第二章 18話
2014/2/25の投稿です。本日2話目、少し短いです。
俺は呼吸を整え、3匹のスライムの前でスライムに向けて魔力を放出する。
その魔力にスライムは体を震わせて飛びついてきた。目には見えないので誰かが傍から見たら単にスライムが震えているだけに見えるだろう。
だが、俺は魔力感知スキルのおかげで何が起こっているか分かる。スライムが魔力に反応し、それを少しづつ取り込んでいるんだ。
「やっぱりか……」
昨日スライムの進化を見て思った。あの時スライムは体から魔力を出したり取り込んだりしていた。ヒールスライムも回復魔法を使うのだから、スライムが魔力を持っているのは間違いない。
スライムがヒールスライムに進化した時、回復魔法が原因だと思った。ならば火属性や水属性の魔法を使えるスライムも居るんじゃないか? と考え、1度だが実験もした。その時は失敗だったが、今回はどうだろうか?
あの時は魔法を何度もスライムにかけたが効果が無く、攻撃魔法だとただスライムを傷つけるだけだったから止めたが、これならどうだ?
俺は魔力を再度放出する。今度は火属性の魔法を使う時の様に、魔力が燃えるガスのようなイメージを持って放出する。イメージは人によって違うが、こうすると人体の持つ無属性の魔力が火属性魔法に使う火属性の魔力に変化する。これが出来るかどうかや向き不向きが各個人の持つ属性だ。
通常は属性を変えると同時に魔法として放ってしまうが、俺は魔法にする直前で止め、魔力の状態で放出する。
「普通に魔法使うより、神経使うな……」
そのままの状態でスライムに向けて放出してみると、先程までよりスライムの魔力の吸収が悪くなった。
その後属性を変えて試すと、3匹の内2匹が土属性、1匹が闇属性の魔力を好む事が分かった。
俺はそれから布が乾くまでの間、魔力切れ寸前まで3匹のスライムに魔力を与えた。これで何か変化があれば良いが……とりあえずスライムに害は無いようだからしばらく続けてみよう。
そしてそれから休憩をとって防水布の乾燥が終わったらすぐに街に戻り、ジークさんの肉屋に向かった。
肉屋で俺を迎えたのは、10代の男の子だった。14か15歳位か?
「へいらっしゃい! 今日は何の肉をお求めで?」
「すみません、店長のジークさんに用があって来たんです」
「そっすか。店長! 店長に客が来てますよ!」
その言葉で奥の作業場から血で汚れた服を着たジークさんがやってきた。
青白い肌、病的な細さ、血で汚れた服……仕事中のこの人の見た目、ウォーガンさんとは別の方向で怖いな……
「リョウマ君じゃないか、何か用かい?」
「はい、実は……」
俺は事情を話した。
「なるほど、そんなスライムがいるのか。いいよ、ウチで血抜きした血は好きなだけ持って行きなさい。どうせ使い道が無いからね」
「ありがとうございます」
「今すぐ要るかい? 今日は若手の冒険者が大量に獲物を狩れたようで大量にあるんだ」
「ありがとうございます、いただきます」
俺は作業場に通された。作業場の中には5人の男性が働いており、作業場の壁際には天井の大きな梁に付いた沢山のフックがあり、そこに紐で血抜きの途中の獣がぶら下がっていた。
「こっちだ」
案内されたのは吊り下げられた獣の下、そこに大きな入れ物が2つあり、そこに血が溜まっていた。入れ物は部屋の長さとほぼ同じだ。
「ありがとうございます。このまま飲ませても良いですか?」
「いいよ」
許可が取れたので俺はブラッディースライムを入れ物の中に入れる。するとブラッディースライムはみるみるうちに血を吸い上げ、入れ物の中の全ての血を飲みつくした。
それを作業しながらも見ていた男性が便利だと言ってきた。どうやらこの入れ物がいっぱいになった場合に行う中の血を汲み出して捨てる作業が意外と面倒で、そうでなくてもこまめに洗わなければならない。入れ物が大きい分重くて大変だと言っていた
「大物が来たり、今日みたいに大量に血抜きをする場合は非常に手間がかかる」
「なるほど」
その後、ジークさん達がこれからも血が必要なら何時でも来いと言ってくれた。更に悪くなった肉や骨なども貰える事になった。ゴミになる物だから構わないと、気前よくくれたのだ。これでスカベンジャーやアシッドスライムの餌も手に入る。
ジークさんには感謝だ。
その後、ジークさんの店を出ると……
「キビキビと歩け!」
「痛えな!」
「おいこらテメェら何見てやがんだ!」
「見せもんじゃねぇぞ!」
「黙って歩け!!」
うちの店から出てきた数人の柄の悪そうな男達が、警備隊に連行されていった。何かあったのか!?
俺が急いで店に入ると、そこには従業員全員が集まっていた。
「皆さん、大丈夫ですか!?」
「あっ、店長!」
「今偶然通りかかってみたら警備隊に連行されていく男たちがこの店から出てくるのを見かけまして。皆さん、お怪我は?」
「大丈夫です~、誰にも怪我はありませんよ~」
「フェイさんが一人で取り押さえてくれました!」
「そうですか、ありがとうございます、フェイさん」
「気にする無いネ。これも私の仕事ヨ」
「フェイさんとリーリンさんって、この店の用心棒でもあったんですね。私達、知りませんでした」
「こんな事無ければ話す必要無かたからネ」
「今日は本当に助かりました。フェイさんとリーリンさんは勿論、前もって2人を雇い入れて頂いたリョウマ様のお陰で店と店員、そしてお客様には何の被害もありませんでした」
「いえいえ、僕は何もしてませんよ」
俺、完全に事が終わってから来てるしな。
そう考えていると、リーリンさんがこう言ってきた。
「店主、ちょと話があるネ。今後のために、対策しておく必要あるヨ」
そう言われて、俺はカルラさんとカルムさんを伴い奥に行く。フェイさんと3人娘は店番だ。
そして執務室に行き、話を始める。
「対策と言ったけど、今の段階では今のままで問題無いネ。私か父が店に居れば問題無いヨ。ゴロツキ程度、1人で十分ネ。でも1つ、店主に聞きたい。店主、人に恨まれる覚えあるカ?」
「人に恨まれる覚え?」
「あのゴロツキ達、誰かに雇われたそうヨ。取り押さえてから警備隊が来るまでに、持ってた自白剤で聞き出したから間違い無いネ」
「誰かに雇われた?」
そう言われて考えてみると……
「前に絡んできたゴロツキ冒険者集団を40人ほどボコボコにしましたね……それに、テイマーギルドのギルドマスターにも嫌われてますね……」
結構恨み買ってる可能性はあるな、俺。マシューに至っては恨まれる筋合い無いけど。
「それだと、ギルドマスターの方が怪しいネ。ゴロツキは大金を積まれたと言てたヨ。人数居ても、ゴロツキ冒険者が払える額とは思えないネ。自分が生活出来なくなてでも店主に復讐したいなら払うかもしれないけど、それにしてはやる事が小さいネ」
「今日の連中は店に来て、近くの客に絡んだり大声で怒鳴り散らす程度でした」
「それを注意したフェイさんに掴みかかったのでフェイさんが取り押さえましたが」
確かに生活を賭けてまでやる事ではない。それだけ恨んでるなら俺に危害を加えに来るだろう。
「そうなると、マシューか……」
「それがテイマーギルドのギルドマスターの名前ですか?」
「そうです。僕がスライムしかテイムしてない事を見下し、公爵家の方々と付き合いがあるのを妬んでいる男ですよ」
「そういった輩は何処にでも居ますからね……その男が犯人とは決まった訳ではありませんが、注意しておきましょう」
「ゴロツキが知てたら良かったけど、向こうもバレない様に気をつけてるみたいネ」
「儲けが出てくれば、多かれ少なかれある事です。備えをして、その都度対処するしかありません」
こうして話が進んでいき、まずカルラさんとカルムさんがセルジュさんや商業ギルドのギルドマスターに今日の件を通達、俺が公爵家の人達に今日の件を話しておく事。
そしてこれから基本的に日中はフェイさんとリーリンさんに任せ、夜間の警備にスライム達を店や敷地内に放しておく事に決まった。
そして宿に帰ってラインハルトさんに話したが……店の警備員を公爵家の伝で雇うとか、かなり大事になりかけた。
すぐに雇えるのは、と前置きされて話された人は全員が元軍人か元騎士だった。退役したり怪我を負って辞職した腕の立つ方々を紹介してくれると言われたが、うちの店で雇われるような人達じゃない。ちなみに紹介された中で最も腕の良い人は退役して隠居している元騎士団長。ラインバッハ様の戦友らしいが……雇えるか!!
時間をかけて交渉し、今のところは静観してもらった。
そういや、うっかりスルーしてたけど自白剤……リーリンさん達そんな物まで持ってたのか……まぁいいや、頼りになるし。
今日はもう寝よう。
フェイとリーリンが活躍しましたね。
初めはちょうどゴロツキが来た時にその場に主人公が居合わせた場合を考えていましたが、主人公が始末すると用心棒としての2人の意味が無いので、こんな感じになりました。




