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7

 カルロとファジーの話を参考に竜の居場所である洞窟を探していた。

 頂上付近になると、ちょうど視界が開ける広い場所があったので、車を止めて、二人は外に出た。

「ちょっと見て来る」

「分かった」

 トーリが辺りを探してくれるというので、セキはトーリに任せた。こういうのはトーリの方が得意である。

 動物の感であろうか。

 まあ、そんな事を本人に言えば、機嫌が悪くなるだろうけれど。プライドがあるから。力を持つ者として。

 セキも同様なのだが。

「あったぜ」

 セキが考え事をしている間に、目的のモノを見つけたトーリが帰って来た。

「どこ?」

「この裏だけど。まあ、見てみなよ」

 曖昧に答えるトーリに対して、不思議に思いながらも、セキはトーリの案内でその場所へ向かった。

 車を止めた場所から山の中へ少し入る。上へ登り、木々を掻き分けてまた、視界が開けた。

 トーリがここだと示した洞窟。

 確かに洞窟なのだ。ただ、人を四人横に並べたぐらいの幅の入口。近付くと自分の髪が揺れる。風が通り抜ける。行き止まりではなさそうだ。

 トーリはここだという。

 なら、竜は人間ぐらいの大きさだというのか?そんなはずはないのは確かだが、疑問には思う。カルロたちは自分の領域である山の配置を知っているはずだ。別の入口があるならそっちを案内するはずだ。やはり、入口はここだ。

「悩んだところで、解決はしない、か。実際に自分の目で見た方が確実だと思うけど?」

 トーリがセキに行動を促す。

「確かにね。入ってみましょうか」

「賛成」

 二人は木々を掻き分けて、洞窟の入口へ足を進めた。

 一歩、洞窟に入る。真っ暗と思いきや、以外と明るい。薄暗い感じではあるが、歩くには問題なかった。光も照明もない中、なぜ、見えるのか。

「トーリ。何でここ見えるのか、分かる?」

「オレに聞かれても、困るんだけど」

 トーリも初めて来た場所なのに理由を聞かれても困る。

「そうよね。先進みましょうか」

 セキはトーリの解答にあまり期待していなかったのか、すぐに話を切り上げた。

 外の気温より涼しく、肌寒い。足場は砂利があるが、歩きにくくはない。天井が高く、縦長の洞窟のようだ。一方通行だったので、そのまま進んで行くと、右に曲がる道になっていた。やけに右側が明るい。

 セキが止まる。

「何かいる」

 そう言って、壁に背を預けて、ゆっくりと後ろ奥を覗き込んだ。

 トーリもゆっくりと覗いてみた。

 そこには体を小さく縮めて、目を閉じている濃緑の竜がいた。

 三メートル以上の胴体に鱗が張り巡らされ、細長い顔に立派な鬣を生やしていた。

「いるわね」

「どうする?」

「とりあえず、出て見ましょうか。危害を加えなきゃ、襲っては来ないでしょ」

「まあ、ここに居てもしょうがないしね」

 二人の意見が一致した所で、竜からも自分達からもお互いの姿が見えるように右を曲がった。

 やはり、遠くから見るのと、近付いて見るのでは迫力が違う。

 濃緑はより鮮やかに。鱗はより光沢を増す。

 そして、竜の目が開く。

 竜は二人を見て、すっと立ち上がる。

 体の重さを感じさせない、しなやかさ。コウモリの羽に似た大きな翼を一度広げ、閉じる。

 何もかもが、幻想かのような美しさ。堂々たる体躯。頑丈な鱗。計り知れない力量の手足。

 初めて見た竜。怖さなどなかった。ただ、殺すほど無理な事は無かった。やはり、簡単にはいかないようだ。

 しかし、殺す必要は無くなった。討伐など意味がないからだ。

 セキはゆっくり竜に近付く。

「お互い血を流すのは無駄な事だと思うの。あなたがどう考えているか知らないけど、少し手を貸してもらえると助かるんだけど」

「言葉、理解できるのか?」

 トーリが聞いた。

「さあ?」

 賭けだった。あまりにも無謀だと言えば、その通りだった。

 たとえ力で押さえ込む事が出来たとしても、血が流れる。穏便に済ます事が出来るならば、得である。

 あとは、人間を言いくるめばいいだけの事。

 吉と出るか、凶と出るか。

「……条件がある」

 若い男の声だった。確実に竜の口から発しられた言葉。

「同類か!?」

 トーリは驚いたように言った。

「条件って?」

「この子を助けてくれるなら、協力する。俺では何も出来ないから」

 竜はそう言って、体を横にずらして、後ろを慈しむような目で振り返った。

「そばに行ってもいい?」

「あぁ」

 竜がいた場所の後ろ、一段高くなった場所に木の葉の絨毯の上で丸くなっている白色の子猫。弱くなっているのか、呼吸が不安定だ。どういう経緯かは知らないが、この子を助ける事が出来るなら協力してくれるという。

 ――――楽勝ね。

「いいわ。医者を紹介するわ」

「普通のじゃ、ダメなんだ」

「この子も?」

「今は無理だが、君たちのように人間の姿に変われる」

「問題ないわよ。融通利くから」

 セキは当たり前かのように応えた。

「なら、後は任せる。俺は何をすればいい?」

「そうね。何か証拠になるものないかしら?戦利品っていうやつ」

「なら、鱗を持って行くといい。剥れかけのがあるから」

「いいわね。それ貰うわ。――ところで、申し訳ないんだけど、物凄く話しづらいわ。この体勢」

 自分より何倍あるか分からない高さの竜と話をしているのだ。見上げるほどにも限度がある。

「気持ちは分かるが、このままでは……」

「素っ裸?」

「セキ……。はっきり言い過ぎ。逆にこっちが恥ずかしいから」

 トーリがすかさずツッコミをいれる。

 そう?と首を傾げて、セキは言う。

 一応、セキも女性なので。

「トーリの服、合うかしら?」

「大丈夫だと思います」

 竜が言った。

「なら、服持ってくる」

 トーリは車のある場所まで戻った。

「あなたが森を降りればこの子を助けられるでしょ?」

 白猫を抱えたまま、セキが聞く。

「人里に下りたことがないし、この子が迷い込んでからここを離れることができなくなった。だから、誰か来るのを待つしかなかった。君たちが初めてだよ、ここに来たの」

「まあ、全員殺されてるしね……」

「殺されてる?」

「あぁ、気にしないで。こっちの話だから」

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