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望郷
耳元でかみ砕く音が聞こえる。
こんなにも明確なのだ。
随分歯切れがいい食べ物なのだろう。
正体が知りたいと思いながらも、こんなに重たい心身では起きること叶わず。
そのままたゆたう意識に委ねて、夢の中へと入る。
視界に入り込んでくるのは、足首まである柔らかい雑草が一面に広がる野原。
いつもより、地面との距離が近く感じる自分の右手は熱い緑茶、左手は海苔巻きを持っていた。
唐突に意思なく手が動き出す。
海苔巻きが口に運ばれて咀嚼をする。
先程聞いた音を立てながら飲み込んだら熱い緑茶が口いっぱいに広がり、ゆっくり飲み込むと、海苔と、海苔に巻かれた食品の甘みが緑茶の後についてきた。
ほわほわと胸の中からやわらかい温もりが生まれたかと思えば、しょっぱい味が口の中を通り過ぎて行く。
何度も何度も。
ガチ泣きしてたよ。
とても引いている夫と笑い転げている子どもが視界に入り込んできて、身体を沈める。
今度独りで田舎に帰ろう。
カサカサとビニールシートがはためいた。
(2021.4.10)




