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第三章 20話

2014/5/12の投稿です。次回は5/15の予定です。

 俺達は襲い来る根を振り払いつつエルダートレントに駆け寄った。


 エルダートレントは表面が浅黒く幹周が10m以上、高さ20mはある様に見える大きさと風格を持つ大木だったが、幹は所々盛り上がっている場所やひび割れがあり、大木の雄大さよりも禍々しさを感じる姿だった。そしてその幹に付いた顔は大人の身長の倍程の高さのある楕円型で、木の根元付近に付いていた。


「リョウマとレイピンは枝の間合いに入らずに援護を頼む! シリアは2人のサポートを!」


 その言葉に対し、俺達はその場に留まり、了解の一言と行動で答える。


 俺はペイブメントで地面を舗装しつつ、トレントにアイアンスライムの斧を投げ、のそのそと這いずってくるトレントを仕留めていき、レイピンさんは魔法で援護をし、シリアさんはレイピンさんと俺に向かってくる根を刈っている。


 エルダートレント本体はアサギさん達によって攻撃が加えられているが、予想以上にしぶとい。


 エルダートレントは体の大きさに加えて、木魔法のグロウが使える。グロウには本来回復の効果は無いのだが、エルダートレントは植物系の魔獣なので、自身の体を成長させる事で回復と同様の効果を得ている。その回復もこのエルダートレントは普通のエルダートレントより早いらしく、今の所はこちらが優勢だが油断できる状況ではない。


 そうしているうちにエルダートレントがうめき声か叫び声か分からない音を発した。


「オォオオオオ!」


 チラリと横目で様子を見てみると、ミゼリアさんがエルダートレントの顔に斧を叩き込んだ所だった。既に何度かは叩き込まれていたようだが、今の一撃は今までより深く食い込んだために効いたようだ。そこにすかさずウェルアンナさんとミーヤさんが追撃に向かう。




 ここでエルダートレントが思わぬ行動に出た。エルダートレントの顔、正確には口の部分に黒い球体が現れ、ウェルアンナさんに向けて射出される。


「チッ! 何だい今のは!」


 ウェルアンナさんは虚を突かれつつもそれを躱したが、枝の追撃が行われたため、攻撃に向かう足を止めざるを得なくなる。


 今のは、闇魔法のダークボールか!? 


 ダークボールでウェルアンナさんは止まったが、まだミーヤさんが……と思いきや、エルダートレントが黒い霧状の物を吐き出したのを見て、ミーヤさんは距離を取ろうとする。しかし、斧を持っていた手が霧に触れてしまった。すると斧がみるみるうちに錆び付いていく。


「にゃんだ!?」

「先程のはダークボール! この個体は闇魔法も使えるのである! その反応もおそらく闇魔法の効果であろう!」


 ……おいおい、そんな情報聞いてないぞ。


「予想外の事態が多い! ここは一旦引き、対策を練るでござる!」


 こうして俺達は一度、無理をせずに撤退する事になった。




 根の攻撃を避け、トレントを切り倒し、エルダートレントの攻撃範囲から離れたところで俺達は休憩を取りつつ話し合う。


「ミーヤ、腕は?」

「腕は何ともにゃいけど、これはもうダメだにゃ」


 そう言ってミーヤさんが皆に見えるように出した斧は金属の部分全体が錆び付いていて、刃先は崩れていた。


「あの黒い霧に触れたらこの通りにゃ」

「これは酷い」

「武器を錆びさせられちゃ、まともに戦えないねぇ」

「レイピン、何か対策はないのかい?」

「吾輩も木魔法以外の魔法を使えるエルダートレントなど聞いた事が無いのである。それに武器を錆びさせる闇魔法も聞き覚えが無い。闇魔法による攻撃への対策・治療として光魔法を打ち込み、闇属性の魔力を光属性の魔力で祓うという手があるが、戦闘中に常時行う事は出来ないのである」


 あの闇魔法の効果は武器、いや、金属を錆びさせる事? ……まさか、メタルスライムが怯えてたのはそれが原因か? でも、だったら何故……そう言えば……まだ仮定でしか無いが、話してみよう。


















 俺の仮説を皆さんに話した結果、俺達はもう一度エルダートレントと戦ってみる事になった。


 今回のエルダートレントは色々と不測の事態が多いが、強さ自体はそれほど脅威ではなく、危険になれば撤退できる相手なので策があるなら試しても問題は無い。


「行くぞ!」

「『ペイブメント』」


 再び地面を舗装して根の攻撃を防ぎ、突撃する。そしてエルダートレントに近づくと、エルダートレントは俺たちを警戒してか、また黒い霧を吐き始めた。


「来た!」

「試してみます!」


 俺はそれを見てアイアンスライムの投擲斧を1本、思い切りエルダートレントの顔めがけ、投げる!


 投げられたアイアンスライムは放物線を描き、黒い霧を突き抜けていく。


「オオオオオ!」


 アイアンスライムの斧は見事にエルダートレントの眉間に刺さり、契約の効果でアイアンスライムに問題がない事が伝わって来た。


「大丈夫! やはりアイアンスライムにあの魔法は効かない様です!」

「よし、畳み掛けるでござる!」


 アサギさんはその言葉と共にエルダートレントの顔に向かっていく。更にミーヤさん、ミゼリアさん、ウェルアンナさんが続き、最後に俺がファイヤーアローを放ちながら斬りかかる。




 俺が皆さんに話し、提案した策はアイアンスライムを変形させた武器と防具で戦う事だ。


 エルダートレントと戦う前にメタルスライムが怯えていたのを思い出して貰い、体が金属であるメタルスライムが本能的にエルダートレントに恐怖を抱いたという推測を述べると、レイピンさんが理解を示してくれた。


 そこに同じ金属でも恐れを抱いていなかったアイアンスライムはあの霧に対抗できるのではないかという予想に加え、1つ前世の知識を祖父から聞いたことにして教えた。


 鉄は純度が高くなる程、錆びにくくなる。そしてアイアンスライムは俺が錬金術で抽出した鉄のみを食べて進化した、超高純度の鉄の体を持つ。


 また、エルダートレントの霧の効果が全ての金属を同じ様に錆びさせるという訳では無いと考えていた事も試す事を決めた理由の1つだ。




 魔法は魔力とイメージで通常は不可能な事も実現させるが、魔力とイメージさえあれば何でも出来るという訳ではなく、ある程度自然の摂理に沿う形である必要がある。


 魔力とイメージで自然の摂理を歪めて魔法を発動する事も出来るが、大きく歪めるほど魔力の消費が多くなる傾向があり、さらに自然の摂理を歪めるにも限度がある。だから魔法の効果であっても、錆びにくい金属は錆びさせにくいと予測した。


 ここまでならまだ錆びにくいだけで、長時間の戦闘になるとアイアンスライムが危険ではないかと思っていたが、その先は皆さんが解決してくれた。


 まず1匹、投擲で様子を見て、失敗なら急いで回収して撤退しつつ、レイピンさんから聞いた方法で治療する。スライムは核が無事なら養生すれば大丈夫だから、表面なら錆びても問題ない。錆の侵食が核に届く前に食い止めれば助かるだろう。


 問題なければ戦闘続行、先程までの戦いで得た情報を元に対策を練り、短期決戦を狙う。戦闘が終わったら念の為に光魔法で治療する。


 仕留めきれなければまた撤退すれば良いと言ってくれたので、俺達はエルダートレントに再戦を挑んでいる。


「ほっ、と!」


 今回は俺も前衛に加わっているので、エルダートレントの攻撃が襲って来ている。一撃目は真上から枝の攻撃、二撃目はダークボール、三撃目は根で道を塞ぎ、ついでに俺に絡ませて捕まえようとしてきたので切り裂いて通り抜ける。


 すると正面にはエルダートレントの顔。このまま接近し一太刀浴びせようと思っていたが、エルダートレントもそうはさせまいと、今度は口にダークボールの用意をすると同時に枝を振り下ろしてきた。


 俺は体を捻り、振り下ろされた枝に合わせて右から左へ円を描く様に刀を振る。その一太刀で枝は断たれ、切り口から先が地に落ちる。


 続けて飛んでくるダークボールを躱しつつ急接近し、エルダートレントの顔の下、人間で言う所の首を左から右へ横一文字に切りつける。気を纏わせた刃は鋭く、一切の抵抗を感じさせる事なく振り抜かれ、エルダートレントの首に残された大きな傷からは大量の魔力が吹き出していた。


「ウォオオ!」


 これはエルダートレントも不味いと思った様で、攻撃が減り木魔法で急いで傷を癒し始めた。が、それを見逃しはしない。


「『フレイムランス』!」


 レイピンさんの火属性の中級魔法による援護射撃が傷口に叩き込まれた。流石に体内に強い火を捩じ込まれれば大きな効果があったようだ。ついでにエルダートレントの回復速度が格段に落ちる。


 その隙を逃さずにミーヤさん達の一斉攻撃が始まり各自の獲物で顔とその周辺に徹底的に攻撃を加えていく。


 俺はその一斉攻撃には加わらず、追撃の用意をする。俺は刀になって貰っているビッグアイアンスライムに形を変えて貰う。


 地面にビッグアイアンスライムを下ろすと15匹が分離する。そして速やかにビッグアイアンスライムが肥大化して両手を輪にして抱えられる大きさの鉄球になる。その周りには鋭いトゲと中心に穴が空いた半円状の取っ手が付き、分離したアイアンスライム達がそれぞれ輪になって連なって俺の右腕と鉄球の取っ手を繋ぐ。これで武器が刀から鎖の付いた鉄球に変わった。


 いまやビッグアイアンスライムの武器は自由自在に変形が可能で、先程までの刀の形状や投擲用の斧は勿論、槍、大剣、大金槌など様々な武器に変形出来る。その変形の1つがこの鉄球だ。その気になれば、俺は使えないが死神が持っているイメージの大鎌にもなれる。鉄球になって貰う位は容易い。


 ちなみにこの鉄球はこの世界の武器屋で見た物を参考にしている。一撃の威力に特化した対大型魔獣用の武器だが、使うには強化の魔法や気功を使える事が使用の前提で、使いこなすには慣れが必要。この鉄球を使う技術は分銅術に含まれるらしく、俺は一応使うことが出来る。大型魔獣を相手にする時以外、それほど使う機会は無いが……




 腕に繋がった鎖を引っ張ると、ジャラジャラと音が鳴る。鉄球は重いが、気功で強化された体で振り回す。そうして勢いをつけると、鎖と鉄球が音を立てながら風を切る。


「いつでも行けます!」

「よし、散開!!」


 俺の準備が整ったことを伝えると、アサギさんが合図を出す。するとエルダートレントに集中攻撃を加えていた皆さんが即座に散開して場所を開けた。


 俺は鉄球をエルダートレントの顔の中心、鼻に思い切り叩き込む!


 鉄球を叩き込んだ瞬間、メキメキと音を立ててエルダートレントの顔に大きな亀裂が生まれ、魔力が吹き出す。今までの攻撃で元々顔のいたる所に傷が付き、割れ易くなっていた所に鉄球が叩き込まれたんだ、衝撃に耐えられなかったんだろう。


 4,5回は叩き込む予定だったんだが、こうなるともう戦う事は出来なくなったのか、周囲の根や枝が動かなくなる。まだ完全には仕留められていない様だが……


「リョウマ、止めを刺すでござる」

「今回の1番の功労者はリョウマ君ですから」

「最後、きっちり決めちゃって」


 そう言われたのでもう一度俺は鎖を振り回して勢いを付け、エルダートレントの額に渾身の一撃を叩き込む。


 ドゴッ、という大きな鈍い音に続き、エルダートレントの顔が崩れる音が辺りに響く、そして吹き出す魔力の勢いが一度強くなってから弱まっていき、完全に魔力を感じなくなった。


「これで仕留められましたね?」

「もう魔力を感じないので、大丈夫なのである」


 その後各自問題ない事を確認してから、俺は光魔法でアイアンスライムの治療を行った。まぁ、全く問題なかった様なので念のためだけど。何事も無くてよかった。




 俺がアイアンスライムにライトボールを撃っている間、アサギさん達は今後の方針について話をしていた。その結果、とりあえず一度街に戻り、ギルドに報告をして木材回収のために人手と運搬の用意をして貰う事になった。


 ここまで狩るつもりは無かったが、狩った以上放置するのは勿体無い。俺とレイピンさんのディメンションホームには入りきらないが、今回の場合、運搬にかかる費用はギルドに申請すれば必要経費として落とす事が出来るらしいから損は無い。


 こうして俺達は街に戻り、ギルドに報告と依頼を出した。木材の回収は明日以降だ。


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