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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2019.4.
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数値化




 入社式を終えた俺たち新入社員を待っていたのは、千もの質問が連なっている紙だった。

 はい。いいえ。どちらかにペケ印を付ける。

 その結果で、どこに配置されるかを決めるらしい。

 では解散。内示は明日行う。

 そう言わされて、俺たちは会社を後にする。

 だいたい昼飯を食べる時間内だった。


 あ。無理。いや。無理。

 手を動かせ、頭を動かせ、足を動かせ、全身を動かせ。

 初日から飛ばし過ぎです。先輩。

 と言うよりも、ここは新入社員が送られるようなところでは決してない。

 ベテランの中でも精鋭中の精鋭が送られるとこです。

 本音をぶつければ、笑い飛ばされた。

 解せぬ。

 

 能ある鷹は爪を隠す。


 たった一言。

 結果の内容は、たった一言これだけ。

 これだけで俺は場違いなとこに送られた。


 メモを取る暇なんてない。

 頭に叩き込んで、泣きながら仕事をした。それこそ全身を使った。

 あまりの忙殺さに、途中で辞めますとか何度か口走ったと思う。

 おまえはやればできる。今はまだ気づいていないだけだ。それが証拠におまえは今やれている。

 熱血先輩に何度も背中を叩かれたと思う。

 その所為か何だか知らないが、背中の感覚がない。

 つーか。全身感覚がない。

 俺は水だ。水になったのだ。

 いつしかそう思うようになった。

 配属された初日の話である。


 廊下を駆け走る中、同大で同期のあいつとすれ違った。

 不満顔をしていた。苛ついているようだった。

 昼食時に訊けば、あまりの緩さに気がおかしくなりそうだとのたまった。

 代わってくれ。 

 マジで。


 激動の三週間が過ぎた。

 給料もほどほど。社会保障等も充実。定時に上がれる。休日出勤はない。怒鳴り散らす上司もいない。

 優良物件だ。

 だけれども、部署は変えてほしい。

 毎日毎日生気を根こそぎ絞られて、充実感なんてものなど生まれて来ない。

 休日はほぼ寝たきりだ。

 新入社員だからそんなのまだ得られるわけないだろう?

 違う。

 それはおかしい。


 その一心で今度は、嘘偽りを交えて、千もの質問に答えた。

 

 もっと厳しい所に飛ばされた。

 充実感はまだ得られていない。

 入社して三年が経った。


 俺の言葉に耳を貸してくれ。

 段階を踏んでくれ。


 そう叫んでいた俺が今や、










 魔王と指を差される、数値化ハンターと呼ばれるまでになった。

 トレードマークは、人の頭上に鎮座する数値を遮断する黒いサングラス。

 仲間は募集中である。

 いや。鬼のような顔をしたあいつが仲間に加わってくれそうだ。

 コードネームはさながら、悪鬼だろうか。




(2019.4.24)



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