第251話 ふたりで入浴タイム
フランスは、あたりをきょろきょろやった。
大浴場は立派な作りだった。城自体は古いようだが、浴場の作りは新しい。
イギリスのお風呂好きの影響かしら。
フランスは服を着たまま、浴場の中をのぞきこんだ。
湯気立ちこめる空間には、独特の香りが満ちている。
「わあ、なにこの香り。すっごくいい匂い」
うしろから、シャルトルも同じように中をのぞきこんで言った。
「ハーブを入れているようですね」
「え~、素敵~」
フランスは、シャルトルに向き直って言った。
「シャルトル、脱ぐのを手伝います」
「え、ええ、ありがとうございます」
フランスがシャルトルの前に立って、彼女の服に手を掛け、迷いなく脱がしていくと、上衣を脱いだシャルトルが、困惑した顔で言った。
「やっぱり……、なんだか、罪深い気がします」
「大丈夫です! 大丈夫です! すべてわたしにおまかせください!」
「なんだか、こわいです。フランス、あなたが先に脱いでください」
「わかりました!」
フランスは素早く全部脱いだ。
別に隠す必要もないので、両手をひろげて、どうぞ見てください、という感じにしてみる。
困惑顔のシャルトル。
「……」
「脱ぎました! 変なことじゃないでしょう?」
「ええ……、まあ」
シャルトルは、困惑顔から、興味津々という表情にきりかえて言った。
「綺麗ですね」
そうまじまじ見られると、なんだか恥ずかしい。
「あの、触れてみても?」
「どうぞ」
シャルトルが、そっと遠慮気味にフランスの肩にふれた。そのまま、そっと下に降りて、フランスの胸にふれる。
冷えた指先が、なんだかくすぐったい。
シャルトルはちょっと考えるようにしてから、フランスの二の腕あたりにふれて言った。
「こっちのほうが、やわらかいです」
「そうですか?」
フランスも、自分の胸と二の腕にふれて、比べてみる。
「ほんとですね」
ふたりでくすくすやる。
フランスは、シャルトルの服を、傷にひびかないようそっと脱がせた。
胸にきつく巻いてある、かたい布を取り去ると、彼女の女らしい胸があらわになる。
鎖骨のあたりから、腹にかけて、おおきく火傷のあとがあった。それは、片方の足にまで、広がっているようだった。
体中に傷跡がある。
大きく、切り裂かれたような跡。
でも、それらのどれひとつとして、シャルトルの美しさには影響しないように見えた。
フランスは、背にあるまだ生々しい傷が痛まないように、最新の注意をはらってシャルトルの身体を洗った。
お互い、洗い合いっこする。
シャルトルが楽しそうに言った。
「これは、そうとう自慢できます」
「どういうことですか?」
「だって、修道士なのに、女性と風呂に入って、裸をまじまじと見たあげく、女性の身体に触れて洗うなんて。信じられない所業です」
「シャルトルのなかでは、まだ修道士なんですね」
「ずっと、長くそうして生活してきましたから、いまだに、修道士としての心構えみたいなものが抜けないんです」
「なんとなく分かります。わたしも、修道女時代の名残なのか、豪華な部屋だと落ち着かない気持ちになります。罪深いことをしているような気持ちになって」
「分かります。小さな部屋に、質素なベッド、古びた机が、一番落ち着きます」
「同じですね」
ふたりで、笑いながら、並んで湯につかる。
ハーブの良い香りが、つよくかおった。
シャルトルがフランスの二の腕を、つまんでもにもにした。
「気に入りました?」
「気に入りました。やわらかくて、やみつきになりそうです。わたしのは、こんなにやわらかくないのに」
フランスは、シャルトルのほうをちらっと見て言った。
「わたしも、さわってみたいところがあります」
「どこですか?」
「その……、筋肉が割れている腹が……。かたいのかきになります」
「力をいれた状態だと。かたいですよ」
どうぞ、と言われて、ふれてみる。
「きゃ~、かたい~、素敵~!」
シャルトルが、同じようにフランスの腹にふれる。
「あなたのは、ぷにぷにです」
「やだ~」
ふたりできゃっきゃやりながら、そこらじゅう触り合う。
シャルトルが、フランスをぎゅっと抱きしめるようにして言った。
「こんなふうに、過ごせるなんて、夢にも思ってみませんでした」
「まだまだ、先があります」
「そうですね。ないと思っていたのに。まだ、わたしにも先があった」
フランスは、シャルトルの背が痛まないよう注意しながら、抱きしめ返して言った。
「わたし、あの処刑の日、あの広場に行ったんです」
「……」
「ヴラドとイギリスに手伝ってもらって、あなたを教国から攫うつもりでいました」
「……」
「シャルトル、あなたのことを大好きで、大切で、死なせたくないと思っているひとがたくさんいます。わたしもそのひとりです」
フランスは、シャルトルブルーの瞳をのぞきこんで、言った。
「あなたがもし、また危機に立たされて、見捨てろと言っても、何度でも同じようにします」
シャルトルが、フランスの頬に触れて言う。
「かわいいわたしのフランス。やっぱりイギリス陛下にわたしたくありません」
きゃっ。
渡さないでください!
お互いに、頬にキスしあう。
くすくす笑いながら、顔中キスを押し付け合う。
やだ~。
もう一生、ここにいようかな!
風呂から上がると、イギリスがちょうど女たちがいる談話室に来ていた。
イギリスが、今まさに、風呂から上がってきました、という状態のフランスとシャルトルを見て、怪訝な顔をして言った。
「ふたりで……、入っていたのか?」
「ええ、そう——」
フランスが答えていると、シャルトルがフランスをぎゅっと抱きしめて言った。
「ええ、ふたりで、洗い合いっこしました」
「……」
シャルトルの笑顔と、イギリスの不機嫌な顔がぶつかる。
女同士で風呂に入っただけよ。
にしてはそうとう興奮しちゃったけど。
永久保存‼




