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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2026.9.
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2522/2532

水飴・砂糖・麦芽糖・もち米

「『カクヨム』の自主企画「【楽書出版・無茶振り編集部】今週の執筆依頼――お題は「アキ」」参加作品です。


LEVEL1.「アキ」を物語に組み込んでみよう

LEVEL2.「アキ」を2種類以上登場させてみよう

LEVEL3.「アキ」という言葉を本文に登場させずに「アキ」を表現してみよう

LEVEL4.「アキ」を複数登場させつつ、「アキ」の造語を作ってみよう









 年々色づきが早まっている銀杏並木を通り過ぎた先。

 ブロック塀の上にものぞき穴にも庭にも。

 あちらこちらと空き缶が打ち捨てられている平屋の前へと立ち止まる。


「ここですね」


 全身の外皮である銅板が鈍く煌めくAI搭載のアンドロイドロボットが、青銅色で両開きの鋳物門扉を押しては、空き家となってしまった平屋の庭へと足を踏み入れた時だった。

 きなこもちを連想させる秋田犬が突如として出現したのである。


「………まさか、もう、」


 一足遅かったかと身構えたAI搭載のアンドロイドロボット。ここに来た目的は、猗鬼あきと呼ばれるそれはそれは美しい鬼の再封印であった。

 そろそろ封印の効果がなくなりそうだという事で、陰陽師のデータがダウンロードされたAI搭載のアンドロイドロボットが派遣されたのである。

 秋田犬から妖気は一切合切感じられなかったが、最上位の妖怪である猗鬼であれば、妖気を消す事などお手の物なはず。そうして油断させておいたところで殺害を図るはず。

 AI搭載のアンドロイドロボットは電気信号で応援を呼ぶと同時に、右手を日本刀に変身させては、お行儀良く座っている秋田犬の鼻先に日本刀の切っ先を当てた。

 ハッハッハッハと、桃色の舌を出して、大きくしっぽを振る秋田犬の、なんと愛らしい事か。まさに遊んでほしいと言わんばかりである。

 が、これこそ、猗鬼の狙いである。

 騙されてなるものか。

 AI搭載のアンドロイドロボットは、さらに日本刀の切っ先を押し進めて、秋田犬の鼻に日本刀を突き刺しては、最大限の力を注ぎ込み封印を図ろうとしたのだが。


「くぅん?」

「………」


 AI搭載のアンドロイドロボットは顔を歪ませた。

 分かっている。

 分かっているのだ。

 これは罠。

 これこそが罠。

 罠にはまってどうする。

 罠罠罠と呟きながら、わなわなわなと身体を震わせたAI搭載のアンドロイドロボット。上昇する熱を体内に流れる冷却液で冷やしては、日本刀を押し進めようとした。

 日本刀を押し進めようとしたのだ。

 日本刀を押し進めようとしたのだが。


「わ、わたくしには、できない。例え猗鬼が化けた姿とは言え。このような愛らしい秋田犬に日本刀を突き刺すなど」

「………そのような不甲斐なさでよくもまあわしの封印を任されたものだのう」

「………わたくしはあなたに屈しましたが、今に駆け付けて来る仲間たちは違います。あなたを確実に封印しますよ」

「ッハ。どうであろうなあ。貴様の応援要員は果たして来るであろうか?」

「………結界。ですか。まさか、電気信号まで阻止するなんて。流石は、最上位の妖怪です」

「諦めたのか?」

「封印は諦めます。けれど。足止めはさせてもらいます。仲間があなたを封印するまで」

「………飽きた」

「………はい?」

「貴様。いつまでいぬっころと向き合っておるのだ。わしは後ろにおるぞ」

「えっ?」


 AI搭載のアンドロイドロボットは素早く振り返えれば、そこにはそれはそれは美しい女子の姿をした一本角の鬼が立っていたのである。


「それはただのいぬっころだ。バカタレ」

「………わたくしはまだまだ未熟者でした。どうぞ、よしなに」

「断る」

「何をですか?」

「貴様を殺しはせん。そも、闘いもせん。かような事をすれば封印は必須。封印はもう飽きた。ゆえに」


 独特な雰囲気を以て白魚のような手をAI搭載のアンドロイドロボットに差し出した猗鬼。いたずらっ子のような無邪気な笑みを浮かべて、言葉を紡いだ。


「貴様たちに手を貸してやろう」

「あ。間に合っています」

「なあにが間に合ってるだあ? 間に合っておらぬだろうが。わしがその気ならば貴様はサイコロキャラメルになっておるぞ。お。サイコロキャラメルと言ったら、サイコロキャラメルが喰いたくなった。そのような色をしておるのだ。サイコロキャラメルは常に携帯しているのであろう。寄こせ」

「持っていません。わたくしはボンタンアメを好んでいます」


 猗鬼はAI搭載のアンドロイドロボットの額に親指の腹を押し当てては、ぐりぐりと押し進めた。

 AI搭載のアンドロイドロボットは意に介さず、胸ポケットからボンタンアメの箱を取り出しては、猗鬼に見せつけた。


「ふん。ボンタンアメでもよいわ。寄こせ」

「嫌です」

「何故じゃ?」

「鬼に何か食べ物を与えたら、強制的に主従関係が結ばれるという情報を持っています」

「わしのような最上位の鬼を主にできるのだ。泣いて喜べ」

「嫌です………え。嫌です嫌です嫌です………」

「ふはっ」


 にやりにやり。面白いと言わんばかりの笑みを湛えては腕を組んでAI搭載のアンドロイドロボットを見下ろす猗鬼を何も面白くないと言わんばかりの仏頂面で見上げるAI搭載のアンドロイドロボット。通信が来たのである。どうやら電気信号は届いていて、仲間はすでにこの空き家を囲んでいるが、猗鬼がおとなしくしているので様子を伺っていたとの事。契約を結べとの事。これは命令であるという事。


「………」

「ほら。寄こせ。寄こせ」

「………分かりました」


 AI搭載のアンドロイドロボットは箱から一粒のボンタンアメを取り出しては、猗鬼に手渡した。

 猗鬼は笑みを湛えたまま、ボンタンアメを食べた。


















「………」

「何ですか?」

「やはり人間はワルじゃな」

「安心してください。人道的に協力してもらいますので」

「………サイコロキャラメルを寄こせ」

「どれだけ好きなんですか」


 果たして、主従関係は強制的に結ばれたが、猗鬼が主ではなく、AI搭載のアンドロイドロボットが主として結ばれた。

 ボンタンアメに細工をしかけておいたのだ。


「分かりました」

「よしっ」


 額に一本角が生えた秋田犬のような姿になった猗鬼。AI搭載のアンドロイドロボットの肩に乗って、じっと駄菓子屋を見つめた。AI搭載のアンドロイドロボットは胸ポケットから財布を取り出しては、肩から飛び降りて駆け走る猗鬼の後に続いたのであった。


(はあ。これからどうなるのか。主になったとは言え、全然安心できません。振り回される未来しか見えません。はあ)











(2026.9.7)




【あとがき】


LEVEL 1:「アキ」を物語に組み込んでみよう。

「秋」「空き缶」「空き家」「秋田犬」「猗鬼」「飽きた」「諦める」


LEVEL 2:「アキ」を2種類以上登場させてみよう。

「秋」「空き缶」「空き家」「秋田犬」「猗鬼」「飽きた」「諦める」


LEVEL 3:「アキ」という言葉を本文に登場させずに、「アキ」を表現しよう。

「年々色づきが早まっている銀杏並木」=「秋」


LEVEL 4:「アキ」を複数登場させつつ、「アキ」の造語を作ってみよう。

「猗鬼」。

「猗」=「ああ(感嘆を表す)」「うつくしい」「たおやか」の意味がある。




〇これまでに書いた事がない異色のコンビを書きたい!

→鬼と、何だろう。書いた事がないの。書いた事がないの。ロボット。アンドロイドロボットはどうだ。


〇面白そうな自主企画だ参加したいと思いつつ、コンテストを優先させなければならないコンテストの後に書こうと思いつつ、自主企画の期限とコンテストの期限日が一緒で迫っている。諦めるか。諦める。諦めきれない。コンテストの小説書き終わってないでしょう止めなさいと思いつつ、諦めきれませんでした!


〇タイトルがまったく思いつかず、ボンタンアメの主原料にしました!








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