バカVSヤクザ「1.母親が暴力親父を追放したと思ったらアル中男を拾ってきた件」
小学校2年の冬、両親が離婚した。待望の離婚劇は紆余曲折の末、酔いどれ家庭内暴力の権化こと実父の追放という形で決着がついた。万々歳だ。
よく、とくにアメリカ映画なんかでは両親が離婚し、お父さんと離れ離れになったことが辛くて寂しくて後々まで尾を引いたガキが非行に走ったり大災害で置き去りに遭ったり…そして父ちゃんが一念発起して立ち向かい最後は家族の絆で困難に打ち勝って元サヤ大団円なんて終わり方をするけれども。
冗談じゃねえ。
どんな大災害も家の外からくるんじゃねえか。
家の中で疫病神が暴れてるんだから追い出すほかねえべよ。
ところが敵もさるもの、出ていく代わりに…と交換条件を出してきた。
普通ありえねえだろ、慰謝料すらビタ一文払ってないどころかそもそも生活費だって入れてたか怪しいんだぞアイツ。
その条件が「週末に自分とこに子供らを泊まりに来させること」だった。
あの時点で殺しておくべきだった。そしてその不平等条約を母親は呑んだ。
まあ、そのぐらい一刻も早く追い出さないと本当に死人が出てたはずではあるのだが、それにしたってあんまりだ。
そっからのおよそ10年は一時期の新日本プロレスばりの大暗黒時代だった。
辛いなんてもんじゃない。
今に至るまで尾を引く心の傷だの性格のゆがみだの、全部この時だったと思う。
かけがえのない時間、かけがえのない若さを相当ムダにされた。
良いこともあったはずだし、楽しいこともあったけど、ひとことで言うなら大暗黒時代というほかないぐらい、暗く鬱屈とした日々が長く続いた。
そんな中でデカい出来事が幾つかあり、そのひとつが
お母さんが新しいお父さんを拾ってきた!
というものだった。
母親が暴力親父を追放したと思ったらアル中男を拾ってきた件。
ラノベにならねえかな、どうにかAIっぽいクソ薄っぺらい線の細いタッチのイラストの表紙つけちゃえばなんとかならない?
私が追放モノのラノベ面白くないのは多分、実際に追放してるからなんだろうな。追放ってあんまないじゃん。エンタメ期のFMW横浜アリーナ大会じゃあるまいし。
で、平日は実家。土日祝日や世間の大型連休には向こうの家に泊まりに行かされる日々。
何が辛いってもれなく週末しんどいのわかってるから、もう何曜日に何しててもキツイんだよね。あと何日、何時間でまた…って思うから。これが本当に情操教育によくなかったと今でも思う。
どうせ自分なんか、という性格の元凶のデカい一つがコレだった。
いま楽しくても、どうせ…って。
楽しかった時間が終わると、その何倍も殴られたり怒鳴られたりなじられたりする。それが、逃げ場のない狭いアパートやマンションに監禁されることになってパワーアップするわけだよ。
地獄のような日々だった。今からでも幾らか賠償金ぐらい取れるなら寄越せと思う。
奴の住まいは何度か変わっていて、離婚が決まって最初の時は何軒か一緒に見に行った。最初は、私も一緒に出ていくという話に(あのバカの頭の中で勝手に)決まっていたから。
ずいぶん田舎のボロアパートに行ったこともあるし、割と家から近い物件もあった。
今となってはボンヤリとしか覚えてないけど、たぶん結構な山の方の田舎で…水道の蛇口とか玄関の作りとか、いい感じに古かったな。曇ってて、まわりは田んぼや狭い道路、そして広くてデカい農家。そんな場所だった。
で、紆余曲折のさなかに新しいお父ちゃんが来た。
私は土壇場で実家に残ると宣言して難を逃れた。あれと同居してたら確実に殺されるか、自分で死んでた。
で、こっちの新しいお父ちゃんを親父に選んだ。
そのきっかけになる出来事が、この先に待ち受けていたんだ。
続く。またあした。




