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17 偉い人が言っていた。

「ガイアン、さっき何か言いかけていたが、何かわけがあるのか?」


村長宅をでて戻る前に気になったことをガイアンに聞いてみた。


「ああ、それですか・・・・実はヨルンと共に、一時居なくなった二人はデルバート、ハーマンサという夫婦で・・・・俺の兄と義姉だ。ゴブリンの襲撃が始まると兄は足の悪い父には隠居してもらい、自分が戦闘指揮をとると言い出した。父もそれに応じあの家に移ったが、あの家は狭いので兄夫婦が兄妹の面倒を見ることになった」

「な・・・すまない、俺があまりにも無神経だった」

「いや、兄夫婦の偽者に言われたとはいえ、俺達が兄妹に気を配っていなかった部分はある。ただ、次期村長としても期待していた兄が偽者で、その死の真相を知った父を思うと・・・・な」

「そうだな・・・俺もかかわった以上最後まで協力させてもらう。敵を討って村の平和を取り戻そう」




翌朝スプリガン排除作戦を開始する。

「あの者でよろしいですか」

「はい、彼を呼び出してください」


間もなく、俺の指定した人物が建物の裏手にある死角へとやってくる。これから行うことを万が一にも敵に見られたり知られたりしないためだ。

俺は村人を見ながらその言葉をつむぐ。


「召喚」

・・・

「送還」


俺の言葉に応じるように、それが静かに召喚され、数秒後には何事も無かったかのように送還され消える。


「どうですか、俺は問題ないと思いますが」

「はい、私も確認させていただきました。これなら問題有りません」


村長と小声で話しながら、俺の能力を確認してもらい作戦の許可を得る。


「それでは計画通り、これよりスプリガン排除作戦を決行いたします」




防壁には一つだけ門がある。そして今、村唯一の門前にある広場に全ての村人が集められている。


「村人全員を集めての会議だと聞いたが、なんだか人数が少なくないか?」

「そういや、アンデールの奴が見えないがあいつは何してるんだ」

「アンデールだけじゃないキャルマーの奴もいないぞ」


広場には、村長命令で8時だよ・・・ではなく、AM10時、全員集合の命令で全ての村人が集まっている・・・はずなのだが、やけに人数が少ないと首を捻る村人が見うけられる。


「村長、ゴブリン討伐の作戦会議とは何だ?何かいい方法があるのか」

「ガイアンの奴が何か長い物持っているが、あれは武器なのか?」

「おい、オーテルガと、マッシュビーも馬鹿でかい弓みたいなものを持ってるぞ!」


かたや、戦闘関連に明るい者は対ゴブリン戦の作戦という部分に関心を寄せたり見慣れぬ武器を注視したりという感じだな。


「あ~静かに。これよりゴブリン討伐作戦会議を行う。だが、会議の前にゴブリン討伐のために用意した武器を皆に見てもらいたい。ガイアン」

「はい。行くぞオーテルガ、マッシュビー」

「おう」


三人は防壁に走りよりその隙間から大型のクロスボウを構える。


「皆近くによって確認してくれ」


村長の言葉に村人が、ガイアン達の居る防壁近くへと集まりガイアン達と、外の魔物のとで視線を走らせている。見慣れぬ武器に皆意識が向いている。

ここで、俺のギフトを発動する。

召喚、駐車場(一部)

俺の思考に答えるように広場の地面に、一瞬魔法陣が浮かびあがる。そして地面がアスファルトに変わり、範囲内に居た敵対者が敷地外に強制移動される。


「なんだ?今何か光らなかったか?」

「ああ、足元が一瞬・・・あ!なんだ、土が黒いものに変わってるぞ」

(全て偽者だ、やれ)

俺はトランシーバーに向かい指示を出す。

カシュン、シュパン、シュン

村人の騒ぎをよそに、ガイアン達のクロスボウから微妙に異なった音をたて、ボルトが射出される。

ギャ、アウッ、ギャウ


「「「「「え?」」」」」


「ああ!外に誰か居るぞ」

「あれは・・・ユリアンニじゃないか、ガイアンお前姪を射たのか!」

「おい、ライムートに、デルバート、ハーマンサの夫婦も外にいるぞ。しかも夫婦にも矢が刺さっている」

「やめろガイアン! おい、こいつらを抑えろライムートも撃つつも『静まれ!!』り・・・」


「「「「!?」」」」


カシュン


「「「「あ!」」」」


突然響いた大音量の声に村人が一瞬固まる。そして、その直後ガイアンがライムートを射抜く。遅れて村人の声が重なる。大声は俺が渡した拡声器が原因だ。


「静かに!皆の者、ガイアン達は乱心してなどおらん。落ち着いて今一度外のモノを見てみるんだ」

「な、村長あんたまで何を言って『ああ!何だあれは!』『そんな、ユリアンニが化け物に』・・・え?・・・そ、そんな・・・・」


村長に詰め寄ろうとしていた村人も居たが、他の村人の声に振り返り言葉を無くす。今正に、外に居る矢を受け倒れたモノ達が徐々に姿を変え、大きな毛むくじゃらの巨人のようになっていく様子を見せられているからだ。


「あれは村人に化けた魔物だ、我らに村は自在に姿を変える事のできる魔物どもに内側から崩されておった。それを教えてくれたのはリリパット族長老の、お孫さんとコボルト族族長の息子さん達を従え、新しい武器を持って我らの村に救援に来てくださったこちらの御方だ」


言われて俺達は建物の影から出て村人に姿を見せる。


「なお、本物のライムートとユリアンニが、魔物にさらわれ死に掛けていた所を彼らに救われているし、ガイアン達も昨夜本物のライムートとユリアンニを確認しているから、あれが偽者と知って射ているのだぞ」

「では、デルバート、ハーマンサも本物が別に?」

「・・・・・」

「そんな・・・」


族長は答えられない。そして、それが返答でもある。つまり、生きては居ないだろうと。


「ケントさん!大変です、直ぐこっちに来てください。とんでもない数のゴブリンとスプリガンが集まってきています」


突然ガイアンが叫び外の様子を伝えてくる・・・が、作戦中俺は何度もナビを確認していたが、この村に接近する光点は無かったぞ。僅か数分で、そんな急に魔物が増えるはずは無いんだが・・・。

俺はガイアンに示されるまま外を覗き込み・・・。


「なんでだよ!」


反射的に叫んでいた。

ぱっと見~4~500匹という感じだろうか。作戦開始前の4倍ぐらいは居る様な気がする。


「マジでどうなってんだ・・・・」


防壁の外を見れば、あたり一面魔物が犇いていた。ナビで確認しても光点が重なりすぎて赤一色しか確認できない。・・・見ると小さい髭面も多数混じっているが、全部スプリガンなのか?本物のドヴェルグやドワーフが混じっていると、更にややこしいんだが・・・。


「こいつらどこから出てきたんだ?」

「あのあたりからゾロゾロ出てきてます」

「あ、アンデールが居たぞ! ケントさんアンディールが居ます!」


げ、マジか、行方不明のエルフも混じってるの?それ本物か?

俺はスマホを確認するが、森の奥に光点はない。いったい何処から湧いてるんだよ。それに、光点が集まりすぎて色の確認ができない。あれが本物のエルフやドワーフなのか確認できないのは士気にかかわるぞ。


「ちょっと、そこから離れてくれ。とりあえず、コンテナハウスで門をふさいでおく。あのエルフが本物か偽者か今すぐ確認というわけにいかない。本物ならできる限り助けるから今は忘れてくれ」

「そんな・・・」


入り口の次に広場の周囲にもコンテナハウスを並べていく。


「この建物は見た目よりはるかに安全なので、戦えない方をこの中へ避難させて下さい。戦える方は警戒をお願いします」




「一人あたり20匹狩ればどうにかならないか?」


いやいやいや、無茶言うなよモーブさん。あなたは30匹くらい余裕で狩りそうだけど、それでも焼け石に水だよ。俺は“俺TUEEEEEEEEE”できるキャラじゃないし、エルフだってそんなに強くないから今の状況なんだよ。


「ミニショベルで突っ込めば、私もそのくらいは・・・」


いや、無理だから。ミニショベルで数匹殴っても、その後あいつら逃げるよ。移動が遅いんだから殴られる前に逃げれば、態々戦う必要ないからね。


「いや、無理だろう。それなら車で撥ねてもらったほうが良くないか?」


軽だとゴブリンの死体でも、乗り越えるのは無理そうだから2tダンプトラック限定だね。それでもあの数轢いたらいずれ身動きできなくなりそうだな。

その後もいくつかの意見が出るが有効な策は出てこない。


「そろそろお館様の案を聞かせてくれませんか」


いや、シデン君むちゃぶりしないでくださいよ。


「そうだな、何か策があるのだろう?」


・・・・・・・・・

え~~~~無いよ。策があれば最初にいっているって。

・・・・・・・

そんなに見るなよ・・・視線が痛い・・・


「・・・・・・戦いは・・・そうだ、偉い人が言っていた、戦いは数だよモーブ。俺が偉そうにふんぞり返って勝つ策を口にしても、数が少なければ机上の空論にしかならない」

「・・・ほう・・・つまり?」

「つまりは・・・・(え~とどうすりゃいいんだ、囲まれた時の定番は・・・!)俺たちには物資がある。先ずは篭城で十分な準備を揃えてから、一気に反撃する」


よし、とりあえず時間稼ぎながら作戦を考えよう。


次回8日20時です

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