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2. 青い家/日記の欺瞞

僕の家は一階建ての小さな一軒家である。外壁も塀のレンガもすべて青く塗装されている。そのためこの家は人々から「青い家」と呼ばれていた。僕はすなわち青い家の住人ということになり、僕はいつしか「青い人」と呼ばれるようになっていた。その呼び名はそんなに嫌でもない。

遠くから見ると家は風景の上に誤って落ちたインクみたいに青く際立っている。


帰宅したとき、家の青い塀の上に小さな汚れのようなものを見つけた。直径15cmほどのいびつな丸い形をした汚れで、全体が均一に黒っぽく縁がギザギザしている。乾いた血のあとのようにも見える。表面を撫でてみたが指に微かに砂埃が付着しただけだった。こんな汚れが前からここにあったかどうか思い出せない。かすかに胸がざわつく感じを覚えたがそれ以上は何も考えず家に入った。

一人で夕食をとる。食べ終えるころにはすっかり夜になっていた。

窓を少し開けるとひんやりした風が入ってきて、夏だというのに肌寒さを覚えた。

僕は机に向かってノートを開き、今日の分の日記をつけはじめる。日記をつけることは僕のほとんど唯一の習慣である。叙述には感想や感情を交えず起こったことだけを忠実に書き記す。ときどき窓の外に目をやり庭の木が夜風に揺れるのを眺めた。そしてさらに紙の上に文字を連ねてゆく。一息に1ページ書いてから読み返すと、記述した内容が本当に自分の身に起こったものだとは信じれらない気がした。まるで他人の生活を記録した文章のようだった。あるいは無自覚にひたすら嘘を書き連ねていたかのようにも感じられる。

特に塀の不審な汚れについての記述はあまりにも作り話めいていたので、僕は外に出てまだあの汚れがそこにあるかを確かめに行こうかと思ったが、もう夜も遅く、眠気を覚えてもいたのでひどく億劫に感じられ、結局何もせずノートを閉じてベッドにもぐりこんだ。

日記を書いているとそういうことは珍しくない。書くそばからすべてが嘘になっていくようなことは。

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