私達は16歳です
「愛の光に照らされし尊き魂よ。今こそ神のもとへ旅立つのです!」
「魂の船クリスタルスター出航!」
夜空に輝く無数の星に囲まれて、人々は眠りにつく。そんな美しい夜でもあるが、美しさの裏側で、動くもの達がいる。
そう、悪魔達が、じわじわと人間を侵食するために動き出す。闇を利用して、人の体に巣食う悪魔。
その悪魔達を探し出し、除霊をもって浄化させ、神の元におくり、その魂に裁きを受けさせる少女達がいた。
瑠璃町3丁目の国道に並行してのびるその道は、街の人たちが往来する少し賑やかな道。
国道を走る沢山の車の音はほとんど聞こえることはなく、人々の挨拶が響き渡る。
朝6時30分。
瑠璃町3丁目5番地にある、白くてかわいい家の中では、賑やかな朝が既に始まっていた。
「ちょっっと!花蓮やめて!それ私の卵だからね」
制服の白いブラウスが汚れないように、ピンク色のエプロンをかけた花蓮が、お弁当のおかずを詰めていた。
「えっ!何言ってんの。花音はそーやって勝手に自分で決めちゃうけど、私はそんなこと聞いてませんので知りませーん。そもそも後から起きてきた人の話なんて聞けませーん。」
花蓮がお弁当のおかずを全て作り終わる頃に起きてきた花音は、支度もままならない状態でお弁当を覗き込みにきていた。
「邪魔だから向こう行って。花音の分も詰めとくから!」
両手が塞がっている為に、お尻で花音を台所からぐいぐい押し出した。
「ちょっ、ちゃんと入れといてね」
押し出されながら、せんめんじょせともどっていった。
しばらくして支度の出来上がった花音にお弁当を渡し、2人は玄関に向かった。
玄関傍には靴専用の部屋があり、そこに一度まわり込んで靴に履き替え、玄関手前から2人は出てくる。
そして玄関の扉を開けて一緒に外に出る。
太陽の光がサンサンと、眩しく真っ直ぐに2人を照らす。
「行ってきまーす!!」
そんな元気な2人を送り出し、玄関の扉はガチャリと閉まった。
2人は今年の春に高校生になったばかりの16歳。よく双子に間違われるが、そうではない。
同学年の年子なのだ。
お姉さんが花蓮で妹が花音。朝の風景見たまんまだ。
2人とも整った顔つきでスタイルも良いから人目を引く。
並んで歩くと、すれ違うもの皆振り返るほどだ。
そんな2人が通う学校は、丘の上に立つ教会。
中学生と高校生が一緒に学んでいる。
時には小学生もいたりする。
そんな学年が変わっても同じ顔が並ぶ学校に、新しさは感じなくとも、とても居心地が良いので、2人はとてもその場所が好きだった。
教会は丘の上なので、結構な勾配を登る。
この勾配を登るのに、初めてだとだいぶ時間を費やす。
だがこの坂は必ず、自分の足で登らなければいけないルールがある。
慣れてくるとこの坂、雲の上を歩くかのように軽々と登れるようになる。
最近この学校で学び始めた子が、坂の途中で辛そうにヒーヒー言っていた。
花音はそのこをみつけるなり、そばによって声をかけた。
「大丈夫?」
声をかけた矢先に、その子を挟むように反対側には花蓮が追いついて隣にいた。
「つらいよねえ、この坂。でも、このお姉ちゃんも平気になったから君も大丈夫だよ」
花音が体を屈ませながら、元気づける為に話しかけた。
「なにそれ、また勝手なことを。ごめんね、体を支えてあげることはできないけど、少し楽に行けるように一緒に数かぞえて登ってみようか。名前教えて」
横にいた花蓮が、花音に呆れながらもそのようにつたえた。
「宇宙」
2人はその名前を聞くと、花音が先に声を上げた。
「よし!宇宙。数かぞえるぞー。腕を大きく前後に振って、膝を高くあげましてぇ、行きますヨォーいちに、いちに、いちにぃさんし。いちにぃいちにいちに、いちにぃさんしぃー」
2人はその場で足踏みを始めた。
数をかぞえはじめた勢いに、少し驚いてはいたがだんだんとそのリズムに、宇宙は引き込まれていた。
体が自然に動き始めているかのように、腕を前後にふり、脚が上がった。
「のぼりまーーーす」
2人がそう言うと、宇宙も足も自然と動き始めた。
気がつくとあっという間に3人で、登りきっていた。
「すごいやったー。お姉ちゃんたちありがとう。最初すごく辛かったけど、お姉ちゃんたちと登ったら全然疲れなかった」
2人は宇宙を覗き込むように体をかがめて、宇宙に向かってにっこり笑った。
「じゃあこのまま一緒に学校まで行こっか」
花音はそう言うと、いきなり走って行ってしまった。
その姿を見ながら、宇宙の頭の中は理解できずコンガラがっていた。
それを隣で理解していた花蓮が、
「ごめんねぇ、あの子あーいう子なの。宇宙くんに、追いかけてこい、ってことなのよ。いつか競走してあげてね」
そういうと、2人は一緒に学校まで歩いた。
坂を登り終えると、100メートルほど先に教会がある。教会の周りは木製の門があり、教会で勤務する用務員さんが、早くから開けておいてくれる。周りは可愛らしい花で溢れでいる。
この花の手入れも、その用務員さんが行ってくれている。
70代位の男性だけれど動きも機敏で、その姿は、ものすごく若くみえる。
「おはようございます。」
挨拶が飛び交うその学校に通う生徒は、現在は12人。
小学生は2人。
中学生が6人。
高校生が4人。
となっている。
そして、この学校に勤める先生は5人。
校長である阿賀都神父様をはじめとして、
男性の加茂野宮先生と安倍野宮先生
女性の麻宮先生と絹宮先生の5人がいる。
教師たちは、担当教科以外は姿をもちろん見せない。
だが、ある時だけは全く異なる行動をする。
「青い蔵町3.5丁目穢れが発生、悪魔が現れたもよう、至急向かわれたし!」
それは突然起こった。
花蓮と花音の腕に振動がはしった。
それは腕につけている時計のようなものからだった。
急いで2人は立ち上がり、教会から出ると裏手に
まわった。
2人が入り口から出ると、教会内にいる生徒たちも動き出した。
教会の机は皆が知る通り、真ん中の通路を挟んで両側にある。
その1番前の両端に座る、左端のミキ(中2)と右端のコマ(中3)が机にある、あるボタンを押した。
押し終えると同時にガシャン!っと地中から重い音がした。
するとその音を始めに、地中から教会内全部を囲う鉄の壁が現れ、机も、下から現れたコンピュータもろもろが設置された机と入れ替わった。
生徒はそれぞれの位置で、これから起こることへの動きを始めた。
教会の外に出た2人だが、外に出て裏手に回ると、そこにはとても太い大木がある。
2人はその大木の前に急いで立った。
大木は感知すると、2人の背丈ほどの扉が姿を表し、2人は迷わずそこに入った。
扉が閉まるとすぐに、時計のような機械がついた方の腕を、2人は高らかに上げた。
「「聖なる光よ!」」
そうして、同時にそう叫ぶと、その言葉に反応したように、ものすごい光が彼女たちを包んだ。
一瞬に放たれたその光の中から現れた彼女たちは、ある行いをする為の聖なる姿へと変わっていた。
そしてらその光に導かれ2人が降り立った場所は、これから始まる、あるもの達との戦いが始まる場所だった。
そこは廃墟のような部屋で、綺麗と言われるようなものはひとつもなく、明るい色のものもない。
カーテンも引き裂かれ、あるのは薄汚れたベッドだけだった。
そのベッドに人らしい姿がある。
頭までシーツを被っている。
すると、花音が先に声を上げた。
「私達シスターズシスター。私はマリー!神に仕えしエクソシスト!神の使いに導かれ、悪魔を倒すべく参上!穢れたもの達よ!お前の名を言いなさい!」
シーツの中のものは、その声を聞き、もごもごと奇妙な動きをしている。
そして、続いて花蓮がいった。
「私はシスターズシスター、リリー!私からは聖なる水を与えましょう!そして、このロザリオから発せられる音を聞けば、あなたは姿を現さずにはいられなくなります!」
名を変えた花蓮が、その不思議な音を発せるというロザリオを、ベットにいるものに向けて腕を伸ばした。
すると数秒で、シーツの中から苦しそうに悶えながら、その姿を現した。
苦しさと怒りで、ものすごい形相をしている。
身体を悪魔にのっとられた姿は、そのもののように顔色も悪く、やつれていたので、より不気味さを増していた。
「お前の名を言いなさい!」
花音が何度も繰り返すが、返事は返ってこない。
そのものは、ただただ奇妙な動きを繰り返しているだけだった。
「参ったなぁ、どーしよーかリリー?」
花音がそう求めると、ロザリオをかざし動きを抑えている花蓮は、
「もう!今回はあなたが主で頑張るって言ってたじゃない!」
花音は何やら背中の辺りをもごもごし始めた。
何をもごもごしているのかと思えば、背中から聖書が出て来た。
「リリーやっぱ交代。私には無理だった。できると思ったのになぁ」
その聖書を花蓮に差し出すと、
「適材適所ってやつじゃない?私もこれ結構大変慣れてないって結構罪ね」花蓮はそう答えた。
2人は笑みを浮かべながら、決して喜べない今の状況を打破すべく、本来の役割と立ち位置を入れ替え、すっきりした面持ちで、改めてやり直した。
昨晩たまには違う方を経験したいと、役割を入れ替える相談を、花音がしたようだったが、うまくいなかった。
「改めまして。私はリリー!ここはあなたのいるべき場所じゃないわ!今すぐ神の元へと送ります。悪魔よ!あなたの名は!!」
花蓮は自分の立ち位置にすっきりして、いつも以上に声を張り上げた。
同じく花音も、慣れた手つきでロザリオを扱ったが、かざすというより、叩き上げる感じで、シーツの裏の形をなぞっていた。
そのものが唸り始めると、花蓮と花音は一度隅に寄った。
花音が、今度は名前を聞くことを連呼し始めると、花蓮は聖書を読み始めた。
唸りはだんだんと強くなり、その姿を現す。
シーツの中にいた時より身体は大きくなり、みてくれば女性だが、全体的には男性のようだった。
「あー名前も言わないし、今回はこんな感じなのね」
と花音はその姿を見ていった。
「そうねぇ。低俗な悪魔でよかったじゃない。早く帰れるし、さぁ、一気に倒しちゃいましょ」
花蓮がそう応えると、2人はその悪魔を挟み込むように場所を移動した。
そして悪魔に向かって両手を伸ばすと、何やら呪文を唱え始めた。
唱え始めるとその悪魔の周りに膜が張られたようになり、身動きは封じられた。
悪魔はそれに苛立ち、その場で気持ちの悪い声を出しもがいている。だが、すぐに声は出なくなった。
出ない声に苛立ち、さらにもがきは大きくなる。
それは、花蓮と花音の伸びるその両手から及ぼされたす力で、その悪魔のようなものはまるでビニール袋に入れられたかのようになったのだ。
両手を広げた2人の周りは、黄金のオーラで満ち溢れはじめた。
「「名前のないこの可哀想な悪魔をどうぞお引き受けください。神の裁きを、このものにお与えください。この可哀想なものが、永遠に彷徨う魂でないことを祈り、私たちは神の元へ送ります。」」
だんだんと上に運び、2人はそれぞれに表腕を右と左に切り、ビニールを絞るように打ち上げると、「「ルーチェディヴィーナ!」」と発した。
すると、聖なる光と共にピシャリとその悪魔は消えた。
しばらく静寂な空気が流れた。
一息ふぅ〜っとしたくなったとき、光が消えた場所から小さな女の子が現れ、そのままベッドに落ちて来た。
「あー来た来た、終わった終わった。無事完了。」
そう花音が両腕を頭の後ろに組みながら言うと、
「まだよ。この子を確かめないと。もしもし、おきて!わかりますか?もしもし」
と、落ちて来た子供の肩を優しく叩いた。
すると、ゆっくりと子供は目を覚ました。
「あなたのお名前は?」
子供は小さい声でこたえた
「ほのか…。」
その声を聞いた2人は顔を見合わせ、腕時計のようなものにつくボタンを押した。
2人は一瞬でその部屋から消えた。
教会に戻って来た2人は大木から出ると、すっかり元の制服姿の高校生に戻っていた。
教会の中もすっかり元通りだった。
「おかえりー。退治簡単でよかったね。」
中2の天が振り返りながらいった。
「だね」
花音がそう答えると、その姿を花蓮も微笑みながらみて、頷いていた。




