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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2020.5.
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127/2529

メイストームデー(5月の嵐の日)




「いやだ!離れないって言った!」


 駄々を捏ねる。

 からだ全部で暴れてみせる。


「いやだいやだいやだ!」


 青息吐息のこの人。

 知っている。

 別れる気満々だって。

 

 あんなに。

 あんなに大切にするって、

 大事にするって、

 言ったくせに、


 手離すなんて。

 しかも後悔も未練も一切合切ないなんて、


 ひどすぎる!




 いつもいつもいつもいつだって、

 愛着が深くなる頃に別れを切り出される。


 いつもいつもいつもいつだって、

 じぶんばっかり。

 片思いだ、





 ぽたぽたぽた。

 とんだ茶番。

 防ぐべきものを自ら作り出すなんて、


 ぼろぼろぼろ。

 ああ、

 防げない、

 守れない、


 泣いている、

 惜しんでいる、

 喜んでいる、


 心の底から。


 じぶん以外の生物に向かって生まれるこの人の感情。 

 この人が、この人たちが、大切に、大事に想っている人の感情。


 


 別れる哀しさに打ちひしがれなくなる日は来るのだろうか、


 身を切られるような痛みから解放される日は来るのだろうか、


 新しい門出を喜びだけで満たされる日が来るのだろうか、




「結婚おめでとう」

「っありがとう」


 父親は息子に和傘を贈った。

 自らも父親から贈られた、紺青の蛇の目和傘。

 震えていたのは、大切にすると、優しく握る息子だけが原因、ではきっとないのだろう。




「私を、父を見守ってくれたように、息子をよろしく頼むよ」

「っやだよばーか」








(2020.5.13)




5月13日:「バレンタインデー」から88日目、「八十八夜の別れ霜」ということで、別れ話を切り出すのに最適とされる日

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