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お茶を飲み終わり、リナリーが部屋を出ていくと同時に兄のノエルが部屋へ入ってきた。



「ジェシカ、ちょっといいか」



そう言うと、ソファーに座っているわたしの隣へ腰掛ける。


「…怪我はもういいのか?」


そう言うと顔に優しく触れる。

さすが乙女ゲーム、距離が近い。それは置いといて。

現状コブが出来ていた為頭の包帯をしていたが、何も問題がなかったので、先程リナリーに取ってもらったのだ。急激な運動などは医者から止められている為できないが、日常生活ではなんの支障もない。



「えぇ…

お医者様にも診て頂きましたけど何も問題ないみたいです。

包帯も先程リナリーに取ってもらいましたし」



「…そうか」


そう言うと安堵したような顔でこちらを見つめてきた。何か用があった訳ではなかったのだろうか、そんなことを思った時だった。

一瞬で真顔になった兄が重たそうに口を開く。



「…病み上がりに申し訳ないが、俺の友人がお前に会いたいと言って聞かない…

嫌なら嫌だと言ってくれていい。

状況は説明して分かっているはずなんだが…」



(友人…?)




怪我のことを心配してくれているのだろうか、会わせたくないらしい言い方をする、嫌な予感がした。

兄の友人は実際には会ってはいない。前世の記憶が戻る前に何回か見たことはある程度で挨拶もしたことがない。

頭が痛いと断ろうか。実際には違う意味で痛くはなってきている。でもわたしが思っている人物ではないかもしれないし…



「…その、ご友人というのは一体…?わたくしにわざわざ会いに来られたのですか?」





「そうだよ」



(え…)



いきなり、兄の声ではない色気を含んだ声が耳に聞こえた。何度も聞いたことがあるその声に心臓が耳から出そうなくらいうるさく鳴る。



ドアの方からだ。だが怖くて顔を向けられない。

顔には冷や汗が流れ、脈は早くなっているのだろうか、呼吸が上手くできない。





「僕が君に会いたかったんだよ」



ビクッと、徐ろに自分が驚きで跳ねる。

心臓の音で近付いて来る音が聞こえなかったのか、いつの間にか目の前にいて顔を覗き込んでくる。


「…初めまして、だね。

僕はレオナルド・マーティだ。

怪我の具合は大丈夫かい?」


そう言いながら座るわたし目の前に屈みこんでくる。

兄より二つ歳は上だが、その幼さを感じさせない余裕の笑みはどこか威圧感を感じる。




レオナルド・マーティ。王家の第一王子で、薄紫色をした髪は目にかからない程度に短く整えられていて、深い蒼色の瞳はわたしを映している。

しかし爵位が上の者に先に名乗らせてしまったことに後から気づき、慌ててソファーから降り立ち上がると淑女らしく言った。


「…殿下、申し遅れてしまい申し訳ありません。

わたくしはスティーキン・ジェシカと申します」


短く済ますと座るように促される。

大人しく言うことを聞いて腰掛けると、彼はわたしの隣へ腰掛けてくる。



(…距離が近い)



兄と王太子殿下に挟まれる形になってしまった。

それ構わずといった様子で話を続ける。



「ノエルから少し話を聞いてね…

昨日今日で人が変わったようだと、

イベルダに聞いても教えてくれなかったし、直接君に会って話を聞こうと思ったんだ」


そう言いながら笑む彼は、まるでわたしの心の中を見透かすようでとても居心地が悪い。


彼の興味を惹くような何かがあっただろうか。

いくら兄の友人とはいえ、わたしとは初対面で、ましてやこんな子供に何を聞くことがあるのだろうか…






それに彼は、乙女ゲーム二期のキャラクターで攻略対象だ。

なぜ二期のキャラクターがわたしの目の前にいるのだろうか。





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