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15 スプリガン

短いです

2600文字ほどです

【鑑定:エルフ村の敵性生物】

エルフ村の敵性生物=スプリガン ドワーフ亜種と考えられているが真相は不明。自由に姿を変えることが出来、他の生物に成りすますこともできる。戦闘においては巨人化を行うことが多い。捕食した生物の記憶を取り込めば、本人のように振舞う事ができるが、記憶取り込みが無い場合では、周囲に暗示効果のある体臭を発し、半ば操っている。


そういうことか!


「シデン、直ぐに長老に伝えてくれ。俺の感だがその化け物は“スプリガン”だと思う。スプリガンはドワーフの一種とされていて、見た目も似ているけど実は姿を自由に変えられるし、巨人になって人を襲うこともある凶暴で危険な存在だ」

「わ、わかりました。直ぐ伝えます」

「ケント、そのスプリガンについて、他に何か知ってるか?」

「そうだな・・・財宝が好きで隠れ家に隠し持っていて、その財宝を盗もうとする者を集団で襲うとか、人の子供に化けて本物と入れ替わるとかそんな感じだったと思う。そして、今まさにエルフの村の中にスプリガンが混じっている」

父親が襲われ、その偽者が村に現れたとなれば、同行していたエルフもスプリガンの可能性が高い。そして同行していたエルフに違和感が無いなら、そちらは既に捕食されているということだ。


「念話、終わりました。直接祖父には念話が届きませんので拠点を中継しての伝言ですが、凶暴で姿を変えて人に化け入れ替わることも伝えました。しばらくは拠点の結界に篭るそうです」

「わかった。リリパット同士は念話、コボルトは相手の匂いで本人確認をするように追加で伝えてくれ」

「はい。伝えます」


俺はナビの表示をもう一度確認する。村の中にいる明らかな赤色の数は四つ。これが、スプリガンだとしたら、他の黄緑はなんだ?



「おそらく、村の中に居るスプリガンは村人と、あの兄妹に化けている。そして、周囲のエルフに暗示をかけて操っているみたいだ。そこでだが、シデン」


「はい」

「悪いけど、村に潜入して安全そうな人に繋ぎを取ってきてくれ。スプリガンとその影響下にある者は、村のこのあたりに集まっているから、それ以外の人なら正常だと思う。それと、これを持って行ってくれ」


マップを見せながら黄色と緑の光点の位置を説明しつつ、俺は小さな箱とトランシーバーを出し、シデンに担がせる。


「少し重いだろうから、村の目立たない場所に隠して協力者を見つけたらその人に回収してもらうといい」



日が暮れてから掘りに木材を渡しシデンを村へと送り出す。幸い防壁には多少の隙間があり、人やゴブリンは通れなくてもリリパットなら通り抜けられた。

俺たちが森に潜んでいると・・・・・


「え~と、聞こえますか・・・・どうぞ」

「ああ、聞こえるよ、うまく接触できたか、どうぞ」


俺が持たせたトランシーバーからシデンの声が聞こえてきた。


「はい。以前リリパットの村に来たことのあるエルフさんを見つけましたので、声を掛けました。今代わります・・どうぞ」

「私はガイアンというものだ、今、リリパットの少年から“森で倒れていたエルフ村の子供について重大な話がある”と聞いた。村には子供が少なくてね、倒れていた子供が居たとすれば直ぐに分かりそうだが、生憎村の子供は全員そろっている。いったい何が目的だ・・・・・どうぞ」


トランシーバーから聞こえてきた男性の声には苛立ちが滲んでいたが、幸いアプリの効果で言葉が通じるようだな、この会話アプリは周囲に俺を合わせるんじゃなくて俺に周囲をあわせる仕様だけど実際に喋っている言葉はどうなってるんだろうか。


「俺は奈良健人、縁あってリリパットやコボルトと同じ村で生活している人間だ。先に断っておくが、俺たちは今この村で起きている襲撃とは一切関係ないし、貴方がたを騙す気もない無い。ただ、こちらへの道中で見聞きした情報を提供するだけだ。まあ、そもそもの来訪目的は交易の交渉だな・・どうぞ」


・・・・・

・・・・・


「すまない。リリパット殿に少々貴方の事を聞かせて頂いたが、推測するにどうやら貴方は鑑定が使えるようだね、倒れていた子供について聞かせてくれないか・・・どうぞ」


鑑定がばれてる!?

俺は慌てて皆に視線を送るが・・・・。


「前に岩のかけらを鑑定してたじゃないか。皆知ってたしケントの能力で、鑑定なんていまさらだぞ」


 あれ、そうだっけ? 周りに誰か居るときは言葉にしないようにしてたけど・・・。


「今更です」

「あの拠点の方がよほど異常です」

「・・・・すまない。皆俺を信じてくれてありがとう」


「どうした?子供の名を、知っているのだろう?・・・・・どうぞ」


トランシーバーからガイアンの催促が聞こえてきた。ちょっと感激してたのにうるさいな。


「ああ、すまない。子供の名前はライムートとユリアンニで二人は兄妹だ。種族はハーフ・エルフだな。兄は辛うじて会話が出来たが、妹は衰弱していてかなり危険な状態だった。こちらに出てきてもらえれば二人を確認してもらえるが、村から出られるか? 俺たちは、村を挟んで襲撃者達とは反対の方向に居る・・・どうぞ」


「ばかな!ハーフ・エルフの兄妹だと、その者たちは村にいるぞ、あまり、いい加減なことを言うなよ・・・・どうぞ」

「事実だ。そして村には村人に化けた化け物がいる・・・どうぞ」

「そんなバカな!・・・・・どうぞ」


慣れない無線だといま一つ、緊迫感に欠けるな。


「化け物は本物を捕食する事で記憶すら奪って完全に成り代わることが出来るが、子供達は幸い捕食されていない。今は周囲の者に暗示を掛けて違和感を誤魔化しているかもしれないが、いずれ他の者を襲って誰が本物かわからなくなるし、既にそうなってしまった偽村人も混ざっているぞ・・・どうぞ」

「・・・わかった。抜け道からそちらへ向かうが、誰か他に連れて行ってもいいか?・・・どうぞ」

「同行者はかまわないが、その人選には条件がある。先に話した通り偽者やその暗示に掛かった者以外にしてくれ、安全な人についてはシデンが大体の位置を把握している・・・どうぞ」


「わかった、できるだけ急いでそちらに行く・・・どうぞ」

「了解した・・・他に無ければ通信終わる」

「わかった」


・・・・・


「子供達はどこだ」


まもなく、村の裏手から三人のエルフがやってくる。うち一人がガイアンなのだろうが、挨拶もソコソコに子供達について聞いてきた。


「まあ、そうあわてるな、ここで騒ぐのはまずいし、戦いがおきているようなところに子供をつれてこれるわけ無いだろう?ここから少し移動したところで会わせるからついてきてくれ」

「わかった案内してくれ」


次回4日20時です

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