第2話 現状
でだ。話を戻そう。
現在東京都地下の親衛隊本部で、コツコツとボールペンを走らせて執務室の上に山積みにされた世界各国の諜報員や海洋プラントからの報告書と許可書へのサインと状況を考えていく。
「ったくこんなこと何ヶ月させる気だぁ?」
そう愚痴を漏らしながらも、仕事をこなす。
ちなみにこの施設 地下の巨大な親衛隊本部は日本政府から戦後もGHQなどに存在をバレずに提供されて拡張してきたものだ。
地上入り口は自衛隊駐屯地と誤魔化して立入禁止区域を都内の山に敷いてある。
高さのある電流を流したフェンスで、監視カメラも常備してあるハイテクだ。どうだ、すげーだろなんて自慢できそうなほどに。
しかも自家発電だし、水道も山の上流の方の川の水道施設を地上入り口の立入禁止区域内に敷いて取り寄せている。
現在の親衛隊は規模は1万人程度。
約一師団に相当するまでにこの戦後70年の月日を流れて拡大してきた。
武装親衛隊はぼくら8名。親衛隊情報部は2000名。
技術開発部門は1000 兵站及び日本海の海洋プラントでの生産管理部門に5000名。
そして残りの3000名が武装親衛隊予備役だ。
予備役なのはぼくら⚡︎⚡︎が出勤するまでもない警備や警護 そして傭兵部隊としての世界各地からの依頼の任務をこなしたりしているからだ。
実質ぼくらの代理。
そしてこれらの隊員は全て
「世界的資本主義者に絶望した元共産主義者や国家社会主義者 そして民族主義者」
など様々なイデオロギーで成り立っている。
異なるイデオロギー 思想はあれど、皆一つの 「民族共同体」 を求めていることに違いはない。
そこでイデオロギーは再び一つへと回帰したのだ。
共同体精神 と呼ばれるこのイデオロギーは、個人のどんな欲望よりも集約化されたニーズが優先されるというモットーを掲げている。
まぁ、簡単に言えば外の資本世界で人々の永遠の憎悪と闘争に怒りを露わにした者達の集いってことだ。
海洋プラントの拡大までするとは夢にも思わなかったが...。
ちなみに洋上の海洋プラントは太平洋上の硫黄島のすぐ隣に6角形の画一的なものだ。
それが何個も蜂の巣のように連なっている。
そこでは親衛隊の拡大と共に広がる需要と供給のために自給自足を掲げ弾薬の生産や食料の備蓄 及び生産 世界各地の資源系統の取引などを担当している。
そして取引の為の金 はぼくら武装親衛隊が予備役兵と共に傭兵として、対テロ戦争などに参加して稼ぐというわけだ。
ちなみに資源系統の取引と言っても、資源地帯そのものを買い取り、洋上プラントの空港と行き来できる空路と滑走路を整備して資源の運搬を行うだけだ。
買い取りというか、資源地帯の借用契約だな。
借りるから、金を定期的に払い、その地を立入禁止区域として同様にここ 親衛隊本部のように施設と生存権を整えさせる。
で、それらの輸出入した資源は海洋プラントで加工された生産された状態でまたその資源地帯や我々親衛隊本部などに送り届けられると。
資本経済や資本国家への依存度を極限まで減らす為の措置だ。まだ規模は小さいが、親衛隊内部で見ればこの生産管理部門は一番の巨大さを誇る。
これらの現場労働者こそがこの国家 いや、親衛隊の生存に直結していると言っても過言ではない。
もちろん、ぼくら武装親衛隊員は死なない 不老不死であり、寝ずに戦い、食べずに生きることも可能だ。
だがぼくだけは人間の真似をして、人間である自覚を持ちたいからこそこの忌々しい生物兵器と共に生きる前のように振舞っている。
自分が違う民族などとは思われたくないからなのかもしれない。
そんなこんな無駄話を考えてたら、ぼくは執務机の上の書類に一通り目を通し終えて、情報部の者が書類と指示を各自承ったところを見た後
「ふわぁーぁ、よく頑張ったよぼく...。」
と自画自賛しながらも、椅子から立ち上がり、次の予定を考える。
「確か、海洋プラントの視察だっけか?まーいーや。
軽ーく済ませてさっさと帰るか。」
スマホを取り出しメモ帳を開く。
便利になったもんだよほんと。ビックリしちまう こんな電子機器の発達を見てきたものからしたら。
そんな物思いにふけながらも執務室から、エレベータ前まで移動しようとぼくは足を進めるのであった。
道中 様々な者から挨拶がわりの敬礼をされたが、適当に返礼しといた。
はいはいハイルハイルって。
あ、間違えてもHeil Hitlerじゃないぞ。
Heil Volk か Sieg Heilの二択だからな!
そうやってあーだこーだしてるうちに、ぼくはいつもならどこまでも警護してくれる武装親衛隊員7名をせっかくだし一人でたまには行ってくるかと思いながら武装親衛隊を親衛隊本部の警備に就かせた。
ぼくは黒いぼくの購入したけっこー高い良い値の車に乗り込み、早速駐屯地の出入り口検問所で軍隊手帳を取り出し、検問所の親衛隊兵士に渡した。
「長官 いってらっしゃいです。」
と、若い青年士官が許可を告げると同時に軍隊手帳をドア窓越しに返してくれる。
まだ若いから、それに絶大なる信頼関係でぼくら親衛隊は出来ているからこそ、堅い礼儀や敬礼なんて不要だ。
「うん、じゃぁ今日の夜中辺りに帰る方になりそうだから、また頼むよ。」
そう返事してから、目の前の電流ビリビリフェンスの二重になった出口を数名で開け放つ。
ここからぼくは洋上の空港にとめてある海洋プラントまでの航空機に乗り込みにいくはずが、世界最大の絶望へと引きずりこまれるのであった。
ー東京都 某公道ー
無事、森から首都圏に着いたが、空港まで行くまでそれが大変で大変で どこも渋滞まみれで1km進むのに20分かかる。
「ふぁぁ、こんなことになるんだったらヘリでも出前すればよかった。」
と嘆きながらも、車内でひたすら待つ。
キャーーーーッ
逃げろぉーーッ!
車外では謎のワーワーキャーキャー叫んでる女性や男どもがいるが、なんかあったんだろうか?しかも歩道だ。
前の車や横の車は運転手は奇妙な目で後ろを見つめる。
「何かあったのか...?」
隣の車のタクシーの運転手らしき人が車から出て後ろを振り返った。
自分はあまり外とは関係を持たないようにしてる。なぜってそりゃこんなバリバリ ザ・ナチスって格好してたらコスプレどころか警察行きだから仕方ないよ。
だからこそ無視していたが
がしかし、
ズドォォンッ
隣の車外に出ていたタクシーの兄ちゃんがいきなり跳ねられたのだ。
赤い鮮血とともに散っていく一つの命。
そして突っ込んできたその正体 ダンプカーはぼくの車にも車体後方が衝突したようで、後ろの渋滞してた車達と一緒に転げ回された。
ガラララ ガァァァァンッ
何かにぶつかり、車の横転の動きが止まった頃 ぼくは意識を失いかけていた...。
やめろっ...くるなぁぁぁぁ!!!
ぐぁぁぁぁぁ!!!いやだ!!いやだぁぁぁぁ!!!
パァンッ
1発の銃声が目覚ましのようにぼくの耳に鼓動する。
「う、うぅ...。」
そう一人呻きながらも、横倒しになった車から這いずり出ようとドアに手を伸ばす。
が、ドアはひしゃげていて通常通りには開かなかった。
「はぁ?...仕方ないな。」
そうため息をつきながら、ぼくは恐るべきその生物兵器としての怪力を捻り出し、扉を蹴り破る。
そうしてようやく外に出た時、状況は一転していた。
「なんだよ...こりゃぁ...。」
目の前で、人を人が食ってる...ありえない光景だった。
日本の平和な国道で、人が人を食ってるなど。
だがそれが現状だ。
「その上で最善を尽くせ...か。親父もいいこと言うな。」
そうかつての父親を思い出しながら、腰のホルスターからP.38将校用ピストルを取り出し、
「そこのお前〜、一応警告しとくけど、すぐその人から離れてよ〜。」
と、目の前のヤツに照準を合わせる。
周りの人は全員走って逃げるか食われるかのなかで、呑気な声が響き渡る。
この謎の化け物は後ろの 空港行きとは反対方向の道路から発生し、広範囲に広がっていると推測できる。
「ゔ...ぁぁ... 」
そう掠れた呻き声を出しながら目の前で倒れたサラリーマンをむしゃぶりつくように食っていた血だらけのコンビニ店員だったと思わしき男はこちらに寄ってくる。
「離れはしたが、こっちに寄らとは言ってないだろお?」
そう聞くが、相変わらず反応はなし。
「やはり脳の性能は強烈に悪化していて、能動的な動物状態ってことか...。」
色々推測しながらも、
パァンッ
引き金を突如ぼくは引いて、その者の頭を吹き飛ばした。
頭部が大きく損傷 欠損したそいつは、ばたりと床に倒れ動かなくなった。
「今のヤツの傷口から見て、おそらく出血多量死には至るほどであったし、既に死んでいたと仮定したとすれば...。」
嫌な事実だ。死体が這いずりまわってやがる。
「映画や漫画じゃないんだからさぁ...。」
またため息をついたその時
パァンッパァンッ
パパパンッ
そう乾いた銃声が後方から接近してくるのが聞こえた。
凄まじい速度で来たソレは
ズザァァァァッ
そう足でブレーキを踏み摩擦音が生まれながら、ぼくの目の前で停止した。
「ぁぁ、来てくれたの。ありがとう。」
そうぼくが返礼をしたのは、武装親衛隊員7名。
ぼくの本能が過度の緊張 アドレナリンを放出すると、彼らも同様 私のことを最優先防衛目標として追随してきてくれる。
彼らの驚くべきその身体能力の高さは、今のように高層ビルや建物の壁を四足歩行で走ってくるほどのものである。
普段は二足歩行だが。
パァンッ
「さて、どうしたものか。こんな状態ならまず情報が欲しいんだが。」
また一体のヤツらを始末しながら、この区域だけなのか、それとも全世界なのか、自分らのこの状況がどれほどの規模なのかを知ろうと早速親衛隊本部へと足取りを早めた。
道中のヤツら いわゆる同じ人間を食べる民族の破壊者を親衛隊員と射殺しながら今後について考える。
親衛隊本部の地上入り口は電流フェンスで囲まれてる上に警備も厳重だ。
まず安心していられるだろう。補給もヘリとオスプレイでやらせればいい。
「で、問題なのが...。」
現状ヘリくらいしか着陸地点がない、ということだ。
つまり補給が限定的すぎる。
供給を満たさない可能性が大きいため、大きな滑走路が必要だ。
急ぎで建設するにしても1ヶ月以上はかかる。
「うーん...どうするか。」
思考を張り巡らせながら親衛隊本部のある山の方角へと足を進めると、
「た、たすけて...お願いしますっ!」
そうぼくの目の前にいきなり現れてせがむ セーラー服を着こんだ女子高生が助けを請うてくる。
「あー、ごめんだけど今はそんな暇は」
「自衛隊の方なんですか!?それとも警察の方!?」
そう興奮し切った彼女はひたすらぼくらの武装を見ながら助けてくれと言わんばかりに迫ってくる。
中性的な顔な異性にそりゃ抱きつかれるなんて嬉しいもんだが、今となっては無関係な話だ。
「ごめんねお姉さん ぼくらは自衛隊でも警察でもない。
ただの親衛隊だよ。」
そう告げて、彼女を放置する。
呆気からんと、何を言っているのかわからないような顔をする彼女はこちらに再度振り向き、
「えっ...ちょ、ちょっと、待ってください!私も連れて行ってください!!お願いします!!」
しつっこくしつっこくよくそんな同じ言葉を繰り返せるもんだと、無視しながらセカセカと歩き続ける。
「お願いしますっ!お願い キャァァァァ!!」
ドタンッ
そう彼女が通りかかったすぐ横のビルに通じるドアが開き、中にいた数名のヤツら 感染者とでも言おうか そいつらが彼女にのしかかる。
「いっ、嫌だっ、助けて!お願い!!誰かぁぁぁぁ!!」
今にも噛まれそうな彼女は必死に助けを求める。
ぼくは...ぼくは...
パァンッパァンッ
連中の二体の頭を撃ち抜いた。
ドサッ
動かなくなったそいつらは、彼女に倒れかかった。
「ひっ...!」
「おいおい助けてもらってひっはないだろぉ。」
そう嘆きながらも、ぼくは彼女に近づく。
「目の前を見てみろ。ほら。」
そう指差して目前の交差点を見させる。
「あっ...。」
何人もの人間が逃げ遅れて、死にゆく姿を。
彼女はもう一度目に焼き付ける。
再度首をこちらに向かせて、
「いい? 生きたければ 生存権を得たければ 殺すんだ。
ぼくから言えるのはそれだけだ。」
そう言葉を残し、彼女からは離れる。
呆気にとられた彼女は、そのままそこで顔を伏せて泣き出す。
あ、
「そうだ。お姉さん!」
そう今度は気前よく呼びかけると、
「...なっ、なによっ...うっ...。」
そう泣き止み、ぼくの方を向く。
「君の所属する学校の場所 案内してくれるかな?」
そう問いただす。
周りの安全は未だに撃ち続ける武装親衛隊員によって確保されながらも、時は一刻をも許さない事態であった。
今回は短い?




