閉ざされた扉
典明さんの家は、こじんまりした生活感がない殺風景なものだったが綺麗に整えている
部屋の端に綺麗に布団が畳まれて、ローテーブルが置いてあった
「座れや、じぃさんの所では酒ばっかりやろ?」
「はい」
「ビール飲むか?オリオンやけど」
「はい」
冷えた缶のまま渡された
「ありがとうございます」
小さなテレビの端に置かれてる写真が気になり見てると
「あれは、死んだ息子や」
「病気かなにかですか?」
少し躊躇した感じで
「殺された.....
未成年の男5人にな.....
まだ20歳だった
正義感の強い子で.....
たまたま通った帰り道で見知らぬ女の子の悲鳴を聞き
その方に行くと5人の男に取り囲まれてて
放っておけなかった息子は男らに怯む事無く
女の子に何するんだと声を掛けた
そうすると今度は矛先が息子に行き
5人で寄ってたかって殴りつけるは
無抵抗になった息子に今度はライターで服を焼き
もがき苦しむ様子を笑ってみてやがった......
死因はショック死だった
警察から連絡入り息子の姿見た時は
この俺ですら、まともに見れないほど
顔は腫れあがり変形して全身は今迄に見たことのない
惨い色をしていた
後で解った事だが、助けようとしてた女は、そいつらの友達で
ちわ喧嘩だったらしい
なんで.....
なんで、そんなちわ喧嘩を止めに行った!
たったそれだけの事で、なんで見ず知らずの息子をリンチしたのだと
怒っても怒り狂っても息子は戻っては.....」
俺は今どんな顔して聞いてるのだろうか?
俺をどんな風に見てるのだろうか....
典明さんは続けた
「まだ少年法が改正されない時で、そんな惨ったらしい殺害をしておきながら
少年法に守られ何年かしたら普通の生活に戻り
普通に、どこかの街で暮らし美味しいもん食いながら笑い
家族を持って笑いながら家族団らんし
世間からも息子の事など何一つも覚えてない
そんな状態が許せるのか!
たったの20歳の息子が苦しみもがきながらな命を失い
法が許して裁かないのなら
俺は絶対に許さん
許す訳がないだろ
それから日々加害者達を息子と同じ目に合わせてやると
情報収集するが
この国は加害者の人権ばかり守り被害者遺族には全く情報を渡さんどころか
逆に犯罪者みたいな扱いをしやがる
それから10年近くなって一人の男の居場所が解り
俺は復讐する事を自分自身だけに誓って
仕事も辞め妻とも離婚した
やっとの思いで、その男と接触出来そうな前日に娘が来た
俺が一人で復讐計画をしてる事を知ってな
俺に言った
(お父さんの気持ち苦しい程解る
私も、お母さんも同じ気持ちだよ
弟を、あんな殺され方して忘れたくても忘れられない
今でも夢を見るの、見てない姿なのに苦しんで助けて助けてって叫んでる弟の姿をね
でも、私にも家族が出来たの
新しい命も授かったの
お父さんの子供は弟だけじゃないのよ
お父さんが犯罪者になったら私は?
私達家族は、どうなると思う?
またあの少年達の被害を、もう一度受ける事になるのよ
弟の事は一生忘れない
加害者を一生許さない
でもね私も幸せになりたいの
幸せな家族を持ちたいの
一生加害者の被害者で終わりたくないの)
そう言われて、この10年息子の事だけ見て考えて
俺の目の前にいる娘や妻の事を何一つ見て無かった事に気付かされた....
加害者の男の元に行く事を躊躇してる間に
その男は、また何処かに消えた......
娘の気持ちと俺の心の格闘で酒に溺れ
益々復讐心に掻き立てられた時に
同じ被害者仲間から、この島の事を聞き、ここに流れついた」
淡々と話した目は死んだような俺自身の目を見てるようだった




