出港の合図
「艦長は比叡の副長…沖野さんとも面識があるんですね。そう言えば、HR後に来ていましたね」
和香ちゃんは私と香里ちゃんのつながりに興味があるようで食い気味で聞いてきました。
「香里ちゃんって有名なの?」
「えっと。私が横須賀港に行くと毎回のようにいて、目を輝かせている姿が見えていて、名前だけは覚えたと言いますか…」
「私も見た。あれは怖かった」
和香ちゃんの話に続いて雫ちゃんも見たことがあったようで眉を下げて呟いた。
「あの子、いつもあんな感じだったのか」
「は〜くちゅん」
「沖野さん、大丈夫?」
「え?大丈夫だよ。たぶん誰かが私のことを話しているんだよ」
「あー。そうね」
「鎖霧さんはひどいなぁ。せっかく私たちが仲良くなってきたというのに」
「あくまでも業務的な会話だけで終えているけどね」
「まあ。航海実習だから話がしづらいのがあるかな」
「…。西之島の噴火だけど状況は変わらない?」
「残念だけど、噴火の影響で通信が未だに取れないみたい」
「父島は目と鼻の先だけど入港はできないの?」
「現時点で島の状況を報告はしましたが、送れたのか分かりませんし、指示も来たのかも分からない状況で無断の行動は混乱させるかもしれません。連絡を待った方が良いかと…」
「まあ。確かに無断で航行して混乱したらダメよね…」
「ハクチ…」
「マチちゃん、大丈夫?」
「失礼しました」
香里ちゃんのことを考えているとマチちゃんのくしゃみがその場の空気を切りました。
「マチちゃん、風邪?大丈夫なの?」
「大丈夫です」
体調が心配になり、顔色を見ても元気なのか分からず、保健員の銀子ちゃんを呼ぼうと動くと止められました。
「艦長、私に何か用があるか?」
「何もないです」
マチちゃんは突然現れた銀子ちゃんにびっくりして後ろに下がった。
「マチちゃん…」
「艦長、報告だけを…医療品の補給して助かる」
「父島の状況が分からないから被害に合わせて対応ができるのか不安だけど今できることはしないとね」
「ああ。そうだな」
銀子ちゃんは表情が豊かではないものの優しく微笑みを浮かべていました。
「あと副艦長を預かる」
「どうして私を連れて行くのよ」
マチちゃんはジタバタと離れようとしたものの諦めて連れて行かれました。
「美岬ちゃん、積荷の状況は?」
「確認取れたので、いつでも行けます」
美岬ちゃんは珍しく真面目な表情を見せていて、周囲を見るとみんなも真剣な面持ちで私を見つめていました。
「それじゃあ。行こう」
「おー!」




