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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season13 Le un《ル・アン》― 安心する場所 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season13 Le un《ル・アン》― 安心する場所 ―
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prologue(プロローグ)

※注意

本作には、冤罪(えんざい)や精神的な圧迫を扱う描写があります。

重く感じる場合は、無理をせずご自身のペースでお読みください。

物語は、最終的に救いのある形で描かれます。

[ルーアン・オフィスビルエントランスホール/午後13時30分]



「あら?三浦(みうら)さん?」


「え?」


旧姓で声をかけられた環(たまき)が振り返ると

かつてクロノスで上司だった高瀬(たかせ)玲子(れいこ)だった。


目を見開き、驚いた環(たまき)は声が出なかった。


「……三浦(みうら)環(たまき)さん……よね?」


「え?……あ……は……はい……」


環(たまき)は緊張し、なかなか声が出せないでいると、凪(なぎ)がすぐに駆け寄り


「環(たまき)さん!……あれ?もしかして高瀬(たかせ)さん?」


「あら?あなたは……SEの……」


玲子(れいこ)が言いかけると

受付を終えた柊(しゅう)が2人に近づき


「環(たまき)、凪(なぎ)、どうした?……!」


「あら?……柊(しゅう)くん?」


「え?高瀬(たかせ)さん?」


柊(しゅう)が言いながら環(たまき)をかばうように前に出る。


「ええ……こんなところで会うなんて偶然ね……」


柊(しゅう)は穏やかに答える。


「そうですね……高瀬(たかせ)さんはこちらに打ち合わせですか?」


「ええ、そうよ。あなたたちもここに?」


「はい。」


「あら?柊(しゅう)くん結婚したのね。」


その言葉にビクッとし、環(たまき)がさっと自分の左手を右手で覆う。


「え?」


「指輪……してるじゃない。お相手は?」


「気になります?」


すかさず凪(なぎ)がツッコむ。


「まぁ……そんなことないって言ったらウソになるけど……

 柊(しゅう)くんってどんな人と結婚したのかなって興味はあるわよ。

 クロノスではモテモテだったから。

 一番興味なさそうだったのが……あなた……三浦(みうら)さんよね」


「え?」

「え?」


柊(しゅう)と凪(なぎ)の声が重なる。


「三浦(みうら)さんって仕事は卒なくこなしてとても優秀だったけど、いつも下ばかり見て、コミュニケーションもあまり取らなかったじゃない?

 キレイな顔がもったいないなって思っていたのよね……」


環(たまき)は緊張し俯いたまま、玲子(れいこ)の話を聞いていた。


かつて憧れでもあった玲子(れいこ)主任。


いつからか嫌がらせを受けるようになり怯(おび)える存在になった。


玲子(れいこ)が柊(しゅう)を好きだったことを環(たまき)は知っていた。


柊(しゅう)はそれに気づいているのかいないのか、玲子(れいこ)と淡々と会話をしていた。


「高瀬(たかせ)さんは環(たまき)の直属の上司でしたよね?」


「え?……ええ……そうね……

 あの時、三浦(みうら)さんを救えなかったことが今でも悔やまれるわ」


その言葉に温度はなかった。


「そうでしたか……」


「三浦(みうら)さんは、あなたたちと一緒に仕事をしているのね」


「はい……うちの社員です」


「そう……それならよかった」


環(たまき)は一歩前に出て震える声で言った。


「……あの……玲子(れいこ)主任……その節はいろいろとお世になりました。

 何も言わずに退職してしまって……」


玲子(れいこ)は一瞬目を見開き


「いいのよ……わたしもあなたに何もしてあげられてなかったもの……

 あなたがまたこうして、柊(しゅう)くんたちと仕事がてきているなら、わたしも救われた気がする……」


「……ありがとうございます……」


環(たまき)は頭を下げた。


「あなたたちがここにくるなら、また会うかもしれないわね」


そう言って微笑み、玲子(れいこ)はエントランスホールを後にした。


柊(しゅう)は黙って震える環(たまき)の肩をそっと抱き寄せた。


——この仕事が、過去をここまで連れてくるとは、誰も思っていなかった。



◇



玲子(れいこ)の後ろ姿を遠目に凪(なぎ)が柊(しゅう)の横から


「柊(しゅう)先輩!高瀬(たかせ)さんって柊(しゅう)先輩のこと好きでしたよね?」


「はぁ?何言ってんだ?凪(なぎ)……」


「やっぱり!柊(しゅう)先輩気づいてなかったんですね〜」


「やっぱりってなんだよ……」


「まぁ、柊(しゅう)先輩は環(たまき)さん一筋でしたし〜」


「やめろ〜こんなとこでする話じゃないだろ〜」


環(たまき)も続ける


「柊(しゅう)、私も知ってましたよ。玲子(れいこ)主任、柊(しゅう)のこと好きって……」


「え?環(たまき)まで何言うんだよ……」


「ちょっと有名な話でしたよね?環(たまき)さん!」


「はい!私が知ってるくらいなんで、みんな知ってたと思いますよ」


「はぁ?聞いたことないぞ、そんな話……」


「さっすが柊(しゅう)先輩!美人にモテモテですね〜」


「凪(なぎ)!……まったく何言ってんだよ……」


2人のやり取りに微笑み

環(たまき)は、胸の奥がきゅっと縮むのを感じながら、

これが「仕事の始まり」なのだと、遅れて理解した。

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