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62 ゴーレムを回収しよう

第8話と真逆の会話をしていますが、人口増加って大事なことですよね。

「どうだ、動くか」

「いや、反応無いな」

「モーブに反応しないなら安全かな?」


シデンは小さいから、もしかしたら気がついていても見逃したかもしれないと思い、モーブにも確認を頼んだ。


「じゃあ鑑定する・・・魔力0・・・魔力吸収モード? あ、やばい触るなよ、ボディーが魔力を通す素材で体内の魔石に接続されているらしいから、触ると魔力を吸われるぞ」


そうなると触れるのは俺だけかな。何か魔力を遮断する素材があれば良いんだけど、現状は俺が魔石を抜くしかないよな。


「どうすればいいんだ」

「俺が魔石を抜く。それ以外に無いだろ」

「危険です」

「魔力を与えなければ大丈夫だ。それにこのまま放置すると、何れ動き出すから、抜き取るなら今しかない。何かあってもミスリルのような魔力を纏わせた剣で切りつけるなよ、攻撃は通るかもしれないが、その瞬間魔力を吸われて動き出す可能性があるぞ」


レオノールが心配するのはわかるけど、このゴーレムを捕獲する絶好の機会なんだから今を逃すわけには行かない。皆が見守る中、先ずは襤褸切れを剥ぎ取る。掴んで一寸引っ張っただけで布はちぎれ埃が舞い散る。そういえばハウス・ダストのアレルギーがあったはずだが、全くくしゃみが出ない。生き返ったさいに体質が修正されているのかな。


「この胸の部分かな?どうやって開けるんだろう」


服を剥ぎ取ってみると、マネキンに球体関節的な稼動用ギミックがあって、自由にポーズをつけられる人形のような構造だった。一応女性タイプなので胸があったが、不必要な作りこみはしてなかったので、少し安心した。一瞬だがレオノールの気配に危険なものがあったからね。へんな用途が無くてよかったよ。


「その臍みたいな凹みは、スイッチじゃないか?ちょうど指が入るサイズでへこみの奥に何かでっぱりがあるだろ。そこに指を入れて押してみ」

「へそ?・・・ああ、へそなだ。一瞬違う所ならどうしようかと思ったよ」


プシュー パカン


言われた通りにしてみると、何か空気の抜けるような音の後、胸が左右に開き、更に鳩尾みぞおちの辺りが開いた。

・・・・メガ・スマッシャー撃つのかと思って少しあせった。


「この鳩尾みぞおちにはまっている石がこいつの魔石か、よし取ろう」


念のため魔力を通さないような気がする、キッチン用シリコントングを使って魔石を取り出し、再度鑑定・・・・あ、もうひとつあるな、魔石を抜かれて所有権を上書きされた時に、変更を再度上書きするバックアップが頭部にあるのか・・・中々にいやらしいというか、セキュリテイー用ゴーレムだけに、それ自体色々と予防策が施してあるんだね。

鑑定を使ってメンテナンス用の仕組みを調べる。俺の前に隠し事は一切通じないぜ。・・・あ、浮気とかは分からないかもしれない。というか、それを疑って鑑定する度胸は俺には無い。

俺はゴーレムの口をこじりあけ、前歯に指をかけて引っ張る。


「お館様、一体何を」


レオノールが、なんか声を発したが、俺の指は既に動いていた。

プシュー パクン

再び先程のような音がして、頭頂部からシリンダーのようなものが飛び出した。中には小さめの魔石がはまっている。


「ん?腹の魔石を抜かれて所有者を変更された時に、こっちの小さな魔石で元に戻すものらしい。まあ防犯装置の一種なんだが、その装置を開けるスイッチが前歯に仕込んであった」

「そんな仕組が・・・」

「まあこれで、商品化して・・・送還・・・よし消えた!」


これで、ゴーレムが手に入った。慎重に扱う必要があるが、ゴーレムを使役できれば防衛戦力としては申し分ないだろう。


「やりましたね」

「おめでとうございます」

「これで軍隊を作れば、世界有数の防衛力です、これならミレニアム王国も夢じゃありませんね」


単純に喜んでくれる者たちは良いが、千年王国って何だよ。日本を含めいくつかの国は、1000年以上同じ王制が続いたかもしれないけど、最初から狙ってできるもんじゃないし、軍事力を頼りにしたところで、統治が悪ければ中から腐って崩壊するんだよ。


「いや、そんなに先の事は俺知らんよ。俺の責任としちゃ精精100年分ぐらいだろ、孫の代まで何とかできそうな下地を心がけるけど、その後は責任もてねえ。長寿の種族に任せるよ」


俺の正直な感想に対して、目の前のやつらは『100年後も元気にドルトンを引っ張りまわしている気がする』だの『自分らの二段進化分以上を溜めて、何に進化するのでしょう』とか『そうだ、俺の子孫で、ケントに仕える者の名を”モーブ”で、統一させよう』とか、こそこそ話しているが、人が何に進化するっていうんだ? 地球の常識で言えば、俺は既に最終進化形態だぞ。この先何かに進化とかありえないだろ。おれはポケでもデジでも無いんだよ。大体モーブは俺に仕える子孫とか言ってるけど、お前の子孫より俺が先に死ぬって発想はないのか?普通に考えてお前の孫が成人する頃は俺も引退を考えてるはずだぞ。


「お館様、ゴーレムがいた隠し部屋も、調べてから戻りましょう。荒されてないので何かあるかもしれませんよ」


ん?思考の海に浸かっている間に時は動いていたか。・・・それはさておき、確かにゴーレムのいた部屋は調べるべきだな。旧鼠がその辺に潜んでいる可能性もあるし、荒される前に調べるべき部分は早々に調べるべきだな。


「そうだな、調べよう」



再び入った部屋は、やはり少々埃っぽい部屋だったが、他の部屋と違って家具類はまだ原形を保っている。もしかしたら魔物に荒されたことが原因で、家具の破損が進んだのかもしれない。

「お館様、見てください、この本棚は魔道具です」


黒足の声に彼が指差すものに目を向けると、部屋の隅に半埋め込みで設置された扉の奥に本らしきものが見える。


「クローゼットかと思ったけど本棚か、中身が傷んでないなら大発見だな」


取り出してみると、本は紐で閉じて上から背表紙を貼り付けたような作りだな。内容は・・・読めないが、複数の魔法陣が描いてあることから、これはサンプル集のようなものだろうか。詳細は鑑定とアプリへの取り込みをしていけば、いずれ分かるだろう。


「お館様、空調の魔道具というものがあります。空気清浄と、温度調節が出来るみたいですよ、うちの寝室にもつけましょう」


レオノールが魔法陣アプリを片手に、発見したものは、エアコンのような壁掛けの箱だな。うちだけ電気を引く事も可能だが、魔道具でエアコンが出来るならその方が、この世界では自然だな。


「!! う、うわ」

「ど、どうした、黒足!」


エアコンの設置をレオノールと話していると、突然黒足の叫び声が部屋に響いた。


「あ、すいません、魔法陣に触れたら水が出てびっくりしただけです。いきなりだったので、つい声が・・・」

「黒足、よく分からない物に触れるのは、やめたほうがいいぞ」

「・・・そういう貴方は何をやってんですか」


見ればモーブは身じろぎもせず、ボロボロのベッドに、胡坐をかいてすわっている。黒足に顔を向けているが、その顔がゆっくりと黒足から背けられる。あまりにもゆっくりで、一見するとモーブは動いていないように見える。


「このベッドなんで回ってるんですかね」


違った、モーブが動いているのではなくベッドが動いていた。何これ、ここってこの施設の関係者の私室じゃないのか? 何でここに回転ベッドがあるんだ? それともここは休憩システムのある宿泊施設か? ・・・関係ないけど日本の休憩システムは安価で質の良い部屋が利用できると、海外から絶賛されているらしいな。うちの街にも必要かな? 森は危険だし、今のところ利用できるような、出入り自由の空き家も無いから、あっても良いかもしれないな。その昔は神社とか利用されたというけど本当かなあ。


「俺の育った世界には、こういうベッドあったぞ、何のために回るのか、回ってどうなのかは今一俺には理解できなかったけどな。むしろ風呂とかの方が気になったな・・・。だが、おかげで思いついたことがあるから、後で相談しよう。これは街の繁栄において、非常に重要な事柄だからな。・・・で、なんでモーブはそこで回ってるんだ」

「・・・いや、なんとなく腰掛けたら回りだした。しかし、それで慌てるのもみっともないから様子を見てた。そしたら特に危険もないし、そのうち何故回るのか気になって考えているうちに、黒足が叫んで・・・」

「それ、黒足の事言えねえよ」

「あはは」

「(・・・・公王様、このベッドうちにひとつ設置していただけませんか)」

「(何だ、ヨルンは気に入ったのか?欲しいのか?)」

「(ええ、そんなところです。でもなるべくお安くお願いします)」

「(わかった、後で商品開発の一環として試作を提供しよう)」

「(ありがとうございます)」

「(それ、うちにも一台融通してくれ)」

「(お前んは、もうじき子供生まれるんだから、しばらく必要ないだろ。というか、これの意味分かったのか)」

「(意味はよく分からんが、あっても悪くない。どうせケントの家にも付けるんだろ?遅かれ早かれこのベッドの存在がばれるなら先に手配するべきだ)」

「(いや、正直俺は自宅に設置しようとは思ってなかったんだが)」

「(え、自宅に設置するのは変ですか)」

「(あ~うん、他人の寝室とか滅多に入らないから分からないが・・・たぶん)」

「(知ってます?エルフは長寿のため割と淡白なんですよ、だから色々工夫が・・・)」

「(知らねえよ。というか、既に二人の子持ちだろうが、何言ってんだよ)」

「(ですから、そろそろ三人目・・・)」

「皆さん何をこそこそ話をしていらっしゃるんですか?」

「「「・・・・・・」」」

「今サプライズ計画を練っていたところだ。ネタばらしになると、後で楽しめないから気にしないように」


恐る恐るレオノールの顔を見るが、そんなに起こっている様子は無い。こそこそと言うが、耳がいいからたぶん全部聞かれているよな。小声で話したのは何と無くそんな雰囲気ってだけで、聞かれて不味い話はしていないから、中途半端に聞かれたり邪推されたりするよりはマシだろう。それにレオノールも会話に混ざるのもちょっとアレだから、適当なところで会話を切りたかったんだろう。


「え、何の話ですか?自分仲間はずれですか?」

「・・・空気詠むお前さんにしては珍しいが、今回は完全に乗り遅れたな。まあなんだ、いずれお前さんの耳にも入るだろうから気にすんな」


たぶんさっき耳に入った水を気にしていて話を聞き逃したんだろうな。でも、改めて説明する程でもないし、ちょっと恥ずかしいから、黒足の訴えはスルーしよう。


「まあなんだ、危険なものが無ければ、全部持ち出してしまおうか」

「そうだな、残しても駄目になるだけだから、持っていって必要なら鬼族に対価を払えば良いんじゃないか」


次回5日 

書き溜めが少し出来ました

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