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第42話


 さあて、その頃トミヤス道場では――


「……」「……」


 むっすりした顔のりっちー君とアダムさん。

 その前でひたすら喋るこの人は……


「ミーはトミヤス流のマーシャルアーツのファンで……」


「……」「……」


「ももちゃーんがアウチ! OMG! ソウ、ミーも」


「おほーん!」


「ワッ?」


「あのですね。あなたが米衆連合の方というのは、よく分かりました」


「イーエース!」


「で? 灰蘭(米衆対外諜報部)ですか。軍保……いや、今は国安保に名前が変わったんでしたね。そちらの方? まあ直に来たなら灰蘭だと思うんですが、中央保障サービスもありえますか。アダムさんはどっちだと思います?」


 肩を竦めるアダムさん。

 りっちー君もアダムさんも、やらしいですよ。


「見た所……」


 じろじろ。


「諜報員らしい空気は薄いです。軍人の臭いを濃く感じます」


「ああ! やはり中央保障サービスですか! はっはっは」


 『中央保障サービス』とは、米衆陸軍情報部、海兵隊、海軍保安部、沿岸警備隊、空軍情報部・監視部・偵察部の合同で作られたチームの事です。

 そこを指揮するのが、りっちー君の話に出た『国安保』。


 人を使って直に諜報するのが灰蘭。

 サイバーや電子機器を使って情報収集・分析するのが国安保です。

 国安保は直接武力面的な所が薄いので、そこを担当するのが『中央保障サービス』といった感じですね。


「ワッチューセイ?」


「白露の方が居るからと言って。別に潜り込むような真似はしなくても、このトミヤス道場は門前払いなんかしません。所属組織を名乗るのが憚られるなら、そう言って下されば結構です。そういった仕事上の事情は、私達も分かります」


「わらーゆーとーきなばう?」


「もう演技は諦めて下さい。あなた方は、トミヤス流をナメております」


 りっちー君、そんな呆れ顔しないで。可愛そうです。

 襟を摘んで……ぴき。


「おや。今の、何の音でしょう」


「何でしょうね……」


 ぎりり……


「おやおや。何か金属片が出てきました。これは一体。おや? ここにも」


 ぱき。


「ここにも。ありますね。おーい。聞こえてますか? もうすぐ壊しますよ」


 ぱき。

 どんだけ仕込んでますの?


 にや。


「あららー。バレてました?」


「ええ」


「私、米衆陸軍から来ました、ディエゴ=アビントン軍曹です」


「……」「……」


 冷たい視線です。

 バレてますよ。仮名ディエゴさん。


「……えっとー……駄目?」


 うんうん。駄目です。


「あと15分で、あなたの本名と所属が分かります。試しに15分待ってみますか? それとも、私から逃げてみますか? 逃げるなら『本気で』追います。いやいや、安心して下さい。あなたがここに居たという証拠は残りません。死体も残りません。大丈夫です。一切の痕跡が消えます。組織は恥をかかなくてすみます」


 そうです。両手を挙げましょう。


「参っちゃったなー……あはは……」


「そのまま手を頭に乗せて下さい」


 りっちー君が道着の中に手を突っ込むと……ごとり。

 仮名ディエゴさん、道着の後ろに拳銃隠してたんですか?

 かち。安全装置解除。

 かしゃん。装弾OK。


「早く頭に手を乗せないと、乗せる頭が無くなりそうです」


「はーい……乗せまーす……」


「ま、今回はあなたの身元を洗うような真似はしません。あなたも仕事で行けと言われただけでしょう」


 すとん、とマガジンを抜いて、かちかちかち……

 弾薬を抜いて、空のマガジンを入れ直し。

 スライドを引いて薬室内の弾薬も抜きましょう。

 ごとん。すー。


「はい。お返しします。次に道場に入る時は、更衣室の中に隠しておいて下さい。弾薬は後程届けます。すぐに国外に逃げるなら、お返しは出来ませんが」


 届けます! お前の居るとこ分かってるぜアピってます!


「はーい……」


「中央保障サービスか、国安保からの指示か分かりませんが、普通に来てくれて構わないです。トミヤス道場は、国や種族の贔屓はしません。もしバレても、組織名を外に喋ったりはしません。いつでも来て下さい」


 襟の後ろを引っ掴みー。

 こんな所にもあったんですか?


「組織名を名乗るのは勘弁して下さいと、最初からそう言って下さい。潜入するような真似をすると、次は顔写真付きで、お仲間の名簿が流出する事になります。ちゃんと稽古代を払ってくれるなら、決して拒否はしません。トミヤス流の技術を学びたいなら、いつでも歓迎します。ただし、この近くで他国と諍いを起こさない事です」


 ぱきっ!


「んふ、んふふふー……バレバレ?」


「で? 入門しますか? 別に拒みはしませんが、一旦、上の指示を仰いで来た方が良いのでは」


「あのー、ちょっと電話してきても良いかな?」


「どうぞ」


 仮名ディエゴさん、ダーッシュ!


「リチャード先生、宜しいので」


「構いません。今日の午後か明日辺りに、今度は堂々と別の者が来るでしょう」


「ううむ」


「アダムさんが気にする事ではありません。あなたは軍人として、戦闘技術を学ぶのが任務です。諜報合戦は王国保安庁に任せてしまいなさい。さあ、稽古を続けましょう」


「Да、сэр!(ダー、セール!:イエッサー!)」


 僕も入れてって言えば良いのに、なんで潜入しようとするんでしょう。

 りっちー君にあまり隠してると、余計に危険ですよ。

 無事で良かったですね。



----------



 こちらは首都ウキョウ。


 無事にコラボ撮影も終わりましたし、午後は観光です。

 明日はトミヤス流ウキョウ支部に突撃です。撮影はしませんけど。


「いやあ……やべえ、身体震えそうになったよ……」


「私もです……ヤナギ車道流、これ程とは!」


「流石、心を重視すると言われるだけはありますね。いや、私も感動しました」


 テルクニ君、カオルさん、イマイ君、武術ガチ勢3人は大感動です。


「何かへらへらしてたけど、最後の方、暑苦しくなったね」


 ユキちゃん……


「言ってろよ。武術やってねーユキには分かんねえよ、この感動。ね、カオルさん。イマイ君」


「コラボ撮影出来て良かった……テルクニ様! 私、最高の編集をしてみせます!」


「宗家! 私も気合が漲ってきました!」


 しゅぼ! ふう~……(タバコ)

 ユキちゃんは1人で冷めてます。


「ふーん。この後どうすんのー?」


「おめ車道流道場の駐車場でタバコふかすんじゃねえ! クルマ入って吸え!」


「はあーい」


「ユキ様、ウキョウはタバコにうるさいので、屋外ではお気を付け下さい。罰金が科せられます」


「まあじでー? めんどー」


 ういーん。しゅー、ばたん(ガルウィングドアの音)


「して、テルクニ様。本日はこの後は」


「遊びに行くんだよ。深草」


 お? とカオルさんが反応。

 別に深草が特別に好きというわけではありません。

 深草には、テルクニ君とカオルさんの友達が居るんです。


「宗家、渋いすね」


「いやいや、友達んちがさ、深草でもんじゃ焼きの店やってんの。イマイ君も行って損はないよ」


「美味いんすか? ☆4くらいのもんじゃ焼きとか?」


「そうだよ。☆4.9。クチコミ1万超えで☆4.9」


 それは凄い!

 皆さん、☆だけ見てませんか? ちゃんとレビュー数も見ましょう。

 レビュー数10いくつで高評価って、全く信用出来ないですよ。


「まじすか!? クチコミ1万以上で☆4.9!?」


「だけじゃないの。その友達って、現時流の黒帯なのよ」


「え!?」


「カオルさんは知ってるもんね。オフ会で会ったし」


「はい。では行き先は深草もんじゃおこげ屋ですね」


「そゆことー。ユキには自前で払わせる」


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