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61 ダンジョンの利用方法

「ケント、あれは?」


ユニットハウスの反対側にいる巨大な多足生物について、モーブがたずねてくる。カチカチとした顎を打ち鳴らす音がこちらにまで聞こえてくる。


「センチピード、俺の育った国では百足むかでという名前の虫だな」

「あのサイズで虫か・・・」

「ああ、虫だ。見た感じ5mはありそうだけど、虫だ。そして、顎に毒を出す場所があって、噛まれると毒を流される。まあ、毒以前にあの大きさに噛まれると、その時点で命にかかわるだろうな」

「弱点は無いのですか」

「・・・俺の育った世界の百足は熱湯に弱かった。同じかどうか知らないけど、火には弱いんじゃないか? ヨルンの火球を打ち込んだら、火に弱いかどうか分かるだろ」

「そうですね、魔法ならユニット越しに攻撃可能ですからやって見ましょう。倒せれば儲け物ですからね」


そして、ヨルンが火球を数発打ち込むと、百足ではうねうねと捻り回りながら暴れるが、やがて静かになる。あたりには無駄に香ばしい香りが漂う。うっわきもい、これが海老とかだったら食欲をそそるんだろうけど、虫の丸焼きとか大多数の日本人には嫌悪しかない。・・・まあ、一部伝統的な昆虫食があるのは知ってるし、それを理解はするけど、自分で食べたくはない。


「上の遺跡に上がってきた奴を含め、あまり賢くない生き物は偽物ではなく、本物の魔物なんだな」

「魔物らしい魔物は本物で、知性ある妖精種や人間などは、複製ということですか、何か理由があるんですかね」

「さっきの虫は火魔法が使えれば割と楽勝ですね、しかし、物理でどうにかするとなると、これはきついかもしれないですよ、火矢でも倒せますかね・・・」


先程の戦闘について、モーブと黒足は、fake(偽物)についての考察を始め、ヨルンは魔法が使えないものが戦う方法を検討し始めた。


「そのあたりの考察は後にしよう。今日は切りのいいところまで行って、上がるぞ」


再度地下に入ってから3時間が経過している。昼食は携帯食で済ませたが、夕飯はきちんとしたものが食べたい。


ダンジョンを進み二層へ向う。途中の戦闘は、俺が何をするわけでもなく、皆がやってくれた。ゲート転送も手の空いている者がやってくれた。俺がした事はどっかのご隠居のように、たまに近寄ってきた死にかけの魔物を一殴りして払いのける感じかな。あれだね、自分から戦いたいとは思ってなかったけど、見ているだけで良いという状態もちょっとどうかね。将来的には、こうして前線に出る事も無く報告を聞くだけの立場になるのかねえ。



「マジで空があるんか・・・」


考え事をしつつも歩みを進め、気がつけば第二階層に到着した。二階層の入り口は一階から階段を下り、扉を開けた先にあった。そこはまるで外の世界のような草原があり、遠くには山も見える。そして背後を振り返れば、崖かフロアの外周だか分からないがとにかく上が見えないほどの高さの、絶壁がありそこに先程くぐってきた扉がある。スマホを確認すれば、先程いた地下洞窟ではない地図が表示されていた。地下牢の遺跡や、ここの上にある遺跡のような人工物の中では、一度通った場所の周辺しか表示されないし、壁で仕切られた別の空間を表示することはできないが、この階層は外と同じような表示のようだ。

最初は単なる森だったのに、だんだんこの世界が訳の分からないものになってきた。もう前世の常識とか崩壊して、崩れた塵が風に舞う状態だね。まあゲームやラノベ的には至極当たり前の状況かもしれないけどね。


「この階層に出てくる魔物次第ですが、この状態なら普通に家を建てて、住めそうですね」

「・・・ここに住む?」

「住むといっても冒険者のベースキャンプですけどね。農業ができるか否かは試してみないと分かりませんが、肉類は魔物を倒しても魔石になってしまうので、手に入りません。ですが、魔石を手に入れる町と割り切ってしまえば、悪くないんじゃないですかね」

「なるほど、自立できない町なら、こちらである程度操れるかもな」


変に重荷になるようならサクッと切り捨てるけどな。・・・・いやまてよ、ここが外に知られていない世界なら、人に迫害されているような種族が移り住んだ方が・・・・。


「ここが、外と隔絶した世界なら他の使い方が出来るんじゃないか?食料関係は、牧場を作って畜産業を広めれば済むだろ。それに人と接点を持ちたくない種族をここに住まわせれば、住み分けも出来て一石二鳥だろ」

「あ、それも良いですね」

「では先ずは、この階層の全体像を把握しましょう」

「ここなら車が使えるから、車で移動しようぜ」


改造ダンプに乗って草原を走る。草の背は20cmを超えるくらいかな? 軽バンで走るには無理があるので、ドワーフが荷台を改造した元ダンプで移動している。まあ改造といっても荷台に屋根を付けて座席を取り付けただけだが、一応振動を軽減するための工夫がされているので、多少ゆれるが我慢はできた。


「地面に動物や魔物が掘った穴があるかもしれないから、あまりスピードを出すなよ」


「大丈夫だ、時速30km以下で走っている」


その位なら大丈夫かな?

運転席との通話用トランシーバーでモーブと会話する。エンジン音は大きいし、キャビンと分かれているから後部座席とは直接会話できないのだ。運転手は一人一殺で交代しながら草原を見て回っている。一殺はもちろん魔物のことだ。


「左に何かいます、割と大きい感じです」

「了解、左へ向う・・・ケント、あれは動物か魔物かわかるか」

「どれどれ・・・あれは大鹿だから動物じゃないか」

「じゃあ、狩って肉にするか。体当たりするから、その後攻撃な」


大鹿・・体長4m位かな? 軽バンより少し大きい気がするが、モーブはためらわずゆっくり向っていく。既に数種の動物を狩ったが、この階層には生きた動物がいて、狩れば肉が手に入るのが分かっている。あの大きさの肉は何人分だろうな。あ、大鹿が警戒し始めた。


「逃げ足は速いだろうけど、追いかける速度はゆっくりでいいぞ。長くは走れないだろうからな」


予想に反し30分ほど追い掛け回すことになったが、疲れさせたところで、スマホでレンジ魔法陣を飛ばし倒す。死体は俺の送還で確り回収した。


「この大鹿を調教できれば、農耕や荷馬の換わりに使えそうだな」

「あの皿ですか・・・」


黒足はスライムを思い出したのかも知れないが、あの皿なら楽に使役できるんだぜ。


その後も次々動物を発見し、草を食べていたカンガルー程の大きさがある、二足歩行のラプターのような恐竜?や、体高1m位のダチョウに似た鳥、同じ位の大きさをしたウサギなどを狩ったり捕獲したりした。魔物枠としては、ゴブリンやレッドキャップ、オーガなどが生きた魔物だな。現在はトロールと戦っているが、これも偽物では無いので生きた魔物のようだ。

トロールは体高4m程の巨体を持つ巨人だが、体のバランスは人間ではなくゴリラのように足が短い。上半身は発達し丸太のような棍棒を振り回している。指輪の話に出てきたぐらいの怪物だな。スプリガンよりもパワーがあるし、皮膚は象や犀のように硬く、普通の剣では切れそうに無い、厄介な相手だった。


「ケント、十字槍を貸してくれ」


槍を渡すと、モーブは先端のミスリルに指を這わせて魔力を流し、次に槍をトロールに向かってぶん投げた。おい俺の槍だぞいきなり何してくれてんだ・・・。

槍は狙いたがわず? トロールの胸に吸い込まれ、槍先が反対側に突き抜けた。トロールの背は見えないが、連結槍は2m程の長さがある。その槍の柄が胸から少し突き出ている状態だから、槍先は完全に突き抜けているだろうな。


「いいな、これ。俺の柳葉刀りゅうようとうもミスリルコーティングしてもらおう。長柄をつけて青龍刀にすれば今みたいに投げられるし、振り回せばスッパンスッパン首をかれそうだ」

「・・・俺にはできない芸当だな」

「使う前に魔石の魔力を吸わせてみたらどうだ?少しは切れ味が上がるかもしれないぞ。後は誰かに魔力をチャージしてもらってから使うとかだな」


言い置いて、バスタードソードを握って突撃していく。黒足とヨルンもロングソードと盾を持ってトロールに向っていく。


「私が魔力を加えますから言って下さいね」

「そうだな、これからはレオノールに魔力を流してもらってから使うよ」


自力で出来ないのは最早仕方の無いことだが、魔力を借りてどうにか成るなら、それで良い。出来ることで最善を尽くそう。


「トロールの皮は防具になるかな」

「普通の皮よりは強度があって良いんじゃないか」

「普通の皮って何の皮なんだ」

「南町から仕入れているのは牛皮ですよ、小さな部品ならハリウサギの皮を、重ねたものとかもありますね。トロールの皮が加工できれば金属よりは動きやすいでしょう」



「随分倒しましたね」

「ゴーレムの方にも結構送ったな、もうそろそろ動けなくなってるんじゃないか」

「そうだな、一度遺跡にいるゴーレムを見てきてくれ、機能停止しているようなら回収できるか試してみよう」


そして、シデンが確認しに行き、戻ってくる。ゴーレムはシデンに反応しなかったという。


「外見を見る限り部位欠損は無かったですが、跪いて倒れる直前のような感じでした。ゴーレムの周囲、遺跡のフロアには百足や石像の破片が散らばっていましたね。そして下の洞窟部には魔石が大量にありましたので拾ってきましたよ」


良い感じで魔力切れになったかな?


「んじゃ魔物の死体とゴーレムを回収しに行くか」


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