第八話 鋼と毒の連携
重力の神子・大槻隆を配下に加えてから、俺の派閥は明確に「中堅勢力」へと成長した。
転移から三十五日目。盆地の要塞は炭素繊維と鉄の複合壁で固められ、総人口は三千人を突破していた。
朝の会議室——俺が炭素で作った頑丈で軽いテーブルを囲んで、皆が顔を揃えていた。
銀髪のカルボンは俺の右側にぴったり寄り添い、植物の葉でメモを取っている。
健太は腕を組んで真剣な顔、零は紫髪を指で弄びながら妖しい微笑みを浮かべ、隆は巨体を少し窮屈そうに折りたたんで座っていた。
「今日の議題は資源確保と領地拡大だ」
俺が静かに切り出すと、皆の視線が集中した。
「カルボン、食料状況は?」
「はい! 成長の種を使った穀物と野菜が三日周期で収穫できるようになりました。人口三千人でも余裕を持って支えられます」
彼女の声は明るく、俺を見る瞳が輝いている。初期眷属として生まれた彼女との絆は、日々深まっていた。
「健太、武器生産はどうだ?」
「鉄と炭素の複合鋼を量産中です。狩猟隊も戦士団も大喜びですよ。ご主人様の技術、ほんとチート級です」
「零、毒の防衛網と共同研究の進捗は?」
「ふふ、順調よ。森の入り口に毒霧トラップを展開済み。……壮馬くん、活性炭で毒を封じ込めた『毒炭素カプセル』、もう少しで完成しそう。実験したいわ」
零の目が妖しく細まる。敵対から配下になった今、彼女は研究者肌の俺と相性が抜群だった。
「隆、重力運搬の効率は?」
「……荷物を大幅に軽減できるようになった。兵士の疲労も減ってる」
五人の役割分担が、着実に機能し始めていた。
その日の午後、俺たちは西の肥沃な谷間へと遠征した。
世界の目で確認した平和主義の部族を、無血で吸収する作戦だ。
谷間に到着すると、村人たちは俺たちを見て最初は怯えた。しかしカルボンが美しい花を咲かせた蔓を贈り、俺が炭素で六角形の輝く結晶を作って見せると、村長が膝をついた。
「雷炭の神子様……どうかこの谷をお守りください」
交渉はスムーズに進み、人口八百人以上が新たに忠誠を誓った。
夜、要塞に戻った俺はカルボンと二人で屋上に出た。
異世界の星空が美しく広がっている。
「ご主人様……強くなってきて、少し怖いです。でも、すごく嬉しいです」
カルボンが俺の袖をそっと掴む。体温が伝わってくる。
「怖いって?」
「ご主人様がどんどん遠い存在になっていく気がして……でも、私ももっと強くなって、ずっとそばにいます」
俺は掌に小さな炭素の六角形結晶を作り、淡い雷の光を灯して彼女の手に乗せた。
「約束する。お前を置いていかない。一緒に頂点を目指す」
静かで温かい時間が、二人の間に流れた。
この世界に来て初めて感じる、本物の充足感だった。




