3章 錬金国家アルケミー7 -6日目・一方的な闘い-
朝一番でルーシェの装備をバニラの工房へと取りに行った。彼の仕事は素晴らしく、注文通りの品が出来上がっていた。
冒険者ギルドに戻ると、クエストボードの横にある掲示板の前に人だかりができていた。
「ジャポネーグって確か、国の人間が全員魔王の末裔って噂の国だろ?」
「そんな国なんて滅びちまって当然だ」
「あいつ、ジャポネーグ出身の人間じゃないか?」
「黒髪に黒目、間違いない!ジャポネーグ出身だこいつ」
「ここにも魔王の血を引いた奴がいるのか?」
「この人数なら勝てるだろ」
俺の方を見た冒険者達はそう口々にし、ギルドの外に出て行った。ギルド内での殺し合いや喧嘩は、ご法度だからね。
冒険者達は、俺が外に出た瞬間殺す気のようだ。
「あんた外に出た瞬間死ぬわよ…」
「わかってる」
ルーシェは心配そうな顔をして俺を見つめていた。俺は気にせず、状態確認で外に出た連中のギルドカードを見た。
状態確認は、紙やカードなどに書かれた内容まで読み取る事ができる。
ギルドカードの方を見た理由は二つ。一つは、人に対して使った場合、ギルドマスターと同じように対策されてたら、反撃される可能性があるからである。
もう一つは、このギルドカード結構セキリュティが甘いからだ。ギルドマスターやモーブのようなギルドの職員は、その辺も対策して情報を読み取られないようにしているようだが、一般の冒険者はそこまで気を回していない。カードから情報が抜き取られる可能性を考えないのである。
カードから情報を読み取った結果、大体がDランク以下だという事が分かった。数人Cランクもいるようだが、強さ的にはDランクの奴らとそう変わらない。
内訳はEランク12人、Dランク20人、Cランク3人、計35人か。今のうちに待ち構えてる奴らの能力は消しときますか。
能力を消しながら、受付にいるギルドマスターに俺は聞いた。
「この場合、外にいる連中を皆殺しにしたとしたら、俺は罪に問われるのか?」
「まぁ、身を守る為に返り討ちにしてるから、罪に問われる事はないだろうが…」
おっさんの歯切れが悪い。
「何かあるのか?」
「できるなら冒険者同士の揉め事はギルドの外でも勘弁して欲しいな。事後処理が色々大変だしな…」
「俺が一方的に攻撃をくらえば、揉め事にならないよな」
「待ちなさい、せめて結界を…」
ルーシェが俺に結界を張る前にギルドの外へ出た。出た瞬間、魔法攻撃を数発分くらったが、敵意のある魔法は無効化されるから無傷だ。
「何で能力が発動しないんだよ⁉︎」
「何故、能力が使えない⁉︎」
「俺の中級魔法が効かないなんて…」
「やっぱり化け物だ」
「こ、殺せ、殺せ!」
と冒険者達は口々に言っていた。
数人は能力が発動しない事、魔法を撃った数人は魔法が効かない事でパニックになっている。
そうじゃない奴らは俺めがけて近接武器で攻撃を仕掛けようとしている。
俺は見えない手を使い、冒険者35人を一人一人、空高くに投げた。
その間俺は、一歩も動いてないし詠唱もしていない。
これを見ていた人達の大半が、攻撃を仕掛けていた冒険者達が空高くに浮き落下した。原因は冒険者の誰かが魔法に失敗してああなったのだ、と思っただろう。
見えない手に手加減を足している。だから重症者はいても死人はいないはずだ。




