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成り果ての理想郷  作者: 棟崎 瑛
第1章 未知なる開幕
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第13話  『渡されたのは』

今回は皆との再会とあいさつだけで区切らせてもらいました


 無事自身の身元を証明できた渉斗は、その場でぐったりとしたように座る。

 この世界に来てまだ僅かな時間ではあるが、それが途方も無く長く感じさせられるほど、濃密な時間を過ごした。


「さて。お前は晴れてスペシメンズの一員となったわけだが、メンバーをまだ紹介してなかったな」


 またしても子供のような悪戯顔の俊也に、思わず首を傾げてしまう。


「来い。良いモン見せてやる」


 言われるがままに俊也の後を追う。

 彼は堅く閉ざされていた奥の扉を開けると、そのまま部屋を出て行った。

 彼に習って部屋を出て行くと、扉の両脇には先程まで部屋にいた兵士達が敬礼をして控えていた。


 彼らの態度に少なからず驚いていた渉斗を見て俊也は笑いながら話した。


「驚いたか?お前はもう身元不十分の不審者じゃなく、俺の親友でスペシメンズのメンバーだ。堂々としてろ」


 そう言われても未だ呆気に取られている渉斗だったが、兵士達の瞳を見て考えを改めた。

 彼らの瞳には先程のような敵対心ではなく、敬意を纏った視線が伺えた。

 そんな彼らを見たら、こちらも取るべき態度は一つだろう。


「ほう、なかなか様になってるじゃないか」


 渉斗は彼らに向けて精一杯の、見事な敬礼で彼らに応えた。



 ――――――――――



 着いた先はとある会議室の扉。その前に二人は立っていた。


「お前が先に入れ」


「俺がか?」


 俊也の言葉に疑問が残りつつも、渋々了解したと彼はドアノブに手を掛ける。

 一瞬だったが会議室内に人の気配を感じた。


 そしてようやく扉を開けると


「渉斗っ!!」


「どわっ!?」


 謎の人物に抱きつかれ、予想外の衝撃に声を漏らしてしまった。

 何事か理解できず、渉斗は若干焦りながら抱きついてきた女性の顔を確認した。


「お前!もしかして飛鳥か!?」


 抱きついてきた女性の正体、それは飛鳥だった。姿は大人の女性へと変化しているが間違いなく飛鳥だった。


「飛鳥だけじゃないぜっ!」


「うわっ!って、一輝か!?」


 いきなりもう一人男性が抱き着いてきたと思って見たら、それは一輝だった。


「なんで一輝まで・・・・って、おいおいまじかよ」


 二人からやっと目を離し辺りを見てみれば、そこには光貴、伽耶、伸介と、かつての友人達が揃っていた。

 余りの光景に渉斗は口が塞がらずにいた。


「な、なあ俊也・・・・これってどういうことだ?」


 未だ状況が掴めずにいた渉斗は、この場の主である俊也に尋ねるしかなかった。


「見ての通りさ。お前から見て・・・十年後のこいつらだ。全員、鳴山に残っててな。こいつらは皆スペシメンズのメンバーだ」


「そう、だったのか・・・・」


 未だ呆気に取られている渉斗を見て、吹き出したように伸介が笑い出した。


「ぶはは!流石にサプライズが過ぎたか?まあこっちからしちゃぁ、過去からやって来た人間見る方が驚きなんだけどよ」


「え?お前ら俺の正体知ってるのか?」


「うん。さっきの俊也君と渉斗君との会話はこっちからも見ていたの。この場で君のことを疑う人は誰もいないよ」


 答えてくれたのは伽耶。高校生の時以上に母性が溢れているように見える。


「そうだな・・・・改めて挨拶しとくか。おいそこの二人、そろそろ離れてやれ」


 俊也の注意でやっと離れた二人だったが、一輝は満面の笑みで、飛鳥は今さら恥じらいを感じたのか赤面している。


「そんじゃあ俺からだな!渉斗!よく俺らのとこに来てくれたな!嬉しいぜこのヤロー!」


「俺もだぞ一輝。お前らのとこに来れてよかった」


 そう言って拳を合せる二人。今度はしっかりと返事をして挨拶をした。

 一輝はこの6人の中でも一番変化を感じた。なんと言ってもその髪だろう。以前は茶髪だったが今は金髪に染めている。違和感はあるがとても似合っている。


 続いて一輝と入れ替わりに挨拶してきたのは光貴。


「やあ渉斗。まさかこんな形で君と再会できるとは思ってもいなかったよ。色々話したいことはあるけど、改めてよろしく」


「俺もまさか十年後のお前達に会えるとは思ってもなかったさ」


 彼の大きな手と握手をして、以前よりも更に彼が、見た目以外にも大きくなったのを感じ取った。

 服の上からでもうっすらと分かる隆々とした肉体と、それに見合った身長。しかしその肉体からなる重圧感を全く感じさせてない優しさは、以前と変わっていない。


 続いて伽耶が前に出る。


「お久しぶりね、渉斗君。私達にとっては数年ぶりだけど、渉斗君からしたら数日ぶりなのかな?今度沢山おしゃべりしようね」


「ああ、俺も不思議な気分だよ。後で沢山話そう」


 以前よりも大人の女性の雰囲気を漂わせた伽耶と、お互いに握手をする。

 6人の中で一番時間の差が分かるのは彼女かもしれない。雰囲気と共に外見もとても美しい女性へと成長していた。


 次に挨拶してきたのは伸介。


「よお渉斗。昔から来たってんだから当然だが、腕は鈍っちゃいねえだろうな?」


「勿論な」


 握手をすると同時に二人して異常なほど力が籠る。

 傍から見れば無礼だがこれが二人なりの流儀。この挨拶が渉斗に、伸介が変わってない何よりの証拠と感じさせた。


 そして飛鳥。彼女は未だモジモジしているが、覚悟を決めたのか口を開いた。


「ひ、久しぶりだね!渉斗。・・・その、何年も会ってなかったから、なかなか言葉が出ないんだけど・・・・とりあえず!また会えて本当に嬉しいです!」


「俺もお前達に会えて本当に嬉しいさ。これからもよろしくな」


「うん!」


 緊張した面持ちの飛鳥だったが、渉斗の優しい微笑みに不安が無くなったのか、彼女もまた笑みで返事を返した。

 彼女がもしかしたら6人の中で変化が感じられないかもしれない。髪型こそポニーテールに変わっているが、それ以外は昔のままの彼女だった。


「さてさて、挨拶もここいらで終いにしよう。本題に入るぞ。今後の渉斗の位置についてだが―――――」


『幹部だな(だね)』


 合わせたそぶりもないのに、皆の答えは同時に同じものを指した。

 それを見た渉斗は若干呆れ顔になりつつ、俊也の次の言葉を待った。


「まあ、だろうな。俺もそれが妥当だと思う」


「いや、おい。そんな簡単に決めてもいいのかよ?幹部なんて大層な位置なんだぞ?」


 言われた俊也は、少し可笑しそうに笑いながらも、説明は欠かさない。


「これはかなり前から相談していたことなんだ。もし渉斗と合流できた時、渉斗を組織内でどう位置付けるか、ってな」


 そこで一輝が渉斗の前に現れ、話し手は彼へと移る。


「けど幹部ってのが大層な位置ってのも間違っちゃないな。幹部は俺たちの他にあと3人いて、全員に役職が与えられてる。例えば俺なら、各基地や外国からの情報を管理する情報管理局の局長をやってる」


「スペシメンズの幹部は、本部にある部署の代表6名と、6つの支部の司令官6名、そして専門組織局の局長3名の、計15名で構成されている」


 重々しい単語の数々に思考するのが億劫になるが、そういう訳にも行かない。

 要は、スペシメンズ内の各代表たちが幹部になるということ、と自分の中で納得した。


「じゃあ、もし俺を幹部にするとして、俺の役職は何になるんだ?」


「・・・・・・・」


 室内が急に沈黙と化す。


 そう。彼らが未だにこの議題について話し合っているのはそこにある。


「・・・・それがまだ決まってなかったんだ。今から新しい部署を作る訳にもいかない。だからと言って創設当初に代表のいない部署を作るだなんて論外だ」


「だけど今さっき、その役職が決まったの」


「今さっき?」


 伽耶の発現に疑問が生じた。


「ああ。さっきお前が開けた東瓦さんの文書。あそこにはお前の今後の扱い方まで記されていた」



「お前の役職は、特別顧問だ」





作中ではあんまり触れてませんが、言っても皆既に27歳のアラサーなんで10代の時よりは歳を重ねている見た目ではあります。

一番そういうのも含めて変わりないのは、自分的には飛鳥ですかね。逆に一番変わったのは俊也でしょう。あ、別にこれ深い意味とか伏線じゃないですよ

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