154 過疎の村 後編
「お~いドルトン、ちょっと作って欲しいものがあるんだけど」
「作って欲しい物?武器か?乗り物か?」
電子タバコをぷかーとしながら、ドルトンが言う。
あれ、たばこ吸っていたっけ?
俺がそんな顔をしていた事に気が付いたのか、ドルトンはちょっとバツが悪そうに口を開いた。
「む、これか、これは仕事中の酒がキャサラに止められてな、代わりにちょいと吸ってみたんじゃが、中々に美味い」
「へえ」
うわ、俺の店のせいで、ファンタジーが毒されていく。
「作って欲しいのは加工用の機械で、手動でなるべく楽に動かしたい」
そう言って俺は簡単な絵を2枚渡す。
「ふむ、どちらもさほど難しくないな。片方は加熱の魔法陣も刻むのか。回転や加圧はミシンと同じ足踏み式で良いか」
「ああ、それでいいと思う」
「そうか、数日もあればできると思うぞ」
「早いな」
「最近は特に急ぎもないからな」
「じゃあ頼むよ」
ドルトンと別れた俺は、クシミールを呼んで打ち合わせをする事にした。
「三村共同の事業ですか」
「ああ、今回の三村はお互いに数キロの位置にあるだろ、その中心辺りに工房を建てて、村の連中をそこで雇用しようと思う。人手がないといっても三村合わせれば、多少は人手があるだろうし、シフト制にすれば均等に仕事を割り振れると思う」
「なるほど、それで何を作らせるんです?」
「今考えているのは、燃料と暖房器具だ。これから寒くなるし、売り始めるにはちょうど良いと思うんだ」
「燃料というと、薪や炭の様なものですか」
「そうだな、それに近い物であり、代替品になるものだよ」
フォレストシティでは、最初期に炭作りをはじめ、これは森と南双方の飲食店で好評を得ている。魔の森は植物の成長がはやく、森の木はいくら切っても尽きることが無い。よって、炭焼きは森林破壊を気にすることなく、盛んにおこなわれている。…大気汚染は、まあそこまで心配いらないだろう。しかし、そうして大量に炭を焼くと、商品とならない欠片や炭の粉が大量に出るものだ。
俺は先日、アントニャオ殿下との話しで、こうした炭屑の利用方法を思い出した。そして件の村で、この炭屑を利用した新商品を作らせれば、村の窮状を改善できるのではないかと思いついたのだ。
なんせ、原価はほぼ0で、働き手は老人でも事足りる。
ローリスク、ハイリターンの、夢の村おこしだな。
同時に、同じ屑つながりで、木材加工で出たオガ屑の利用方法も、思い出した。
キノコの栽培でもない限り、オガ屑なんて他に利用方法がないだろうから、これも原価が0だ。ゴミから金を作れるのだから、もうからない訳がない。
…と思う。
「そういう訳で、これから実際に作る物を、レクチャーする」
場所は例の村付近に設置した工房だ。
三村それぞれから、人を集めたので、ざっと50人は超えているだろうか。工房には入りきらないので、作業は屋外で行うことにした。
村人は一様に不安そうで、中には村の顔役に『どういうことだ』と、問い詰めるような視線を向けている者も居る。
一方で顔役たちは『どうしてこうなった』という顔なので、どっちもどっちというところだな。
やはり、泣き落としやゴネ得で、対価無しに援助がもらえると、思っていたようだな。
「税を納めた実績もないのに、支援だけもらえる訳がないだろ。お前らにはキッチリ働いてもらうぞ。異存はないな」
一応反論はないので、話を先に進める事にする。
「最初に作って見せるのは、炭団という燃料だ。これは炭の屑に粘り気のある汁を混ぜ、団子状にして乾燥させた物になる。これの長所は、炎が上がらず長時間燃える事で、欠点は火力が弱い事だ。ただそれも使い方次第で利点になる。煮物などなら弱く長時間燃える燃料の方が使いやすいし、暖房ようの燃料に使えるから、寒い冬も暖かく暮らせるぞ」
「おお」
「柴刈りが減るのはいいな」
「だけど柴はただだぞ、その炭団は俺らが使う場合も、買わにゃならんのじゃないか」
「あ、そうか、そうだよな」
あっという間に、金を払うという話が広まっていった。
そういう話は、身内だけでやれ。あと、どんだけケチなんだよ。
「金は払ってもらうが、従業員価格で安くしてやるから、心配するな。次に、こちらの機械を使った仕事の説明をするぞ」
安くするという言葉で村人を静かにさせ、次の説明をする。
「次はこの機械、これはこの世界初の、オガライト製造機だ」
「オガライトとは何ですかのう」
「ほう、よくわかりませんが、凄いのですな」
「あれ、売ったらスゲー金になるのか」
「お、お前、何言っているんだ」
「だけどよ、うまくすれば働かなくても」
「おい、こいつの村の奴、この馬鹿何とかしろ」
マジでこいつら大丈夫か。
「言っておくけど、この機械は貸すだけだ。そこの奴が言うように、機械を売り払ったりしたら、犯罪の連帯責任として、村ごと潰すからな」
村人は静かになった。
魔が差さないように、暫くは見張りの兵を常駐させよう。
「オガライトは、おがくずを加工して作る燃料だ。最初に、この機械の上にある投入口からおがくずを入れ、このスイッチを入れる。そうすると、このカマが熱されるから、火傷には気をつけろ。で、横のペダルを踏む。そこのあんた、ちょっとやってみろ」
不穏な事を言ったやつを指名してやった。
ゆっくり説明しながら、ひと汗かかせてやろう。
ペダルを踏ませると、オガライト製造機から、静かに音が聞こえてくる。ペダルを動力に、フライホイールやクラッチを使って省力化した圧縮機が、おがくずを徐々に圧縮し、そこに熱が加わると、おがくずに含まれる天然成分が接着剤となって、カマの下部からちくわの様な形状の、オガライトが押し出されてくる。
ただし、村人にはおがくずを入れると、オガライトになる事しか教えない。
現物ではなく、技術を売るという手段もあるから、まあそう言う事だ。
「この筒が冷えれば、オガライトになる。これは火付きが良く、燃焼時間が長いが、水にだけは弱いので、濡らさないように注意してくれ。また、これを炭にすればオガ炭という高品質な炭になる」
オガライトがちくわ状なのは、製造過程で高温のガスが発生する欠点があり、ガス抜きするための形がこれらしい。
「最後、燃料ではなく暖房器具だが、これがサンプルだ」
そう言って俺が出したのは、江戸火鉢をヒントに作ったテーブル(俺作)だ。
「これはどうやって使う物ですか」
「これは、この箱の中に灰を入れ、その上で炭団や炭を使って、煮物や焼き物作る調理台兼テーブル兼暖房器具だ」
江戸火鉢は本来、畳や板の間に座って使う物だけど、この世界ではテーブルと椅子の方が一般的なので、日本の物より高さがある作りにした。そして、炭を入れる部分を二層にして、上部の調理用とは別に、足元に暖房用の炭団を、入れられるようにしている。まあ、足元に練炭や七輪のコンロを置いても良いけど、蹴飛ばすと危ないからテーブルに内蔵した。
「ほう、かまどを囲んで食事をするわけですか」
「暖炉より煮炊きしやすいだろ。それに足元に炭が入れられるようにしてあるから、暖かいぞ。そして、このテーブル用の木材を加工するために、加工機械としてテーブルソーや糸鋸盤など用意した。出来が良ければ他の家具も作らせるから、長く仕事できるように頑張ってくれ」
なんだかんだで、結局手を出してしまった。
「どうにかまとまった…」
誰に聞かせるでもなく呟くと。
「そうですな、しかしこれが最後の村とは思えませんな。このまま周囲の村を放置し続ければ、この村の同類がまた大陸のどこかで…」
「やめてくれ、村はゴ〇ラじゃねえし、フラグ建てないでくれよ!」
新作始めてみました。
懲りずに異世界転移物ですが、主人公が普通に戦います。
終わったゲーム世界で、今日も俺達は生き返る
https://ncode.syosetu.com/n4472fv/
カクヨムでも上記作の同時掲載しております
また、そちらで異世界でDIY【改訂版】を
2019/11/14より投稿し始めました。




