Epilogue 安心する場所
[ぽかぽか邸/休日の午後14時頃]
少し遅めの昼食をとり、柊はソファでくつろぎ、その横で凪はテーブルでパソコンを開き、キッチンで片付け終わった環に、凪が小声で手招きをする。
「環さん!環さん!柊先輩、ソファで寝ちゃってます。」
「え?」
環はそっと近づき小声で
「ホントだ。めずらしいですね。柊がうたた寝なんて……ここのところ忙しかったですからね」
「なんかイタズラしたくなっちゃいますね。」
凪が言うと環はすぐに乗る。
「それ!いいですね〜!やりますか!」
リビングのクローゼットを開け
「あ!コレどうですか?ヒゲ、つけちゃいます?」
「こっちは?ハロウィンの時の三角帽!」
「サンタさんのおヒゲありましたよ!」
「あ!鼻がついてるメガネどっかにありましたよね?」
2人で、楽しそうに探していると
「おまえら……そんなところで何やってんだ?」
柊があくびしながら、2人の後ろから声をかけた。
「え!あー柊先輩!起きちゃったんですか?」
「あれ、柊……起きたんですか?」
「あぁ……ちょっとうとうとしちゃったな……で、おまえたちは何をやってたんだ?」
「ははは……なんでもないですよ〜ね、環さん!」
「え?はい……なんでもないですよ〜ね、凪くん」
「んー?さては……凪!俺にイタズラしようとしただろ!」
柊は言いながら凪を羽交い締めにした。
「うわ~イタイ!イタイ!僕が柊先輩にそんなことするわけないじゃないですか〜」
「いいや、凪、おまえならやるね!イタズラしようって環をけしかけたな?言い出しっぺはおまえだろ?はけ!」
環は笑いながら
「柊〜凪くんがかわいそうですよ〜はなしてあげてください〜」
「柊先輩、ギブギブ〜」
凪は柊から、ようやく解き放たれた。
「ふふ。でも惜しかったですね~いろいろつけようとしてたのに……」
「ですよね〜環さんノリノリだったのに」
「おまえら……まったく油断も隙もないな……」
◇
[柊と環の寝室/明け方]
「……柊……」
柊は環に呼ばれた気がして目を覚ました。
隣で穏やかな顔をして眠る環の髪をそっとなでる。
環は寝返りをうち、ゆっくり目を開けた。
「……柊?……あれ?……起きてたんですか?」
「うん。少し前にな……環に呼ばれた気がして」
「え?わたしなんか言ってました?」
「ははは……寝言だな……」
「え〜なんて言ってたんですか……はずかしい……」
「ははは……今に始まったことじゃないからな、環の寝言は」
「え〜そうなんですか〜もう柊、早く言ってくださいよ〜いつも黙って聞いてたんですか?」
「ああ……聞いてるよ……かわいいな〜って思って……」
「もう……柊……」
そう言いながら環は柊の胸に顔をうずめる。
柊は環を抱き寄せ
「環、夢見てたのか?」
環は顔を上げ頷き
「はい……なんか、不思議な夢でした……」
「わたし、ずっと誰かの手を掴もうとしてて……
でも届かなくて、届いたって思ったら離されて
それを何度も繰り返して、ちょっと諦めかけたんだけど……
これが最後って思って手を伸ばしたら、誰かが掴んでくれて、
驚いて……『環』って呼ばれて……
声のほうを見たけど、姿がハッキリ見えなくて、
ぼんやりしてて、でもこの手を離しちゃダメだって思って
そしたらグイッて引っ張られて、
怖くて目をつぶったらぎゅ〜って包まれたんです。
『誰?』って聞いても答えてくれなくて……
ゆっくり目を開けてみたけど、やっぱり誰だかわからなくて。
『柊?』って聞いたら、急にぱぁって目の前が明るくなって
眩しくて目を閉じたけど、ゆっくり目を開けたら、
ホントに目の前に柊がいたの」
「ははは……それは目が覚めたときに、目の前に俺がいたってことだな……」
環の髪をなでながら柊が言う。
「わたし、前にも同じような夢を見た気がします。」
柊は環をぎゅっと抱きしめ
「そうか……俺は環の手は離さない。
ずっと隣にいる。だから安心していい。」
環は柊の胸に顔をうずめたまま頷いた。




