第二章 2話
本日投稿の1話目です。昨日のうちに投稿するつもりでしたが、時間が取れず、日を跨いでしまいました。
昨日の続きで、ヒールスライムの活躍する回です。
何度か交代し、休憩を取りつつ、傷ついた人は回復を受けながら戦闘を続け、倒したゴブリンの数が2000匹を超えた所でゴブリンが来なくなった。
回復魔法使いの人やヒールスライムの頑張りで冒険者側には怪我人らしい怪我人は居ないが、溝を隔てた前線はゴブリンの死体が足の踏み場もない程散乱している。
するとそこに空間魔法の転移で4人の男がやって来た。レイピンさん、アサギさん、ゴードンさん、シェール君だ。魔法使いのレイピンさん以外は返り血まみれだな……
「皆の者、大丈夫であるか!?」
「すまん! 救援が遅れた、状況は?」
「大丈夫みてぇだな? ……ここもすげぇ死体の数だな」
「レイピンさん、アサギさん、ゴードンさん、シェール君、来てくれたんですね?」
「おお! リョウマは無事であったか!」
「お前も相当やったみたいだな? 返り血が酷いぜ」
「僕達も人のことは言えないけどね」
「確かに。しかし、この数は一体何なんですか? 2000以上来ましたよ? その様子だとそっちにもかなり居たみたいですし……」
「うむ、それは説明せねばなるまい」
「えっと、ここの責任者さん誰ですか? こっちの状況を聞かせてください」
「私です!」
そう言ってプロリアさんが4人に駆け寄ってここまでの状況を説明した。
「なるほど、そうだったのであるか」
「はい。リョウマ君とリョウマ君のスライム達が居なければ、確実にここは突破されて、私達の隊は壊滅してました」
「仕方なかろう、これほどの数を相手にして全員ほぼ無傷で生き残れたのは奇跡でござる」
「何はともあれ良かったね、皆無事で」
「あの、本隊の方はどうなったんですか?」
「とりあえず、事態は収束したのである。が…」
「死人こそ出てねぇが、被害は大きいな。偵察では分からなかったが、当初の予想より遥かに大きな群れで、ゴブリンキングが居やがった。取り巻きのゴブリンナイトもわんさかいたぜ」
「ゴブリンキングが居たんですか!?」
ゴブリンキングという言葉に周りがざわめく。
「お前ら! ゴブリンキングはもう始末したから心配ねぇぜ!」
ゴードンの一言で皆が少し落ち着き、その直後歓声が上がる。それを気にせずゴードンは説明を続けた。
「偵察班が見つけたゴブリンが巣穴に使っていた坑道は、奥が少し離れた別の場所や別の坑道に繋がってたんだ。探査の魔法も坑道の奥まで届かなかったみてぇで、俺たちゃ廃坑の地図を参考にして作戦を立てた。
地図上にはあの廃坑と繋がる道は無かったが、どうもあのゴブリン達が自分で坑道を掘って繋げて、道と村を広げたらしいんだ。鉱夫の忘れ物らしきつるはしが何本も落ちていた」
「拙者達が襲撃したゴブリンの村だと思っていた物は全体のほんの一部だった、奴らは向こうの群れが大きくなって巣穴から溢れただけだったのでござる。本当の村とボスは坑道の向こうで、それに気づいたのが襲撃を始めてしばらく経ってからだったのだ。
それまでにまた別の巣穴から多くのゴブリンが逃げ出していて、気付いてすぐに止めようとしたのをゴブリンキングと多くのゴブリンナイトに抵抗され、その結果こちらに多くのゴブリンが雪崩込んだのでござる。こちらの不手際だ、申し訳ない」
「そうだったんですか……私達の事はお気になさらず、誰も大きな怪我はしていませんから。……しかし、何故今までこれほどの規模のゴブリンが、バレずに居たのでしょうか?」
「レイピンさんが言うには、おそらく坑道に巣食ったスモールマウスやケイブバット、ケイブマンティスを食べていたので街の近くに来なかったために見つからずにあそこまでの群れになったと思われます。巣の中に大量のスモールラットやケイブバットの骨がありました。それにこの廃坑には去年から誰も近づいて無いので……」
「役所の連中はもう鉄が出ないこの鉱山の管理を怠ったのであるな。鉄が出ない以上、収入にならないこの坑道の管理費は単なる出費である。しかし……」
そう言ってレイピンさんは周囲を見渡しこう言った。
「これほどの群れを相手に、全員無事で良かったのである。ここに問題がない様なら、回復魔法を使える者を数人連れて行っても良いだろうか?向こうの怪我人の治療を頼みたいのである」
「分かりました。魔力が残っていて、回復魔法を使える人は集まって下さい!」
プロリアさんの言葉に従い出てきたのは、俺を含めて4人だった。
「む……悪いが吾輩の空間魔法で連れて行けるのは3人が限界なのである。誰か1人、自力で来て貰わなければならないのだが……」
「それなら僕が残ります。最近僕も転移を覚えましたからすぐ追いつきます」
「リョウマも転移を使える様になったのであるか? それは良かったのである」
「あ、レイピンさん。荷物が少し増える位は大丈夫ですか?」
「あまり大きくない荷物なら大丈夫である」
それを聞いた俺は2匹のヒールスライムを呼び寄せる。
「なら、このスライム2匹、連れて行って下さい。僕はまだ自分だけしか転移できないので」
「分かったのである。しかし、何であるか? このスライムは」
「ヒールスライム、回復魔法を使えるスライムです」
「ほう! これがヒールスライムであるか! 吾輩、魔獣の研究を始めて長いが、初めて見たのである。分かった、この2匹は吾輩が責任をもって連れて行くのである」
「よろしくお願いします」
「うむ。向こうで待っているぞ。『ワープ』」
そう言ってレイピンさんは俺以外の3人をつれて転移した。俺もプロリアさん達に挨拶をして転移する。
「プロリアさん、スライムは置いていきますので、よろしくお願いします。ほっといて大丈夫ですから」
「任せて下さい。そちらの方も、よろしくお願いします」
「はい。では……『テレポート』」
俺は下級の短距離転移を繰り返して人目につかない所に行き、中級の『ワープ』を使う。流石にあんな人前で、今の俺が中級の空間魔法使ったら騒がれそうだからな。
そして転移した先では多くの人達が傷つき、手当を受けていた。
「リョウマ、こっちである!」
声をかけられた方を見るとレイピンさんが居たので駆け寄ってヒールスライム2匹を受け取り、先日セルジュさんから貰った魔力回復ポーションを飲みつつ怪我人の治療に当たった。
俺と2匹のヒールスライムは比較的軽傷者の治療にあたったが、彼らは軽傷のため意識ははっきりしており、治療の度にスライムが回復魔法を使っている事に驚かれた。
ヒールスライムはスライム種の中でも希少らしいから、見た事がない人が殆どらしいな。希少と言っても、俺は2匹も連れてるからあまりそう思わないが。
その後軽傷者の治療が終わると、今度は重傷者の治療の補佐に回された。
命に関わる程の重傷者はほんの数人だったが、その数人は出血も多く、複数の回復魔法使いに中級回復魔法のハイヒールを何度もかけられている事で命を繋いでいた。
下級回復魔法のヒールでは治療出来ない大きな怪我だが、一時凌ぎにはなるとの事で俺たちもすぐに治療に参加する。
他の回復魔法使いの人にも手持ちの魔力回復ポーションを少し配る。
そうして暫くすると、突然俺が担当しているのとは別の怪我人を担当していた人達が驚きの声を上げる。それを聞きつけた、俺と同じ怪我人を治療していた回復魔法使いの男性が叫んで聞く。
「どうした! 人手が足りないのか!?」
「い、いえ! 問題ありません!」
「こっちの補佐をしてくれてるスライムが、突然ハイヒールを使い始めたので驚いただけです!」
はぁっ!? うちのヒールスライムが!? 俺のヒールスライムはヒールしか使えなかった筈じゃ無いか? 今まで見てた中でヒール以外使った事ないし……
返答を聞いた男性が、俺に目線でお前のスライムはハイヒールを使えたのか? と聞いてくる。俺はすぐに首を振り
「多分、今覚えたか使えるようになったんだと思います。今まで使ってたの見たことありませんから」
「手が増える分にはありがたい!」
そう言って俺たちもまた治療に戻る。それからしばらくして、さっき叫んだ人達の患者とは別の患者を治療していたヒールスライムもハイヒールを使い始めたらしい。その結果、大量の魔力回復ポーションと合わせて、何とか全員の命は取り留められた。
治療が一段落してからヒールスライムのスキルを調べてみると、何時の間にか回復魔法スキルのレベルが3になっていた。ついでに俺も自分のステータスボードを見てみると2に上がっていた。
そんなことをしていると突然10人以上の人に囲まれ、滅茶苦茶お礼を言われた。話を聞く限りでは、俺達が治療した人の仲間だそうだ。俺とヒールスライムの治療と魔力回復ポーションの提供が無ければ仲間が死んでいたと泣きながら語られた。
その対処に困っていると、ギルドマスターがやってきて俺に待ち伏せ部隊への伝令役を命じてその場から逃がしてくれた。伝令の内容は鉱山入口前への集合だ。
感謝します! 心の中でギルドマスターに礼を言い、急いで待ち伏せ場所に戻る。
その後俺はプロリアさんにギルドマスターの指示を伝え、スライムを回収し、全員が集まる鉱山入口前に行く。
「お疲れさん、今日は予想外の大仕事になったが、その分報酬は弾むぞ!」
ギルドマスターが現れると同時にそう言い、歓声が巻き起こる。
「今回は全員少なくとも大銀貨1枚は支払われる事になったぞ!」
その言葉で更に歓声が上がる。特にF,Gランクの冒険者の声が凄い。大銀貨1枚と言えば5000スート、50日分の生活費に相当する。ここまでの高額報酬は初めてなんだろうな。
「文句のある奴は居ねぇな? よし! まだ日は高いが、今日はゴブリンの死体の後始末をして仕事終わりだ!」
そこでギルドマスターは思い出したように俺を見て言う
「そうだ、リョウマ!」
「何ですか?」
「お前さん、魔獣の死体を買い取る事になってるが、ゴブリンはタダで持っていけ」
「頂けるならありがたいですが、タダで貰って良いんですか?」
「ゴブリンに売れる部位なんかねぇからな。皆も良いだろ?」
周囲の冒険者達は俺が魔獣を買い取っていると知らずに驚いた者も大勢居たが、それだけで反対は誰からも出なかった。中には死体処理のために魔法を使わなくて良いからむしろ助かる、なんて言う人も居た。
処理方法が焼却処分だそうで、火属性の魔法使いは魔力切れが近いにも関わらず魔法を要求されるのが辛くて嫌だったそうだ。
「それでは有り難く頂きます。スライム達への報酬に、お腹いっぱい食べさせてあげますよ」
だが貰いっぱなしも悪い、後で希望者にはクリーナースライム浴をサービスしよう。
その後俺達は待ち伏せをしていた場所に戻り、アシッドスライムが居た穴にゴブリンを放り込んでいく。アシッドスライムは既に回収済みなので、もう溝の中に酸はない。溶けたゴブリンと共にアシッドスライムに吸収されたからな。
死体を放り込む作業を終えてから、スティッキースライムとポイズンスライムを溝の中に入れ、ゴブリンを食べさせた。スカベンジャーには地面の血や肉片を食べてもらう、するとその場には血の跡一つ無くなっていく。
これ、犯罪の証拠隠滅に使ったら最強なんじゃないか……? 悪人の手には渡したくないな。まぁ誰にも渡すつもりは無いけどな。
スライムにゴブリンを食べさせている間に、まず作業を共にしたE,F,Gランクの皆さんにクリーナースライムの能力を教えて自分で試してみせる。すると俺の体、装備、服についた汚れと臭いが消えた事で希望者が殺到した。結局全員やって欲しいと言って来た。
俺は11匹のクリーナースライムで全員の清潔化を完了させた後、溝の中のスライム達の食事が終わるのを待ち、次は本隊の担当場所、ゴブリンの巣に向かう。
そこでも同じように数箇所に纏められたゴブリンの死体の処理と死体を運んでくれた人達を装備ごと清潔化する。スカベンジャーには地面やゴブリンの巣の中の汚れを食べさせた。
さっきもそうだったが、ゴブリンの血や体液、そして匂いは非常に落ちにくいため、クリーナースライム浴は物凄く感謝された。
処理が終わった後は即解散となり、冒険者の皆さんが乗合馬車に乗って帰っていく。俺はそこから少し離れた位置でスライム達と共に休んでいる。今日のゴブリンをスライムに食べさせた事で、ポイズンスライム・アシッドスライム・クリーナースライムの分裂が出来るようになった。しかし従魔契約のための魔力がないので魔力の回復待ちだ。
少しでも早く回復するよう、我先にと乗合馬車には乗らず、最後の馬車でのんびりと帰るつもりだ。
今日は普段より魔力を使った。流石に少し疲れたな……
竜馬達冒険者は予想外のゴブリンの数と戦いましたが、不測の事態というのは突然来ますよね?
そして大勢の人が傷ついた所でヒールスライムの活躍でした。




