これまでのあらすじと登場人物紹介・附 三界図
■三界図■
■第一部あらすじに代えて■
――金剛宮ヒタダミのウツギの日記より――
本日、皇太子殿下……いえ、スオウ様は、カラク=イオの成立を宣言されました。
全ては、このためにあったのです。
いえ、そうであるようにしなければなりません。
我々、魔界の皇太子親衛旅団が真龍との戦いを求め、それが――真龍がすでに人界を見限っていたせいで――果たせなかったことも。
スオウ様の実兄と実父によって、おそらくは帝都で謀反が――叛徒どもよ呪われよ!――起こされ、我々親衛旅団が人界で孤立したことも。
未来において、それらの苦難の全ては、スオウ様の大望のためにあったと、そう語られることでしょう。
スオウ様はこう仰せになりました。
『規則を定めるのは彼らではなく、自分である』
と。
その通りであろうと思います。
叛徒どもは、三関を支配する黒銅宮を仲間に引き入れ、魔界本土と我々を切り離しました。
しかし、彼らの思惑に乗ってあたら兵をすり減らし、魔界へ帰還することをあの方は選ばれませんでした。
叛徒どもが定めた道を行くのではなく、新たな道を切り拓くと決められたのです。
すなわち、我々と共に三界を制覇すると、そう仰ったのです。
人界を覆い尽くし、神界を打ち砕き、魔界に凱旋する、と。
あの方以外の誰が口にしたとしても、私はそれを信じなかったことでしょう。いいえ、むしろ、嘲笑ったことでしょう。
けれど、私はあの方に導かれ、ここにいます。
魔界で無為に日々を過ごすのではなく、この新しい世界に、私はいます。
父も母も祖父も祖母も見ることの無かったリ=トゥエ大山脈の南に、いまいるのです。
魔界の停滞を打ち破り、人界への侵攻を成功させたあの方の語られる未来の、なにを疑う事がありましょうか。
もちろん、道は険しいことでしょう。
同輩たちも、私も、その道の半ばで倒れることもあるかもしれません。
けれど、私は信じています。
敵が何千、何万いようとも、あの方はその敵をも呑み込んでしまうであろうと。
いつか、世界が一つとなり、三界という言葉さえ失われてしまうであろうと。
私たちがあの方にそれを成し遂げさせるであろうと。
私たちの――カラク=イオ、すなわちスオウ様に従う万民の戦いは、今日この日から始まるのです。
降臨暦1228年2月16日記す
■登場人物紹介
[主要登場種族]
魔族:獣化することでその真の姿を現す種族。獣化後の『獣の相』は能力も外見も様々。人の姿を取っている時も、概して人より身長が高い。
真龍族:飛竜の姿をしているが、高い知性を持ち、人や魔族と意思疎通が可能な種族。かつては魔族の同盟者で、その後は人界の守護者だった。未登場のため、詳細は不明。
人族:神の降臨以前よりこの世界にいる種族。自らの技術を集積した都市が暴走し、獣人その他の亜種を生み出す結果となった。
獣人:人の亜種。他種の獣の特徴を持っていたり、毛皮を身にまとうなど様々な獣人がいる。
狩猟人:人の亜種ながら、二足歩行を放棄し、人型生物全般を捕食するようになっている。別名、人食い。未登場。
尾巨人:人の亜種。名前の通り尾を持つ巨人。未登場。
神族:かつて滅びかけていた人を救うため降臨した神々とされている。
○カラク=イオ
◆スオウ
魔界の皇太子。あだ名は黒太子、あるいは好色皇子。
元々帝の甥であったが、帝の一人娘サラと結婚し、皇太子となった。
サラを亡くした後も皇太子として働き、停滞に陥る魔界への刺激として、人界侵攻を企て実行する。
その後、実父と腹違いの兄の起こした謀反によって魔界への帰還を阻まれ、かつての夢でもあった三界制覇を目的に、カラク=イオの成立を宣言する。
◆ハグマ
親衛旅団長。
スオウの外祖父に仕え、スオウの母とシランの母姉妹の育成にも関与した。
その後軍に復帰、内乱鎮圧などに用いられ、魔界でも随一の実戦経験を重ねた将。
スオウが幼い頃から、彼の軍事的教育に力を入れていた。
◆スズシロ
旅団参謀。
校尉学校ではスオウと同年で、首席卒業を果たした才媛。魔族にしては背が低めである。
参謀という立場からか、時にスオウに対してきつい物言いもする。
人の姿では、長い髪を一本にまとめて布を編み込んでいるのが特徴。
真の姿やどの氏族に属しているかなどは第一部では触れられていない。
◆フウロ
本名:金剛宮尖晶部闇月氏タゴの娘フウロ
襲撃大隊長。
闇月氏の当主の妹で、校尉学校ではスオウの一年先輩。
人の姿は、赤毛のツンツンした髪を持つしなやかな体つきの女性。
真の姿は千刃相と呼ばれ、魔界で唯一フウロのみが持つ相。名前の通り、体全体がいくつもの刃で構成される姿である。
◆シラン
偵察大隊長。
スオウの母方の従姉。血統的にはハグマの主筋にあたる。水晶宮の出身のはずだが、詳細は不明。
人の姿では、黒髪の柔らかな顔つきの女性。額から左眼を覆う眼帯を常につけている。
当人曰く、左眼は事故でスオウに潰されたらしい。
◆ユズリハ
本名:黒銅宮ツレズサの娘ユズリハ
通信大隊長。
黒銅宮宗家の一人娘で、黒銅宮全体の祭祀を司る立場にある。サラの親友。
人の姿は、金のとろけたような光沢の髪を持つ華麗な女性。
真の姿は、細蟹相。陶磁器のような体表を持つ大蜘蛛に、これも人形のような人の上半身が融合した姿。
第一部において、スオウの愛人となった。
◆カノコ
庶務中隊長。
庶務中隊と共に鳳落関に留められていたが、一人スオウの陣に向かっている様子。
詳しい経緯などは第一部では不明。
◆ウツギ
本名:金剛宮灰重部東流氏チリク支氏ユレノ分家ホヅチ分分家ヒタダミ分分分家ワサタヲ一家リヤの娘ウツギ
旅団の兵の一人。
以前にスオウに顔と本名(上記の通り、複雑である)を覚えられていたことで、スオウに心酔している様子。
スオウが謀反の事実を公表した場において、皇太子を裏切ることの不義理を論じた。
◆ミズキ
スオウが魔界に帰るように旅団の構成員に告げた場において、ウツギに続いて現実的な反論を行った。
スオウ、シランの顔見知りの様だが、詳細は不明。
◎関連人物
帝:スオウの伯父で義父。スオウが父という場合には彼を指す。現在、消息不明。
サラ:スオウの父方の従姉かつ亡妻。
アマナ:スオウの母。故人。
アカナ:シランの母、アマナの妹。
○魔界
◆ヤイト
スオウの血縁上の父。息子のメギと共に謀反を決行。兄である帝を追い落とし、メギを皇帝に据えて、自らは監国という官位に就いた。
◆メギ
謀反によって生まれた魔界の新皇帝。スオウの腹違いの兄。
◆クコ
ヤイトの妻で、メギの母。黒銅宮青銅部の有力者の血筋で、黒銅宮を謀反に引きずり込んだ。
○人界
[アウストラシア]
◆エリ
エルザマリア・ショーンベルガーを名乗り、スオウたちに降伏を申し入れてきた少女。常に頭を覆う布を巻き付けている。
◆ヴィンゲールハルト・ミュラー=ピュトゥ
戦王国群の北辺の一国、ショーンベルガーから見ると南南西にあたる地域を支配する戦王。通称・足萎えの雷将。
ソウライの隣接地域に支配を確立しようとしている。
◆ローザロスビータ・ミュラー=ピュトゥ
ヴィンゲールハルトの娘。金緋の髪と青い瞳を持ち、その髪の色合いから旭姫とも呼ばれる。
神石で稼働する鎧を身にまとう。
◆ティティアナ・タバレス
宗教組織ソフィア修道会の女教皇。白に近い金の髪と緑灰の瞳を持つ女性。
ソフィア修道会は、戦王国群の中に確固とした領土を持つ強力な勢力であり、配下の騎士団及び修道士はヴィンゲールハルトの戦王国の他、戦王国群に顧問として派遣されている。
彼女は、地域の安定を乱すことになる魔族とその周辺の動きに対し、近傍の騎士団に対処を命じている。
[ネウストリア]
◆シャマラ
ネウストリアの獣人の大頭目。
豹のようなしなやかな体つきの獣人で、にゃあにゃあ話す。
かつては奴隷でありながら、仲間の獣人を鼓舞し、自らの自由を勝ち取り、仲間たちを次々解放して大頭目の地位に上った。
現在は自分の民を守ることに腐心している様子。
[ホラント]
◆エカテリーナ・テテリン
カーチャともカチューシャとも。
神聖連邦に滅ぼされたテテル王国の姫。テテル王国はホラント南方にあったが、追われてホラント北部まで来たところを第二帝国臣民に合流した。
吟遊詩人になるのが夢。
◆ライサ・ドルジフ
エカテリーナの乳母。共に逃亡している。
◆第二帝国臣民
すでに滅びたはずの第二帝国に忠誠を誓い続ける遊牧部族。
[トゥーリンギア]
◆リディア・ゲルシュター
ゲール帝国第十一皇女。皇位継承権を獲得するための試練に伴い、魔族と交易をすることで利益を出そうと考えている。
小さい頃に市井で育ったせいか、乱暴な口調である。
海を利用するという概念のない人界において、船を開発しようとしているとんでもない発想の人物。
◆オリガ・ゼラ=ゲルシュター
リディアに従う女性。左の額から右頬にかけて目立つ傷痕がある。
[ロタリンギア]
◆アールセ
ヴィカラーラ神殿の神子。通常の視力はないものの、生命が光として見える能力を持つ。感情を持つ生物の場合、様々な色の光として認識する。
◆アティーヤ
アールセの侍女。
○神界
◆シュリー
マハーシュリーとヴァイシュラヴァナの両神位を襲名した女神。四天王の指揮官。
スオウたちの人界侵入を捉えるものの、彼女自身は崑崙の神々との戦いにかり出され、対応出来ない。
◆ヴリトラハン
シュリーの上官の大神。常に一面四臂の姿をしている。なお、名前は『ヴリトラを殺す者』の意である。
◆ヴィルーパークシャー
四天王の副指揮官の女神。奇抜な装いをすることが多い。第一部では頭をそり上げて半身に刺青を入れていたが、常にその姿というわけではないようだ。




