16 村長との対話
村から300m程はなれて
ユニットハウスとログハウスを召還する。当然子供達は寝ている。
「な、これは家か?しかし、こんな家見たことが無いぞ」
「う、うわあっ」
「・・・・・・・・」
お~驚いてるな。ガイアン+二人の三人でやってきたけど、中々の反応だ。
「二人は空腹と疲労で死に掛けていたんだから大声で騒がないでくれ。二人はこの小屋で寝ている」
「あ、ああ早速、子供とやらを見せてもらおうか」
俺は三人を連れて小屋に入る。
「そんな・・・この子達が本物という証拠はあるのか」
「俺は鑑定で真偽を確認できるが、それを他人に示す手段は持っていない。それより、言葉に気をつけろ、極限状態でやっと助かったこの子達を、保護者であるべきあんた等が貶めるような事を言うな」
子供達をレオノールに任せ部屋をでる。流石にエルフも文句言うことも無く後をついてくる。別の建物に移りエルフ達を座らせ知りうる限りの情報を伝えることにしたた。
「では、ヨルンと共に狩りに出ていた二人は、化け物と入れ替わっているというのか」
「ああ、ヨルンと一緒に戻ったなら本物の可能性は低い」
「しかし、二人はヨルンのようなおかしな行動は無かったぞ」
「・・・スプリガンは捕食によって対象の記憶を読み取り本人と変わらない行動をできる。ヨルンが異常に見えたのはヨルンを捕食できず見た目を真似ただけだからだ」
「そのスプリガンとやらは確かなのか?」
俺はスマホを取り出しエルフたちに見せることにする。
「俺たちが一緒に住んでいるリリパットの長老が、姿を変える魔物の存在を確認している。それと同種が、村に入り込んだと俺は思っている。これを見てくれ、これは特殊な魔道具で周辺の地図や、ある程度の大きさの生物を表示できる。この図形がエルフの村だが、入り口の外や村の中に赤や緑の点があるだろう?これは俺にとって友好的か敵対的な生物かを示している。現在地はここだな、緑の点と黄緑の点があるな。敵対的であるほど赤に近い色で表されるが、俺に不信感を持っているあなた方は少し黄色が混じっているという感じだ」
三人はスマホを凝視しているが、信じてもらえるだろうか。
「オーテルガ、マッシュビー、いけ」
「おう」
ガイアンに名前をよばれた二人が、走っていった。返事した声は一人分に聞こえたけど、どっちが、返事したのだろうか? まあ、それにしても、三人の名前は黒いのが三位一体攻撃してきそうな感じなのに外見は腹が立つほど美形だな。髭なんて生えてないし、顔に傷の一つもない。あの指輪の映画のエルフでもこいつらと並ぶと霞んでしまいそうな美形だな。
二人が走っていって間もなく、ナビの表示が変わる。あの二人の移動を拾ったようだな。そして、それを見たガイアンが手元に数秒だけ、小さな火を出すと二人が戻ってきた。
「確かにこれは俺たちみたいだな。疑ってすまなかった。ならば村の中の赤が魔物というのは理解できるが、黄色は何だ?村人が貴方方に敵対する理由はないはずだ」
ああ、光点の動きを確認したのか。言葉も無く連係できるとは中々だな。
「その黄色はスプリガンの暗示に掛かっている村人だと思う。対応策無しに接触した場合、俺たちに敵対する可能性が高い」
「そうか、それでか・・・」
「ん?何かあるのか」
「ゴブリンが攻めてきた時に、村の武器保管庫を開いたら武器がなくなっていた。しかもゴブリン共はやたらいい武器を持っている。どう考えてもあれは村の武器なんだが、ゴブリンがこっそり盗んで、後日出直すなんてありえないし、持ち出して渡す奴も村に居ないと考えていたんだが・・・今聞いた話で全て分かった」
あ~武器盗まれてたのか。苦戦してる理由と俺たちを疑う理由もそこにつながるわけか。謎は全て解けた、犯人はスプリガンってわけだ。
「なら、お互いのために協力しないか」
言って、俺は右手を出す。
「ああ、願っても無い事だ。度々失礼なことを言って申し訳なかった。子供達の伯父として、この礼は必ずさせていただく」
言葉を返しながら俺の握手にガイアンが応じるが、あんた伯父だったのかよ。
「礼はいらん。その代わり伯父として子供達と真剣に向き合え。見た目だけの偽者と区別がつかない奴が伯父をかたるな」
言って俺は握手の手を強めた。まあ筋トレ推奨のおれの筋力なんてたかが知れてるけどな。確か前世?では45kgぐらいだったかな。
「くっ・・・すまない・・・肝に銘じることにする」
おう。伯父とはいえ保護者の一角だ、しっかりしてくれよ。
「水堀の下をくぐる裏口があったのか」
俺たちは今、ガイアン達の案内で村の裏口から村へと潜入していた。
「この通路は、俺の固くする魔法と同じもので作っているみたいだな」
「ええ、この通路は魔法で穴を開けて穴壁も魔法で強化してあります。今回はまだ余裕がありますが、いよいよ危なくなったときの脱出路なんですよ」
「へ~なるほどね~しかし、そんな通路を俺たちに教えてよかったのか?」
日本の城にも隠し通路があって、築城に集まった職人は後日秘密を守るために、処刑されたとかの噂があるぞ。
「かまいませんよ。基本的に魔物対策ですからね。さて、村に入って左手に村長が居る家がありますが、表示はどうですか」
俺はスマホを確認する。
「左は緑色だ。村長に会わせてくれるなら最初に挨拶するべきだろう」
「では案内します」
エルフの村はそれなりの広さだが、既に夜ということもあり人気は無い。・・・いや、外出禁止令か?それにしても見回りも居ないのはどういうことだ。
俺達が案内されたのは、村の端にある丸太作りの小さな建物だった。大きさは10坪程だろうか? 先にガイアン達が中に入り村長と話した後俺たちがよばれて中に入る。
室内は丸太剥き出しで、床は素焼きの粘土タイルのような物が敷き詰められている。部屋の隅には調理と暖房を兼ねた暖炉が設備され、脇に水がめが置かれていようだ。他の家具や調度品といえば、何かの毛皮らしき敷物と木の皮を編んで作ったらしい籠とその籠を入れる棚に僅かな食器類が確認できた。そして安楽椅子のような物とその横の小さな椅子に、それぞれ座る男女が室内に居た。これが村長の家なのか? 家の大きさだけ比較しても、もっと大きな家があったように思たが、二人のどちらかが村長ということか。
「お客人よ、よく来てくれた。座ったままで失礼するが、私は村長のクシミール、横に居るのは世話役のジスレットだ。少々足が悪くて思うように動けぬゆえ座ったままを許して欲しい。今我らは大変な苦境に立たされているが、聞けば客人方は我らに助力していただけるとか。是非話を聞かせていただきたいが、先ずはお客人方の名を伺ってもよろしいか」
安楽椅子のような物に座る男性が名乗り村長であると告げてくる。見た目は美中年って感じだが、年齢はよく分からない。
「はじめましてクシミール村長、俺の名は奈良健人。こっちが原人のモーブに、コボルト族族長の息子で黒足とその従兄妹になるレオノールだ。それとリリパット長老孫のシデンの5人でエルフの村に来させてもらった。最初の目的は、エルフと交易だったんだが、道中予想外の事があって、エルフ村の内情に首を突っ込ませてもらった。其のあたりの経緯はガイアンたちから聞いただろうか」
「うむ。先ほど概要だけではあるが説明を受けた。正直俄かには信じがたい部分もあったが、ヨルンの変貌理由と孫達の話を聞かされては、はなから嘘と断ず愚を犯すわけには行かぬ、是非詳しい話を聞かせて欲しい」
あの兄妹が村長孫でガイアンは村長の息子だと・・・・
「失礼だが、あの兄妹はヨルンの偽者が暴れてからというもの、随分と冷遇されていたようだったが、貴方は祖父としてどうお考えか?もちろん公職として忙しい立場にあるのは理解できるが、村に居たときから食事も十分では無かったと聞いたぞ」
「あ・・・それは・・・」
「いや、ナラ・ケント殿のいわれる通り、あの子らの苦痛は、私の不徳の致すところ。忙しさを言い訳にあの子達を放置したことを猛省するしだいだ」
ガイアンが何か言いかけたが、村長が言葉を遮った。村長としても子供達の件は本意ではなかったという事か。
「分かりました。悪意や無関心からの事ではないのなら、俺はこれ以上言える立場ではありませんので、次の話しにいたしましょう。状況証拠からの推測ですが、ヨルンさんと共に一時行方不明となっていた二人は、スプリガンに・・・・」
「その様な魔物が村の中に・・・いや、確かにそれなら合点がいくというものだな」
「と、いいますと?」
「我らエルフは森の加護を得ている。だから至近距離で直接我らの姿を見られなければ正確な認識ができん。村についてもそれは同じはずだ。にもかかわらず、奴らは度々村を襲撃しに来おる。まるで、森の加護など無いかのごとくだ。しかし、奴らの仲間が村内に居るのならば、森の加護を無効にできる何かがあるとしても不思議ではあるまい」
ああ、確かに。人にはわからない匂いや音で仲間に合図を送るとかはできそうだな。
その後村長との情報交換を行い、スプリガン対策を検討した。
「では、村人を少人数ずつ集めればいいのですな」
「ええ、俺はスプリガンとその影響かにあるものを見分けられますから、明日の朝決行しましょう」




