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33 猫の街

引き続きにゃーのターンにゃ

「全く壊れにゃいのか、凄い結界にゃ」

「まあ、超特別な結界ですから、攻撃に対しては無敵です。ただ、自然現象には弱いですよ」

「にゃ?」

「攻撃の爆風や飛ばされてきた飛来物は問題ないのですが、攻撃が原因ではない事には弱いのです。例えば走行中に、木の根に引っかかって車体が倒れれば、普通に壊れます。まあ、それはさておき、そろそろ魔法も打ち止めのようですから、外に向かって呼びかけてみましょう」


「召喚、メガホン」


俺は、運転席の窓を開けるとメガホンを外に向けマイクを殿下に渡す。


「その横にある出っ張りを押しながら、外に向かって話しかけてください」

「わかったにゃ」


王子殿下はマイクを構えると、背筋を伸ばし表情を変える。それは先ほどまでのリラックスしたにゃんこでは無く為政者たる風格を漂わせる。・・・猫だけどね。


「こほん。我はケット・シー王国、第一王子アントニャオ・ニャンデスにゃ、本日の特別訓練は終了にゃ、皆攻撃をやめ整列をするにゃ。・・・命令の繰り返しは必要にゃのかにゃ」


ピタッ

ササササ・・・・

『王国第一騎士団、整列しましたにゃ』


ガチャ、スタ。


「ケット・シー王国、近衛騎士隊所属のニャルタニャンだ、これより貴君らはアントニャオ王子殿下に拝謁し、お言葉を賜るにゃ。皆、背を伸ばし拝聴するにゃ」

「ニャッ!」


ガチャ、スタン。


「ケット・シー王国、第一王子アントニャオ・ニャンデスにゃ、特別訓練大儀であった。皆も知っての通り、先日エルフの村が正体不明の魔物の襲撃を受けたにゃ、敵は強力で大群をもってエルフ村を襲撃し、村にも少なくない被害が出たにゃ。そこで、不測の事態に備え、このようにゃ特別訓練を実施したにゃ。突然の事に皆驚いたと思うが、そんな状況でも遺憾なく発揮された、勇気と力に我は満足にゃ、今後も変わらぬ活躍を期待するにゃ」

「お言葉は以上にゃ、皆次の訓練に戻るにゃ」

「ニャッ!失礼いたしますにゃ」


タッタッタッタッ・・・・・・。

ビシッと敬礼して全員整列しまたまま行進していった・・・・すごいね、確りしてるね。


「ふう、うまく誤魔化せたにゃ」

「にゃ。ですが殿下、相手をろくに確認せず攻撃したのは明らかにゃ失態ですにゃ。結界がにゃければ殿下にも危害が及んでましたにゃ」

「まあ、そういうにゃ。今後、指揮官には現場での判断力を付けさせるための教育が必要にゃが、今回は不測の事態にゃ。少々先走ってはいたにゃけど、全力で防衛するその姿勢を汲んで大目に見るにゃ。それに、ああでもいわにゃいと、あの指揮官はここで自決しかねにゃかったにゃ」

「にゃー、殿下が仰るにゃら・・・」


こそこそ(この二人、何気に距離が縮まってね)

ひそひそ(やっぱり、さっきのあれが効いたのでしょうね)


「にゃにか、言いたい事があるにゃ?」

「いえ、特にございません。ただ、殿下の機転と指導力に感服したと、話していたであります」(敬礼)

「・・・・・まあいいにゃ、城壁を直して門に向かうにゃ」

「は!了解であります」(敬礼)

「それはもう良いにゃ。じゃあ中に入るにゃけど、ちょっと着替えるにゃ」


言って、殿下は腰からはずした魔法の袋に手を居れ・・・汚いマントと帽子を出した。


「変装にゃ」


マントと帽子だけで変装?


「赤い帽子とマントは皆に知られているにゃ、これを変えれば、ばれないにゃ」

「じゃあ、俺はモーブを呼び出します」


車体に魔法の鍵を挿し、扉を開くと程なくモーブが、魔法の扉から出てくる。こちらに扉を設置すれば向こうにもわかるからだな。


「ここは?」

「ケット・シー王国の防壁だな。少し誤解によるトラブルがあって、周囲が荒れているが、解決済みだから問題は無い」

「そうか、わかった」




「ケット・シー王国という割には、普通の街という感じですね。時々人間を見ますし」


そんなこんなで、俺たちはケット・シー王国の中へと入り、街の通りを眺めながら馬車に揺られている。街の入り口である門の近くには、ケット・シー街専用の箱馬車が用意されており、外部から来た冒険者などは、この馬車に乗って移動するそうだ。これは一見高待遇に思えるが、街を歩くより馬車に乗せたほうが、情報を制限できるし、禁止区域に入らせないための策でもあるという。街の通りは魔法で固められた馬車道と、その両側に歩行者用の石畳が作られている。中央の馬車道には、4本の帯があり、この帯部分は特に強化され、馬車の車輪で窪まないようになっているし、馬車道が土や石畳ではないのは、ボロ(馬糞)を取やすいようにという事らしい。中央の馬車道が相互通行で幅4m程、両側の歩道を入れれば道幅は8m程だろうか。建物の多くはドワーフ謹製で、彼らが得意とする防火対策により、この街は大火になった事がないそうだ。


「そうにゃ、我らケット・シーは魔法を使えて人と変わらない知識を持っているにゃけど、手先が器用では無いにゃ。家具にゃどは人間の町から仕入れているにゃ。人間が居るのは出入りの商人や冒険者にゃけど、人間が立ち入れる場所は制限され、警備隊が監視につくにゃ」

「それで、人間が町を支配する危険は無いのですか」

「絶対ではにゃいけど、人間の人数制限はしてるにゃし、我らは相手の感情が少し読めるにゃ。だから、邪心あれば門衛が止めるにゃ。それに並みの人間程度ではケット・シーには勝てにゃいから、大抵大人しくしてるにゃ」

「はあ・・・・素朴な疑問なのですが、ケット・シーが金銭を対価に人を雇っているなら、何か産業があるのですか?」

「基本は交易にゃ。森に居る人間と繋がりのにゃい種族から仕入れて、人間に売るにゃ。取引の多くは物々交換にゃから魔物の素材とかが多いにゃ。街には人の出入りする門以外に、森の住人用の隠し通路があるにゃ。ここは森に住む者が、生活必需品を外から得るための街なのにゃ」


なるほど・・・ケット・シーが、仲介するとはそういう事か。仮にこの国を占領しても、森の住人の協力が無くなっては素材は集まらないし、ケット・シーも居なくなれば人間が自力で防衛や素材を集めることになる。街そのものが森に対する橋頭堡と考えることもできるが、外の町と近すぎてあまり意味が無いだろう。


「森に住む種族も多くは森の奥に居るにゃ、ここは取引の都合で外に近いにゃから、森に入ってきた外の人間との接触を恐れて、近づかにゃい種族が多いにゃ。にゃからナラ公国で、その者たちに必要な品を供給してほしいにゃ」


エルフは加護で見つかりにくいが、他の種族はそうも行かないわけだ。


「わかりました。しかし、ケット・シーは他種族の面倒も見ているのですか」

「人と上手く付き合えるのは、ドワーフとケット・シー位にゃ」

「上手く?それはどういう意味ですか」

「ドワーフは技術と頑健さで人間を圧倒できるにゃ、人間が調子に乗ってドワーフになめた態度をとれば、手痛い目にあうにゃ。ケット・シーは世界の猫を従えているにゃ、世界に猫が居る限り、ケット・シーと敵対すればどうなるかを、権力者は知っているにゃ」

「・・・・例えば?」

「・・・肉や魚といった、晩のおかずではなく、貴族が身分の証明をする印璽(いんじ)印章(いんしょう)を盗まれたらどうなるにゃ、財力を示す宝石や貴金属を盗られたらどうなるにゃ。金持ちの金庫に石が詰まった大きく重い箱があったらどうするにゃ、入れられるなら当然出せるにゃよ。そして、朝起きたら顔に落書きをされてて、髪が無かったらどうするにゃ・・・( ̄ー ̄)ニヤリ」

「な、なんて・・・恐ろしい事を・・・・」((((;゜Д゜))))(がくぶる)


・・・・怖えーーーーーーーーケット・シー、怖えーーー。

それ泥棒じゃなくて、破壊工作員の類じゃないか。特に最後の落書きと禿は、金があろうが偉かろうが、全ての人族に痛恨のダメージだぞ。


「ヨルンはここに居るにゃ。先生ー居るにゃか、ヨルンを引き取りにきたにゃ」


たどり着いた建物の入り口を、殿下自らが開けて入っていく、ニャルタニャンは中の安全確認とかしないのだろうか。


「おや、デンカーじゃねえか、久しぶりだな。あんたがヨルンを引き取りにくるとは思わなかったぜ。てっきりエルフが引き取りにくると思ってたから、生エルフを楽しみにしていたのによ」

「にゃに言ってんにゃ、例え医者でもエルフに会わせるわけにゃいにゃ。それにエルフの代理人が一緒にゃ。まあ怪我人とは面識にゃいけどエルフ族長の許可を得ているから問題ないにゃ。さっさと病室に案内するにゃ」

「ちぇ、わかったよ。それにしてもお前、そのマントと帽子汚いし少し匂うぞ。お前らの方が、鼻が良いのによく平気で着てられるな」

「冒険者は一々服装を気にしていられにゃいにゃ。匂うのはゴブリンの巣を漁ったからにゃ」

「うげ、ここは病院だぞ。今度そんな汚ねえ格好できたら衛兵に通報してやるぞ」

「次は、注意するにゃ。早く案内するにゃ」

「わかってるよ、この部屋だ。隣に他の患者も居るから騒ぐなよ。じゃあ俺は戻るから」


・・・・・・・・・・


「あとで、はにゃすから、今は流すにゃ」


あれか、この殿下は“遊び人の金さん”をやってたのか?でも、門衛の目は泳いでたし態度も堅かった。道行く猫も少し様子がおかしかったから、その変装は猫には無意味で人間にしか通じないのではないか。


「エルフの使いにゃ、迎えにきたにゃ」

「え?」


部屋に入ると両足に添え木をし、包帯を巻いた20代半ばぐらいの男が、ベッドに寝ている。この男性がヨルンのようだな。・・・・確か34歳だよな・・・若けえなおい、24.5(にじゅうしご)で高校生役やる俳優より見た目若いぞ。確かガイアンが、レベルが上がると寿命が延びるって言ってたが、これがレベルアップ効果ってやつか?


「俺は奈良建人、エルフ村からの依頼で、貴方を引き取りに来た。モーブ頼む」


俺はモーブに合図を出し、ヨルンを抱き上げてもらい、あわせて彼の乗り物を召喚する。


「うわ、何するんだやめろ」

「うるさい、黙ってろ。大人しくしていれば、良い思いをさせてやる」


おい、モーブ、お前はテンプレ盗賊団員か何処の性犯罪者か? しかも相手は見た目若いが、既におっさんじゃねえか。少しは言葉の使い方を考えろ。


「エルフとは既に話がついてるにゃ、おみゃーは大人しくついてくれば良いにゃ、無駄に抵抗すれば痛い思い(骨折が悪化して)するだけにゃ」


殿下、貴方までそんな紛らわしいことを事を言ったら・・・為政者として発言には注意しましょうよ。


「いや、我々は怪しいものではないんだ、本当にエルフの代理なんだよ」

「嘘付け、俺はあんたらを誰一人として知らないぞ、俺の知らないやつがエルフの隠里の代理で来るわけが無いだろ」

「いや、それはこちらのケット・シーが、間に入っているからで、本当にエルフの代理だよ」


ヨルンは殿下を一瞥し。


「そんな小汚いケット・シーも知らん。いくらケット・シーの街でも誰彼かまわず信用できるわけ無いだろ」

「な、貴様殿下に小汚いなどと・・・『おい!』」


さすがに殿下(変装中)への無礼を看過できないと思ったか、ニャルタニャンが口を挟むが、そこに別の声がかぶった。


「騒ぐなって言っただろうが!やかましいんだよ。 ヨルン、こいつ(猫)は俺の知り合いの冒険者だ、エルフじゃなくてこの国から依頼を受けたんだろうから、お前も大人しく連れて行かれろ。骨折の治癒は、時間がかかるが、正直いつまでもここに、お前を寝かせておけねえ。ここに寝かせたからといって早く治るってもんじゃねえし、命に別状無いんだからさっさと家に帰って養生しろ」

「そんな・・・」

「そんなもこんなもねえ。お前さんはたった今退院だ。治療費は後で、ケット・シー経由で請求するからちゃんと払えよ」


何か強制退去みたいな流れになった・・・俺は場を納める努力をしたから悪くないよな。

にゃーは、しばしお昼寝にゃ

次回8月9日20時です

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