29 魔法の手拭い。真っ白な毛並みを取り戻した縁側の午後
小さなお猫様は、首根っこを咥えられ、なすがままの状態になっていた。サビ柄のお猫様は、小さなお猫様を咥えたまま、垣根を潜り抜けていった。
「おまえ、しばらくここにいるにゃ。ここなら、おまえを守ってくれるにゃ」
垣根を抜けた先は、日のよく当たるお庭で、奥にはお猫様が大好きな縁側がある古い日本家屋の一軒家だった。
『あら、【サビたん】いらっしゃい。きょうもばあちゃんの話し相手に来てくれたのかい?』
縁側には、歳を召した老人が座っていた。サビ柄のお猫様は、小さなお猫様を再度咥え、縁側に登り、その場にお猫様を降ろした。
「このばあちゃんは、優しい人間だにゃ。お猫様を話し相手として、お庭に来ることを良きこととしているにゃ」
「でも、人間ダニ!意地悪されるダニ」
「大丈夫にゃ。おまえに意地悪したのは、人間の子供たちにゃ。ばあちゃんは、その子供よりも、ずっとずっと大人な人間だにゃ。意地悪なんか、絶対にしないにゃ」
サビ柄のお猫様は、そう言って、ばあちゃんの隣にお猫様座りをした。
『【サビたん】、小さなお猫様はお友達かい?』
「にゃん」
ばあちゃんは、優しくサビ柄のお猫様の背中を撫でた。その様子を見ていた小さなお猫様も、ようやく安心したのか、暖かい縁側で丸くなりうつらうつらと船を漕ぎだした。
『あらあら、お昼寝かい』
ばあちゃんが見守る中、大小のお猫様はお昼寝をした。
『【サビたん】目が覚めたのかい』
小さなお猫様よりも、一足早く目を覚ましたサビ柄のお猫様は、大きく前脚を前方に伸ばし、固まった身体をほぐしていた。
「にゃん」
『今度は、この仔猫を私の話し相手として、連れて来てくれたんだろう?』
「にゃ!」
ばあちゃんは、サビ柄のお猫様を優しく撫でながら、話しを続けた。
「ばあちゃん、ちょっとの間、ちっこいお猫様頼むにゃ」
『【サビたん】判ってるよ。好きなだけ、この庭に居るといい』
サビ柄のお猫様は、久し振りに安心して眠ることができたであろう小さなお猫様を、優しく頭を舐めた後、庭先を後にした。
ばあちゃんは、小さなお猫様を、優しい眼差しで見つめた。
『可哀想に、本来であれば、綺麗で真っ白な毛並みだったろうに』
クークーと眠る小さなお猫様は、マジックで落書きされ、いろんな色が入り乱れていた。おばあちゃんは、よっこいしょと掛け声をかける、室内に入っていった。
「気持ち良いダニ~。もっと優しく撫でて欲しいダニ~」
小さなお猫様は、頭や背中を優しく撫でられる夢を見ていた。
「シワシワの人間の手だけど、怖くないダニ~」
何度も何度も背中を往復する手が、とても気持ち良く、安心して身を委ねていた。
『よし、これくらいかね。思った通り、綺麗で真っ白な毛並みだったね』
膝の上からお座布団に小さなお猫様を降ろすと、手桶と手拭いを片付けた。




