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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2026.4.
2322/2330

忘れ去られた呪文




『なあ。俺とおまえだけの呪文を作ろうぜ。そんで、あの偉大な魔法使いに見せつけてやろうぜ』

『そうですね。その呪文のために私と君だけが分かる文字も作りましょう。そして、私たちの実力を見せつけてやりましょう』


 魔法学校に通う十四歳の男子学生二人は、魔法の杖を重ね合わせては不敵な笑みを浮かべたのであった。











 悪に堕ちた魔法使いを封じ長い時をかけて元の偉大な魔法使いに改心させたとして、偉大な魔法使いの称号を与えられた二人の九十歳の高齢男性が居た。

 攻撃魔法を得意とする赤の魔法使い、綾芽あやめ

 治癒魔法を得意とする白の魔法使い、鈴懸すずかけ

 国中から畏怖と憧憬の眼差しを向けられる二人の弟子の一人、浅葱あさぎは大掃除をする中で一冊のノートを見つけ、目を爛々に輝かせて図書館に居る鈴懸の元へと急ぎ向かったのであった。




 魔法学校の図書館内のフリースペースにて。


「どこでそのノートを見つけたのですか?」


 すごいと大発見の二つの言葉しか言わない浅葱に落ち着くよう、ここで提供されているハーブティーを従業員から受け取り手渡した。

 ちびりちびり。

 猫舌の浅葱は立ったままハーブティーを時間をかけて飲み干すと椅子に座り、円卓の上に置いていたノートを閉じたまま手に取ると、向かい側に座る鈴懸に押し出した。


「すごいっす。大発見っす。お二人の仕事部屋で見つけたっす。新しい呪文っす。きっとお二人が創り出した呪文っす。ぼくにはこの呪文は一文字すら読めなかったっすけど。この呪文を創り出したお二人なら読めると思ったっす。きっと、あまりにも強力な攻撃魔法か、治癒魔法か、攻撃魔法と治癒魔法を掛け合わせた魔法か。とにかく強力すぎて封印せざるを得なかった魔法っす。この禍々しい髑髏文字からはお二人の強力な魔法臭がぷんぷん放たれているっす」

「………まったく覚えていないですが。とにかく見てみましょう」


 興奮して立ち上がった浅葱に座るように言ってから、鈴懸は浅葱からノートを受け取ると最初の頁を開いた。

 すれば、びっしりと何百もの数の小さく、よくよく見れば色々な形の髑髏で一枚の頁が埋め尽くされていた。


(何でしょうか? 呪文? まったく覚えがないのですが。確かに。この髑髏文字? からは私と綾芽の魔力が感じられますが。綾芽ならば覚えているでしょうか? けれど鍛錬中に話しかけたら怒り狂いますし………ん? これは、)


 鈴懸はノートを閉じると、浅葱に微笑を向けたのであった。


「浅葱。君の予想通り、この呪文は強力すぎて封印したものです。恐らく、結界が弱まってしまい君に見つかってしまったのでしょう。また結界を施しますのでこの件はもう忘れてくださいね」

「そう。っすよね。ぼく如きが目にしちゃいけない強力魔法だったすよね。ぼく。忘却魔法を使うっす」

「あ、こらっ」


 魔力が強すぎて自分で操作ができず今は魔法使用を禁じられていた浅葱は、その事をすっかり忘れて忘却魔法を使おうとしたのだが、一時停止魔法で鈴懸に止められて事なきを得たのであった。











「まったく覚えてねえな」

「ですよね」


 魔法学校内に設けられた綾芽の自室にて。

 図書館で調べ物をしていたら思いのほか時間がかかってしまった鈴懸。特訓を終えた綾芽に声をかけられて、夕飯を一緒に食べ終えて、話があるとここに訪れてのち、漸く浅葱が見つけ出したノートを綾芽に手渡したのであった。

 綾芽はノートの一枚目に書かれた髑髏文字を見たが、まったく見覚えがなかった。


「まったく覚えてない。読めない。俺とおまえの魔力しか感じられない。つまり、俺とおまえが書いた事は確実。だが。まったく覚えていない。忘却魔法でも使ったのか?」

「その可能性は極めて高いです。ゆえに、浅葱には強力な魔法呪文ゆえに封印したもので、この事は忘れるように言っておきました。なので、私たちの力を合わせて封印しましょう」

「やけに封印したがるな。おまえの事だから、解読したいと血が騒ぐところだろう」

「いいえ。これは封印すべきです。もしも解読してしまったら、私たち二人は深手を負ってしまいます。断言できます」

「………命を奪われるほどか?」

「そうですね。そのように考えて頂いてよろしいかと」

「………ひとつ確認しておきたい」

「何でしょう?」

「おまえは本当に覚えてもいないし、読めてもいないんだな?」

「ええ。まったく覚えていませんし読めてもいません」

「そうか。分かった。なら、封印するか」

「ええ。未来永劫このノートが誰の目にも入らないように。本当は破壊できたらいいのですが」

「魔力が強すぎる。封印の方がいい。だろ」

「はい」


 鈴懸は鈴懸と綾芽に治癒魔法を施してのち、ノートに結界魔法をかけたのであった。




(ふう。相変わらず勘が鋭いですね。綾芽は。しかし。言うわけにはいきません。中二病満載赤薔薇白薔薇乱れ咲くイタイ呪文だなんて。ああ。ハズカシイ。破壊できないので封印。封印したら忘却魔法忘却魔法っと)











(2026.4.19)




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