0話 未来を殺す少女の断章
この作品に興味を持っていただいてありがとうございます。
本作品は、“何の力も持たない村娘の主人公が死に戻りを駆使して一歩ずつ進んでいく”ので、一部ですが残酷な表現を含みます。
それでも良いという方ぜひ、最後まで読んでみてくださいね!
あなたは、死んだことがありますか?
おそらく、その問いに「はい」と答えられる人はいないだろう。
なぜなら普通、死んだ人間は戻ってこない。
それは、この世界が生まれた時から変わることなく存在し続ける、絶対の理。
命あるものは生まれ、いつか死に、その生涯を終える。
誰であろうと、その境界を越えて戻ることはできない。
──本来ならば。
ではもし、『死んだ記憶すら残らないまま、何度も同じ人生をやり直していた』……としたら?
あなたは、自分が一度死んでいることに気づけるだろうか。
死んだことを覚えていない。
何が原因で死んだのかも、どうすればそれを避けられるのかも分からない。
それでも、死ぬたびに時間だけは巻き戻る。
そんな力を聞いて、あなたはどう思うだろう。
「欠陥だ」と笑うだろうか。
「そんな力には、何の意味もない」と。
──その結論を出すには、まだ少し早い。
なぜなら、
『──死を覚えるたびに強く……いや、狂っていくのか。人間というのは』
レナの頭上で、聞いたこともない重厚な声が響く。████すら跪かせる、その巨躯だけで大地が軋むほどの圧倒的な存在──『███』の冷徹な眼光。
世界は、血と硝煙の匂いに満ちていた。
天を突く巨大な建造物が崩落し、漆黒の空から赤黒い灰が降り注ぐ。
その滅びの渦中で、██歳の少女──レナは、地に足をつけ、静かに息を整えていた。
その瞳には、世界のあらゆる理を解き明かす『██の線』が、幾重にも絡み合って映し出されている。
かつては、ただの「死は恐怖」でしかなかった。
泣き叫び、身体を折り曲げ、何度も砕かれ、殺され、白い世界で絶望を反芻するだけだった。
だが──今のレナは、違う。
『レナ! もう振り向かないって決めた! あの日、君が私を連れて逃げてくれたから……今の私がいる!!』
水色の瞳に神聖な蒼炎を宿し、短剣を腰に下げ、自慢の爪を構えて突撃する███の叫び。
『ボクの命は、最初から君に預けてある。さあ、行こうレナ!』
全身から血を流しながらも、不敵な笑みを浮かべて敵の群れを食い止める████。
『『魔導付与・神域』! レナさん今です、世界の果てまで走ってくださいッ!!』
ベレー帽を投げ捨て、魔導の極限を超えて光を放つ████。
『俺……多分この時のためにこの世界に来たんだよ。大丈夫。眼前の敵は全て俺が薙ぎ払うから』
██を構え、曇りなき真っ直ぐな瞳でそう告げる███。
『いやぁ、僕こういうの向いてないと思うんだけど…』
『っ、なにを仰いますか!████』
『そうですよ!███』
いつもの掛け合い通りだが、その言葉とは裏腹にニヤニヤしている████。
記憶の断章が、幾重もの運命の叫びが、レナの脳裏を駆け抜ける。
「……ううん。狂ってなんか、ないよ」
レナは████を固く握りしめた。
かつては恐怖に震えていた身体には、今や幾度もの死を越えて紡ぎ上げた、不屈の魂が宿っている。
(何回死んだって……何万回身体を切り刻まれたって……!)
視界に広がる無数の『線』。
その中に一筋だけ浮かび上がる、すべての惨劇を覆す『████の線』。
「私はみんなの手を絶対に放さない……! ハッピーエンドは、私がこの手で奪い取るッ!!」
『██を視る者よ。お前が手繰り寄せているのは希望ではない。この世界の『崩壊』だ。』
████の嘲笑が、過去から届くかのように耳を打つ。
だが、レナは躊躇わない。
世界が崩壊しようと、運命がどれほど残酷だろうと。
あの白い世界で泣きじゃくっていた自分は、もうどこにもいないのだから。
「──さあ、始めようか」
踏み出した一歩とともに、世界は目も眩むような「██」へと呑み込まれていった。
◇
「ハッ……!?」
息を呑み、レナは跳ね起きるように目を覚ました。
見慣れた天井。████の匂い。
手に残る微かな温もりと、胸を締め付ける理由のわからない切なさ。
「……あれ……? 私……何を見て……」
覚えていない。
けれど、胸の奥で燃える小さな『意志』の芽生えだけを感じながら、少女は立ち上がった。
すべてが始まる、あの日へと──。
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