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 竜の人。名をクロエという。トーリとはまた違った容姿端麗。濃緑色のショート髪で外ハネ気味。いわゆる、さわやかお兄さん的な顔立ちなのに、笑顔が少ないのがもったいない気がする。人との関わりを極力避けるが、情に脆い。

「まずはこの子の治療にロシェへ戻りましょうか。ラクセについては後回しね」

「大丈夫か?」

「何が?」

「ラクセの人達にバレずにロシェに帰れるのかって事」

 呆れたようにトーリは言った。

「俺が案内します」

 猫を抱いたクロエがにこやかに言う。

「なら、いい」

 協力してくれるのならば、問題ない。

 詳しい話は猫の治療の後でも十分だ。

 クロエと猫を車に乗せ、ロシェへと向かった。



「何でもかんでも治療してくれって言ってくるの、あんたぐらいよ」

 ザイルは眼鏡を外して、言った。

 紫色の髪でボブ。黒フレームの眼鏡。豊満な胸に黒服の上に白衣。そして、黒ズボン。

 カルテを机に置いて、セキを見た。

「頼れるのザイルしかいないのよ。いつも感謝してます」

 軽く頭を下げたセキ。

「分かってるなら、よろしい」

 満足げに笑うザイル。

 ザイル・ユフィーの家族は皆医者である。ユフィー家の病院は複合病院で、ザイルは人間専門。さらに、動物病院もある。なので、他の知識も多少はある。連携を取りながら、いろんな患者に対応している。

「この前、狐連れて来たと思ったら、今度は猫だもんね。あんたも物好きだわ」

 あからさまに溜め息をついた。

「あ、あの」

 ザイルの物言いにいたたまれなくなったクロエは声を掛けた。

「すいません。俺が頼んだんです」

「あらー、素直な子ね。そういう子好きよ」

「クロエ、真に受けなくていいからね。私らにしてみれば、あいさつみたいなものだから、恐縮しなくていいの」

「そうそう、ただの愚痴だから」

「それ、フォローになってないですよ」

 トーリは苦笑いした。

「さあ、話戻しましょうか」

 ザイルは椅子に座った。

 話を反らしたのは誰なのか。

「猫ちゃん、もう心配しなくても大丈夫よ。二、三日入院してもらって、体調がよくなれば退院よ」

「ありがとうございます」

 クロエは深く頭を下げた。

「わたしは自分の仕事をしただけだから。後、あなたも一応検査しときましょうか」

「あ、いえ、俺は大丈夫です」

「大丈夫かどうかは私が判断するから。素人は言う事聞きなさい」

「ですが……」

 クロエは何かを気にしているようだ。

 それに気付いたザイルはいたクロエに安心させるように言った。

「お金なら、セキにたっぷり請求するから心配いらないわよ」

「クロエ、お金の事気にしてたの?あなたのお陰で今、私儲けてるのよ」

「さらに、儲けるつもりらしいから。気にする事ない」

 トーリもさらりと言った。

「そういう訳には……」

 はっきりしないクロエに、ザイルは面倒にならない内に提案してみる。

「なら、セキの所で雇ってもらいなさいよ。まあ、簡単に言えば、自分の身体で払いなって事。どうせ、退院した所で、行く所ないんでしょ?」

「確かに、そうかもしれませんが」

 セキをチラリと見る。自分がそうしたいと思っていても、当本人が認めてくれなければ、意味がない。

「働く気があるなら、いいわよ。こき使うけど」

「よろしくお願いします」

 また、深く頭を下げた。

「あ、そうそう、クロエ。検査のついでに血少し貰えないかな?」

「何かに使うんですか?」

「人助け」

セキは口角をあげて言った。何か考えがあるらしい。

「喜んで」

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