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異世界都市伝説大戦【改稿版】  作者: 小沢孝二
第1部 死と生
5/9

第5章 師の最期、弟子の誓い




 それは突然だった。


 異形者討伐の帰り道。

 瘴気の濃い夜道を歩いていた双雷と雷兆の前に、かつてない“異形”が立ちはだかった。


 体長は三メートル。

 牛のような角を持ち、口は耳まで裂け、全身から瘴気を吐き出している。


「……あれは……!」

 雷兆の顔が険しくなる。

特級バケモノだ。双雷、下がれ‼」


「はぁっ!? 一人でやんのかよ!」

「お前はまだ未熟だ! 足手まといになる!」


 雷兆の体を稲妻が包む。

 怒涛の雷撃が怪物に叩き込まれるが――。


「ぐっ……!」

 怪物は怯まない。

 むしろ瘴気を爆発させ、雷を掻き消して突進してくる。


「師匠ッ‼」

 双雷は咄嗟に飛び出した。

 だが、雷兆が振り返り怒鳴る。


「来るな‼ 死ぬぞ‼」


 次の瞬間。

 怪物の爪が雷兆の身体を深々と切り裂いた。


「がっ……はっ……‼」

「し、師匠ぉぉぉ‼」


 鮮血が夜道を染める。

 雷兆はよろめきながらも笑った。


「……双雷……お前は……生きろ」

「ふざけんなよ‼ 俺だって戦える‼ 一緒に――!」

「ダメだ……俺の命はここまでだ……。だが……お前はまだ……未来がある」


 雷兆の手が震えながらも双雷の肩を掴む。

 その目には悔恨と、それ以上に弟子への期待が宿っていた。


「俺は……救えなかった命を背負ってきた……。だが……お前なら……」


「やめろよ……やめてくれよ……!」

 双雷の頬を涙が伝う。


「……俺の分まで……贖え……双雷……」


 雷兆の瞳から光が消えた。

 雷神に選ばれし男――神宮寺雷兆は、静かに息を引き取った。


「……師匠……?」

 返事はない。

 燃え尽きたように崩れ落ちたその身体を、双雷は必死に抱きしめた。


「クソッ……! ふざけんなよ……! こんなの……あんまりだろ……!」


 怒りと悲しみが入り混じり、胸の奥で雷のように渦を巻く。


 怪物が再び咆哮を上げ、迫ってくる。

 双雷はゆっくりと立ち上がった。

 涙で濡れた顔に、確かな決意の炎が灯る。


「……ああ分かったよ、師匠」

 ポケットから三寸釘を取り出し、震える指で握りしめる。

「俺が……全部背負ってやる」


 雷光が彼の全身を駆け巡る。

 まだ未熟な力。だが確かな覚悟がそこにあった。


「俺が必ず――この世界で最強になってやる‼」


 雷鳴が夜を裂き、少年の叫びが闇に轟いた。


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