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夢を見た。

わたしが転生する前の光景で、活き活きと仕事をしている姿が見える。


前世ではホテルのレストランに勤め、オーナーとして責任のある仕事をしていた。

お客様へのサービスや、新メニューの開発、後輩への指導、全てソツなくこなしていた。



そしてしばらくするとその光景は遠くなり、景色は一変した。

カーテンを閉めきり、光も入らず電気も付けない真っ暗な部屋で、テレビの光だけ浴びている影が見える。それは乙女ゲームをしているわたしだった。仕事をしている姿とは真逆で、客観的に見れば根まで暗そうな雰囲気だ。



〘 やっと、やっと、マーティハッピーエンドになった……エルヴィスのおかげよ。ありがとう。〙


テレビに向かいブツブツと独り言を呟く自分が、客観的に見るととても恥ずかしく思える。


マーティをクリアしたということは、二期のゲームをしているのだろうか。


わたしがそう思っている間もブツブツと呟く自分に耳を傾ける。




〘 そう言えばエルヴィスってヒロインと街で会ったのよね。街で会って、そして…

あれ、なんで街で会ってそこからここまでこんなにも献身的にサポートしてくれるんだろ。


ヒロインのことが好きなのかしら。好きなら好きと伝えればいいのに。そのチャンスはいくらでもあるのに、



…まぁいいか。こんなにかっこいいんだから。 見ているだけで幸せよ、エルヴィス。〙




そうブツブツと言い、テレビに映る銀色の髪の男性を見つめる姿はまるで恋する乙女の様だった。




そしてテレビに映るエルヴィスがわたしの方を見つめている気がした。



だが目の前にいるわたしはエルヴィスのことに気づいていないらしく、ただただテレビを見つめているだけだった。



何かを伝えようと口を動かす。

その口の動きを必死になって追い、自分も同じ口の動きをする。






(…ロ、…ゼ…、…ン………べ……ル……、グ……?)




はっと、してそれが街の名前だと気付く。

ローゼンベルクだ。


言っていることが分かった瞬間、わたし自身口を開き何かを言おうとしたが急に視界が明るくなった為、何も伝えられなかった。




パチリと目を開けると、それはジェシカの部屋の天井だった。

ソファーで寝てしまったのか、起き上がり外を見ればまだ明るい。

ほんの一瞬の出来事なのだが、とても懐かしく、とても……前世が恋しく思えた。




そして夢の中でのあの光景、エルヴィスはローゼンベルクと

確かにそう言った。


ローゼンベルクはスティーキン公爵家が収めている領の一つで、貧富の差も少なく皆活き活きと住民達が暮らしていると聞く土地だ。


だがなぜその土地の名前が出てきたのだろうか。

夢の中でわたしが言っていたことを思い出す。


(…ヒロインと街で会ったって言っていたけど…)


その街がローゼンベルクなのだろうか。



というかなぜ、献身的にサポートキャラクターとしてヒロインを支えた彼が、ヒロインを虐げたわたし…悪役令嬢であるわたしに街の名前を教えたのだろうか。



不思議と同時に、何かその街にはある気がした。

破滅エンドを防ぐ為の何か…直感的にそう思った。






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