊躇する事なく力を込める
次第に苦しむ息遣いも消えていく
マッチに火を付け
一瞬で真っ赤に染まる
その下に少年の見開いた目が俺を見続けていた
「おい!おい!大丈夫か?」
遠い世界から帰ってくる時は、こんな感じなのだろうか
典明さんの声で現実に戻る
汗だくの俺だ
「どうした、魘されていたぞ」
「あっ」一瞬今の状況が解らないでいた
「茂さんは?」
「もう大丈夫だ、傷も思ったより深くないし出血も止まって熱もないは」
「良かったです」
そう言い茂さんの寝てる部屋に行く
あこも、その横で寝ていた
昨晩の嵐が嘘のように、穏やかに澄み切った空だった
典明さんと縁側に座る
「慣れてるんですね」
「ん?」
「傷の手当」
「あ、昔自衛隊にいてたからな」
「そうなんですか」
だからガタイがいいのかと思った
「おまえ時々魘されてるやろ、茂さん言ってたぞ心配しとった」
その事には何も言わない俺
「典明さんは凄いですね、あんな時でも人を助けられる」
「俺は、この島に逃げて来た 凄いもんか、むしろ逆で弱い人間さ
自分で自分が嫌になり解らなくなって流れ着いただけや」
典明さんの表情は今迄見るものと違ったいた
少しして茂さんと、あこも目を覚ました
痛がる茂さんに、あこは優しく心配そうに背中をナデナデしている
嬉しそうな表情で
「ありがとうな、もう大丈夫じゃ」
俺達にも
「すまんかったな、命拾いしたわ、ありがとな」と言う
もとはと言えば俺のせいなのに
自分のせいのように謝る茂さんだった
典明さんに連れられ島の小さな病院に茂さんを連れて行った
検査の待ち時間で
典明さんは話だした
「この島に来るまでは人と会う事や関わる事を避けていた
人が幸せそうな姿を見ると妬み
家族で戯れる光景を見ると腹が立つ
とにかく何もかもに嫌気がさして自分を抑え切れなくなり、この島に来た」と話した
聡は、何故来たと聞く
「もし俺が犯罪者だったらどおしますか?」
「どうするかな?
俺も犯罪者みたいな者だ、いや犯罪者になりかけてたと言った方がいいかもな」
処置室から茂さんが出て来た
「すまんかったな、もう大丈夫だ」
嬉しそうに、あこが寄って行く
家まで送ってもらい降りかけると
「じぃ、聡今日借りてもいいか?」と聞いた
「おぅ、よかやで1日貸したるわ」と笑う横で
あこが少し淋しい顔した
そのまま典明さんの家に行った