表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2020.1.
PR
109/2507

成人の日




 濃ゆい緑茶に、柔らかい梅干し。

 小さな湯飲みに、小さなお皿に。


 発表や受験、面接など、大事な刻を迎える朝は、きまってこの二つが出された。


 気持ちが落ち着くからだったか、

 気持ちが引き締まるからだったか、

 目が覚めるからだったか、


 理由を訊いたかどうかさえ覚えていないけれど。

 

 この日にしか出されないような、とても濃ゆい緑茶に。

 いつもと変わりない、とても酸っぱくやわらかい梅干しに。


 そろった二つを前にすれば、頑張ろうという気持ちがより引き出される。


 ありがとう、

 普段はなかなか言えない感謝が出てくる。




 


 小さな湯呑が一つ。

 器の白が見える透明な飲み物の中には、紅の花びらが一枚浮かんでいた。


 特別な日だとは認識していた。

 けれど、明確な目標はなかった。


 この日の為に、頑張れる事はなかった。

 この日の為に、言える事は、なかったように思えた。


 いいや、


 伝えるべき言葉は思いついたのだけれど、どうしてか、言えず。


 代わり、と言ってはなんだが。

 

 湯呑二つに、自分が持っている湯呑を軽く合わせて。

 音を、

 波紋を響かせて。

 グイっと一口だけ飲んで、

 喉が焼けるような熱さに眉根を寄せつつ、


 この日はただ、

 行ってきますと、一言だけ告げて家を後にした。






 さて、まだ口の中に残っている花びらはいつ飲み込もうか。 







(2020.1.13)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ