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三界大戦記―好色皇子と三界の姫たち―  作者: 安里優
第三部:人界侵攻・龍玉編
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第35回:反攻(下)

「兵を引き上げるだと! どういうことだ」

「そう言われてもな」


 初老の男は言って大きく鼻を鳴らした。

 禿頭のその大男は、たっぷりとした髭を三本に編み込み垂らしていた。中でも中央の一本は長くびっしりと編み込まれ、鎧に包まれたその胸のあたりまで垂れている。


 髭で表情はうかがえず、その声もその姿勢も険しい。腕に盛り上がる筋肉のすさまじさといい、戦士としての厳めしさというものを体現しているかのような男であった。


「どうもこうもない。言葉通りだよ。お嬢ちゃん」


 そんな男だから、お嬢ちゃんと揶揄するように言われても、ローザは怒りなど感じはしなかった。

 旭姫とも呼ばれる武将であるローザであるが、目の前の男が戦士として積み上げてきたであろう年月に比べれば、ずいぶんと年若いことは否めない。


 それよりも、問題なのは男の主張の内容だ。

 彼女は隣にいるヴェスブールの戦王マテウスの存在を意識しながら、男の後ろに控えるようにしている『聖鎚の守護者団』団長の姿に視線をやる。

 今回の戦に当たって、修道騎士団のとりまとめは『聖鎚の守護者団』の代表者であるカールフランツが務めていた。

 ローザたちと戦略の策定に携わっていたのも彼だし、数多の修道騎士団を招集したのも彼だ。


 しかし、いま、カールフランツは一歩下がって口を引き結んでいる。

 話しているのは、カールフランツの招集に一番に駆けつけたものの、その後は黙々と働いてきた『狼の友』団団長オットーに他ならない。


「修道騎士団は兵を引き上げる」


 オットーはまだらに白くなりつつある髭の束を振って、もう一度そう告げた。


「うちの女教皇(おっかさん)がそう決めた。だから俺たちは去る。それだけのこった」

「それだけだなどと……!」


 ローザが息を詰まらせながら言うのに、オットーは困ったように首を振った。


「まあ、あんたが言いたいこともわかる。あんたがたからしたら、率先して魔族への攻撃を唱えてた俺たちが……。ま、言い方は悪いが、そそのかしておいて逃げるのかってなとこだろう。それもたった一度負けただけでってな」


 それはまさにローザが大声でぶちまけたい事だった。さすがにそれをしないだけの理性はあったが、向こうから言われると頷く他ない。


「わかりはするが。まあ、だが、そういうもんだ。呑み込んでもらうしかないわな」

「厚顔きわまりない話だ」

「そうは言うがなあ」


 おそらくはそり上げたのではない禿頭をぺちぺちと叩いて、オットーは困ったような声を放つ。


「俺たちには俺たちの都合があるわけでな」

「誰にだって都合はある!」

「まあ、そうだ。だが、俺たち……いや、修道会はあんたらに勝ち目がないと見ちまったんだ。だから、自分たちで備えることにして、兵を引くと決めたのさ」


 ひたすらに勝手な言い分に、もはや怒りというのも生やさしい感情に襲われているローザであったが、相手の言葉にひっかかりを覚えないほど頭に血は上っていなかった。


「備えるだと? なんに備えるというのだ? 魔族に対抗するというなら、我らと協力すべきではないか。あるいは、あくまで勝ち目が無いと見るなら捨て石にすることも考えられる。いずれにしても、いま引き下がる意味がわからんではないか」

「捨て石云々はともかく……修道会は魔族に備えることももちろん考えているだろうよ。だが、女教皇(おっかさん)が見据えているのはそれだけじゃねえ」


 そこで、歴戦の戦士オットーはその瞳に、彼には似つかわしくない表情を浮かべた。

 それが憧憬であると見たローザは、妙に胸がざわつくのを感じた。


「あのお人が見てるのは、たぶんこれから生じる混乱だろうな」

「混乱だと?」


 その言葉の意味を考え、そして、旭姫は皮肉っぽく笑みを刻んだ。


「なるほど、混乱か。我らの敗北はすでに規定のものとし、その後に生じるであろう戦王国群北辺の空白をこそ重視するか。父がいたからこそ戦王国群北辺は治まっていたのだからな」


 ローザの言葉に頷きながらも、オットーはその髭をしごき、考えるように言った。


「さて、どうかな。俺はどうもそれだけじゃねえ気がしてるけどな」

「なんだと?」

「雷将の名は大したもんだってことだよ」


 急に父を賞讃され、ローザはかえって警戒するように目を細める。


「ソウライでの魔族の撃退を不可能と見たってのは言う通りだろうさ。出鼻をくじかれたってのはでけえ。残念だが、けちがついた戦ってのはそうそう簡単に盛り返せるもんじゃねえからな。それにあんたらの王国が弱体化するだろうことも、まあ、予想の範疇だ。丸ごと無くなるまでいかずともな」


 オットーがひょいと肩をすくめるだけで分厚い筋肉がうねる。ローザはその様子を無感動に眺めた。


「だが、それで生じる空白なんぞはそこまでのものじゃねえ。それを埋める勢力がすぐに出てくる。それこそいくつもな。あそこはそういう場所だ。だが、離れた所ほど動揺はひどくなるんじゃないかね。さっきも言った通り、雷将の名はでかすぎる」

「戦王国群の北辺に留まらず、アウストラシア全土が揺れると?」

「ソウライ占領だけでも十分に大事おおごとではあるがな。それを阻もうとした雷将が……となれば、効果はより大きくなる」


 口を開こうとするローザを押しとどめオットーは続ける。


「それを阻むためには、あんたの言う通り、ここで奮戦するのがいい。一時的にでも魔族をやり込めることが出来りゃあ、それで動揺は収まるだろうさ。だが、なあ」


 彼はそこで言葉を切った。先ほど述べた読みをもう一度語るつもりはないのだろう。


「まあ、そう悲観するもんでもねえ。撤収の命は下ったが、いつまでとは言われてねえ。そして、あんたらのために残ろうなんて物好きもいやがる。たとえばこのカールフランツとかな」


 その場の視線が全てカールフランツに集まる。

 男は皆の注目を浴びているのに気づくと、暗い顔にわずかに照れたような表情を浮かべた。


「しかしだな……」

「もういいだろう」


 そこまで黙って話を聞いていたマテウスが、なおも言いつのろうとするローザを遮った。


「もはや決定は下ったのだろう。ならば、議論をしてもしかたあるまい。時間の無駄だ」


 そう切り捨てて、彼はでっぷり太った腹を揺らす。


「引き上げるというならば、引き上げさせればいい。無理に戦わせても戦力になどなるまいからな」

「マテウス殿、しかし……」


 なにか言おうとしたのだろうが、結局、ローザの口から言葉が出てくることはなかった。

 彼女も、いまさら引き留めても意味が無いことはわかっていたのだ。


「ただし、糧食や予備の武器は置いていってもらおう」

「おいおい。そりゃあないぜ。俺たちが持ってきたもんだろうが」

「そうだな。だが、諸君はこの軍に合流した。参加を取りやめて去ろうというのはともかく、物資に関しては軍の管轄だ。君たちが自由に出来るものじゃない」


 そこで、マテウスはふんと鼻を鳴らした。


「それとも、まさか脱走兵の如く全て持ち逃げするかね? 誇り高き修道騎士団が?」

「むう……」


 オットーの禿頭がてっぺんまで真っ赤に染まる。彼は湯気でも出そうな勢いで歯を食いしばり、何事か考えていたようだったが、出てきたのは諦めたような長い息だった。


「鎧までおいていけとは言うまいな?」

「鎧に武具が二、三点。それで十分だろう? 残るという同輩たちに武器を置いていってやるくらいの慈悲の心も必要ではないかね?」

「この強突く張りめが」


 野太い声で罵倒しながらも、オットーはそれ以上マテウスを追及するのを諦めたようだった。


「しかたあるまい。……まったく、さすが商売が上手いものだ」


 頭に浮かんだ汗を手でぬぐい取りながら、感心したように言うオットーにマテウスはにやりと笑いかける。


「それが生業だからな」


 さすがに脱走兵とまで言われては、オットーとしてもあくまでも自分たちの保有する物資は自分たちのものであり、それを携えて引き上げると主張するのは難しい。

 この短いやりとりで、マテウスはまんまと多くの物資を手に入れたのだ。


「ともあれ、立ち去るというなら静かに去りたまえ。こちらの手をわずらわせずにな」

「おうともさ」


 厳しい声で言うマテウスに、オットーは荒々しく応じる。それから、歴戦の戦士はくしゃりと顔を歪めた。

 髭で判別がつきがたいが、おそらくそれは彼なりの笑顔なのだろう。

 よく見れば、それなりに愛嬌もあった。


「俺としては、あんたらの幸運を祈るよ。魔族を食い止めるってのは俺たちにも共通する願いだからな」

「ありがたく受けておこう」


 ローザはその調子の良い言葉に怒りの表情を見せていたが、マテウスは淡々と受け止めていた。


「ああ。あんたらには間違いなく幸運が必要だからな。それも……たんまりと」


 最後にそれだけ言って、オットーは部屋を出て行くのであった。



                    †



「それにしても、だ」


 オットーが出て行った部屋の中、肩を落として申し訳なさそうな顔をしているカールフランツにローザは声をかけた。


「なぜあやつが首領のごとき振る舞いをするのだ? 基本的にはこれまでカールフランツ殿が代表者であったろうに」


 彼女の問いかけに顔を上げ、言葉を選ぼうとするかのように視線を泳がせるカールフランツ。その姿を見て、マテウスがまず話しかけた。


「おや、ヴィンゲールハルトは修道会についてはあまり教えてくれなかったのかね?」

「修道会についてですか」


 ローザはその燃え上がるように鮮やかな髪を振り、少し思い出すようにした。


「そういえば、あまり……。雇い入れている間は信用できる存在だということは経験上もわかっておりますが」

「そう、なにもない時はな。彼らは頼りになる。実によく訓練されていて、実に秩序だって行動する。勤勉かつ実直、なによりも規律正しい。それは騎士団も官僚団も同様だ」


 そこでマテウスはちらりとカールフランツのほうを見る。それを受けた青年は了承するように小さく顎を動かした。


「だが、彼らは、上の者の命令には絶対的に服従する。骨の髄までたたき込まれた規律の最優先事項がそれだからな。たとえどんな誓約を交わしていようと、ある一定の上位者からの命令は全てを超越するんだ。それが枢機卿、もしくは教皇の命令だな」

「枢機卿と教皇というのは、ソフィア修道会の幹部たちのことですね? それくらいは知っているのですが……。騎士団ごとの独立性がもっと高いものかと思っておりましたが」

「とんでもない。彼ら騎士団は全て内陣イナーサークルの指導者たちの指示に従っている」


 そこでカールフランツの眉がぴくりとうごめいた。

 マテウスが口にした言葉が、彼らの組織の秘奥中の秘奥であるためだ。だが、止めるほどでは無いと判断したのか、結局口を開かなかった。


「究極的には騎士団が各勢力と契約を交わすのも、全ては枢機卿や教皇の指導下にあることとも言える」

「さすがにそこまで細かいことは指示されたりはしませんが……」


 マテウスの語る内容に目を丸くしているローザの様子を見て、苦笑のような表情を浮かべてカールフランツは補足する。


「とはいえ、教皇猊下の命が全てに優先することはマテウス殿の仰るとおりです。我々は厳格な組織ですから」

「だが、君はそれに背いている。違うかね?」

「背いてはおりません。ただ、少々用事があるので、遅らせていただいているまでで」


 くっくとマテウスが喉を鳴らす。その笑いに同調しつつも、ローザは確かめずにはいられなかった。


「それで、その遅れてもいいと思ってるのはどれほどの数なのだろう?」

「千に届かないほどです」


 カールフランツの返答は複雑なものであった。残る者たちに対する誇らしさと、それだけしか残らぬという申し訳なさが同居した、細い声。


「五千は戻る、か」


 規律を保った兵が五千抜ける。とてつもない痛手だ。

 それでも、ソフィア修道会という組織がマテウスが先ほど説明した通りのものならば、残る者が多すぎるくらいなのだ。

 ローザは握っていた両の拳を開き、また閉じと何度か繰り返す。そうすることで掌が汗でべっとりだったことを意識して、彼女は妙におかしな気分になった。


「ともあれ、あるものでなんとかするしかありませんな」

「その通り」

「はい。これまで以上の働きを見せましょう」


 ようやくに落ち着いた――と自分でも思える――声で言う旭姫に、二人の男は同意する。マテウスは静かに、そして、カールフランツは勢い込んで。

 扉がすさまじい勢いで叩かれたのは、そんな時であった。


「なんだ、うるさい。入れ」


 そうして開いた扉から、転げるように入ってきたのはローザの侍女頭リリィ。

 彼女は息を切らせながら、しかし、肺の中の空気全てを絞り出すように叫んだ。


「ヴィンゲールハルト様がお目覚めになりました!」


 と。



                    †



 ヴェスブール郊外。

 わずか半月前に一万六千の軍勢が勢揃いした同じ場所に、いまはその規模を一万人を割るほどに縮小した討魔軍の姿があった。


 時間も同じ、夜明け前。


 まるきり同じでありながら、人数だけが減っているその状況が、兵たちの心に苦いものをもたらしている。


「我が父、雷将ヴィンゲールハルトはいまも床についている」


 いま、壇上にあるのは、旭姫ローザロスビータ、ヴェスブールの戦王マテウスアンドレアス・アンゲラー、『聖鎚の守護者団』団長カールフランツ・エダー。

 以前から比べればわずかに一人、ヴィンゲールハルト・ミュラー=ピュトゥのみがいない。


 だが、その不参は兵たちの心情的には大きなものであった。

 だからこそあえてローザは父の病状を語らねばならなかったのだ。


「だが、これは私のわがままだ。此度はたまたまいろいろなことが重なって倒れてしまったのかもしれぬが、今後はわからない。これを機に静養してくれという願いを聞いてくれた結果だ」


 そこで、彼女は軽く肩をすくめた。


「父のほうは自分を老人扱いして寝台に縛りつけるんじゃないと文句を言っているところだ」


 小さな笑いが起こる。その軽口は、兵たちを勇気づけた様子であった。


「今日この場には出てこられないが、我が父は寝台にありながらも、戦のことを考え、指示を下している。我らは偉大なる雷将の指揮の下に戦う。これは、これまでとなんら変わりが無い」


 もちろん、これは嘘だ。

 ヴィンゲールハルトの容態が好転しているのは事実であるものの、戦についてなんらかの指示を下せるほど、彼の意識はまだはっきりしていない。

 だが、そんな状態でも、ヴィンゲールハルトは、いくつかのことを娘に伝えていた。


「父は私に前へ進めと言った。これは先の戦で倒れる前にも言われたことだ。そう。我々には立ち止まることは許されていない。歩き出したならば、一歩でも二歩でも歩みを進めることを考えねばならない」


 マテウスにしろ、ローザにしろ、ヴィンゲールハルトの回復を待ち、状況を万全にしてから……という慎重策が頭にないわけではなかった。

 だが、雷将ははっきりと前に進めと言った。

 いまという機を逃すべきではないと告げた。


 おそらく、ここで引き下がっても結局は力を失うだけだと彼はわかっていたのだろう。

 そのことはマテウスもローザも理解していた。

 ここでなんらかの戦果を挙げねば、ヴィンゲールハルトの王国は瓦解し、後背からの支援を失ったヴェスブールは魔族の軍に呑み込まれるだろうと。


 故に、再び進軍することを彼らは決めたのだった。


「そして、こうも言った。『光を統べる者を探せ』と」


 そこで言葉を切ったローザに対して、兵たちは小さくざわめいた。一体何を言っているのかわからないという困惑の空気が強い。


「意味がわからないという様子だな。私もそうだった」


 そんな兵たちを、ローザは優しい顔で見回した。


「だが、父が無駄なことを告げるわけがない。まして、いまのような局面ではな」


 兵たちには伝えていないものの、『光を統べる者』というのは、ヴィンゲールハルトが何度も繰り返した言葉なのだ。

 うわごとのように、彼は曖昧な意識の中でその言葉を繰り返し、そして、ローザに対してそれを探すように命じた。


 そんな状況であったからこそ、ローザもマテウスもそれを重視した。

 なにかの意味があるはずだと。


「そして、気づいた。光を統べる者とは、我々自身であろうとな」


 意外な言葉を続けるローザに、兵の意識は集中する。


「わかるか? 我らはいままさに闇へと挑もうとしている。この大陸を覆わんと邪悪な意志を宿す闇に対して、戦いを挑もうとしているのだ。我ら一人一人が光持つ者でなくては、この戦の勝利はおぼつかん!」


 ローザの髪が揺れる。その金緋の髪が、この日最初の陽の光を受けて燃え上がった。


「故に、我らは探し出さなければならない。光を統べる者を、この身に、我ら自身の内に!」


 もちろん、これはただの鼓舞であり、演説だ。

 父の言った『光を統べる者』というのはもっと別のものであろうというのはマテウスもカールフランツすらも同意することだ。

 だが、いまは――雷将の真意を掴みかねるこの時は――詭弁であろうと用いるしか無い。


「諸君。諸君一人一人が光を統べる者だ。そうでなくてはならないし、なによりもそうであってほしい。我らは光持ち、闇に挑む」


 そこで、彼女は腕を振り、北方を指差した。


「いま、北域は闇夜の中にある」


 言葉通り、いまだ北方は闇の中にある。徐々に明るくなりつつあるこの場と比べれば、ずいぶんと暗く沈んでいるように思える。

 それは多分に心理的なものもあったのかもしれないが。


「この闇夜に光をもたらすのは誰か。何日も開けぬ夜に夜明けをもたらすのは誰か!」


 よく通る声で、彼女は問いかける。腕を振り、その髪を振り立て、彼女は兵たちに印象づける。


「我らしかないではないか!」


 その言葉はこれ以上無いと言うほどの確信をもって放たれた。


「いまや魔族の支配という闇夜に塗りつぶされた北域に、我らが夜明けをもたらすのだ!」


 その時、ローザはマテウスがなにごとか彼女に向けて指をうごめかしていることに気づいた。

 その仕草に従って上方に視線をやれば、以前戦場で見た神々の乗騎がそこにある。


 ローザ自身は知らぬ事ながら、一機のカルラがちょうどヴェスブール上空を通過するところであった。


 当然ながら、これはローザたちが意図していたことでも無いし、予期していたわけもない。

 だが、神々が協力してくれるとなれば、それを讃える以外の選択などローザにあるわけもなかった。


「見よ! 神々が再び我らを祝福しに来てくださっている!」


 とてつもない速度で彼らの頭上を通り越し、飛び去っていくカルラを指差し、ローザロスビータが高らかに誇らしげにそう宣言する。

 そして、彼女に促された兵たちが、空の彼方に消えていこうとしている神々の乗騎の存在を認め、歓呼の声を上げた、まさにその時。


 全てを圧する光が放たれた。

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