↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2026.8.
PR
2503/2529

さみしいなにかをかく 3(完)

「『カクヨム』の自主企画「自主企画「【さみしいなにかをかく】お題で書いてください」【お題3】参加作品です。連作短編です。これにて完結です」


【お題1】

「切った爪のような月が輝く日、夢のなかに出てきた知らないひとの家で熾火が静かにひかるのをみていた話をしてください。」


【お題2】

「気がかりが解決した夕べ、掃きだし窓のゆれるカーテンの向こう側できみの使い込まれた赤本についてした話をしてください。」


【お題3】

「まっしろの月だけが空にあるよく晴れた真昼、眼科のあるビルで花冠の作り方を教わったときの話をしてください。」








 まっしろの月だけが空にあるよく晴れた真昼。

 私はおにいちゃんに眼科があるビルで花冠の作り方を教わった。

 その眼科があるビルの屋上は公園があって、いろいろな花が咲いていた。

 クローバーも咲いていた。

 生まれつきの目の病気で視力が悪いおにいちゃんは、月にいちど、このビルの眼科に行っている。

 治療を受けているおかげで眼鏡はかけなくても見えるけど、見る時は目つきが怖くなってしまうおにいちゃん。だからかどうかは分からないけど、おにいちゃんは怖いひとたちに生意気だって怒鳴られる。おにいちゃんは喧嘩っ早いから、すぐに手が出て足が出る。

 ことばなんていらねえ。

 手と足さえあればいい。

 殴れればいい。

 蹴られればいい。

 おにいちゃんはいう。

 私は悲しくなる。さみしくなる。

 私と話せなくてもいいんだ。

 そう言うと、おにいちゃんは、悪かったって言う。おまえとだけは話していたいから、やっぱり口も必要だって言う。

 ううん。

 私だけじゃだめだよ。

 おにいちゃん。

 ほかのひととも、いっぱいいっぱいいっぱい、話してよ。

 おにいちゃんを見つけてくれた海音のおねえちゃんとも、いっぱいいっぱいいっぱい、話してよ。

 私のお願いを聞いて、話すんじゃなくて。

 ねえ。

 私だけを見ないでよ。

 私は、

 だって、

 おにいちゃんを囲いたいんじゃないのに、

 そのために、おにいちゃんのそばにいるわけじゃないのに、

 私はただ、

 おにいちゃんの力になりたいだけなのに。

 さみしい。

 さみしいよ。

 ねえ、

 おにいちゃん。

 おねがい。

 もう、私を、




(2026.8.22)





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。