あとがきにかえて +主要参考文献
『イリエの情景~被災地さんぽめぐり~』は2016年に起稿して翌年夏に書きあげました。
なろう版ではしばしの休載をして、2022年5月に無事完結することができました。
思えば『イリエ』を書こうと思い立ったのもこの時期でした。
社会人2年目に突入したばかりの自分はその日、
あまりに職場へ行くのがつらすぎて、布団の上で涙を流しながらマネジャーに連絡しました。
「ごめんなさい、どうしても今日は出勤できません」
するとマネジャーは、ほとんど間髪入れずに、
「分かった、今日明日明後日、ゆっくり休め」
と言ってくれたのでした。
いやあ、ホワイトホワイト。
(あまりにつらくて仕事行けなくなるくらいには)
マネジャーから、さらに一言。
「どうせなら、旅行でも行ってリフレッシュしてこい」
背中を押された僕は、まず初日は泥酔するまでサイゼで酒を飲み、
酒が抜けた2日目に、大学時代頻繁に旅先に選んでいた三陸へと向かうのでした。
当時は部分開通だった三陸道を走り、道の駅三陸に着いたとき、
「そうか、被災地は小説なら書ける」
そう思い至り、『イリエ』は生まれました。
大学時代……具体的には2013年頃から、津波被災地をルポ、
つまりノンフィクションで描きたいと思っていたわけですけど、
あまりに膨大な情報量に、そして日々変わりゆく状況に、書く意味を持てずにいたのです。
つまり、ルポを書いたところで、あっという間にそれは過去の遺物となって、埋もれてしまう、と。
時事ネタ……あえてそんなワードを用いますが、時事ネタは鮮度が命。
フンガ・トンガが噴火したことなど多くの人が忘却しているように、
ただ記録するだけなんて、ちっとも魅力的じゃない。
でも物語の力を借りることができれば。
物語はフィクションです。
ルポでは同じ石巻で見聞きした体験でも、2013年と2016年の出来事なら、
別々のものとして描く必要がありますが、
フィクションであれば、それを同じ時間軸として描くことができます。
加えて依利江と三ツ葉という二人の旅、という物語が加わることで、
そこに普遍性が生まれます。
震災という出来事だけではやがて色褪せますが、
友情や青春というテーマはそう簡単に褪せはしません。
将来、仮に震災を知らない人々だけになっても、人々が友情を求める限り、『イリエ』は読まれる可能性がある。
物語には、それだけの力があると、少なくとも自分は信じています。
と、同時に、『イリエの情景』という物語は、
たくさんの方の力なくして生まれ得なかったのだと思います。
これは、連載を再開させるにあたり、全篇再読をしたときに思ったことです。
この作品を手掛けるにあたり、旅先で出会った数多くの方の話を聞きました。
そして僕は、その言葉に耳を傾けただけにすぎません。
その言葉が、物語を生んだのです。
もしかすると、この作品の作者は今田ずんばあらずという人間ではなくて、彼らなのではないか、と。
不思議なものです。
もうずいぶん昔の話なのに、ここにいる人たちは、みんな活き活きと語りかけてくる。
先日会ったばかりみたいなのです。
気仙沼市篇のリアス・アーク美術館で、「記録」「記憶」に関する話が出てきましたが、
改めて、その言葉の意味を自問し、今後の創作で表現していきたいと思うのです。
……話が取っ散らかってきそうな予感がします。
とにかく、僕は全力でこの物語と向き合うことができました。
依利江と三ツ葉、そして旅先で出会った多くの方、
なによりこの作品を読んでくださった皆様、そしてあなたに。
最大限の感謝を捧げて、ひとまず筆を置きたいと思います。
ありがとうございました。
2022年4月29日 過ごしやすい季節です
今田ずんばあらず
◆付録 主要参考文献
◆書籍・新聞
山内ヒロヤス/砂の城/近代文芸社 二〇〇八年
山内宏泰文/読む美術館/リアス・アーク美術館 二〇一三年
山内宏泰/東日本大震災の記録と津波の災害史/リアス・アーク美術館 二〇一五年
山内宏泰/震災と表現 BOX ART 共有するためのメタファー/リアス・アーク美術館 二〇一五年
東海新報社/鎮魂3.11 平成三陸大津波/東海新報社
佐々木松男/高田松原ものがたり―消えた高田松原―/高田活版 二〇一四年
北村敏秦/苦縁 東日本大震災 寄り添う宗教者たち/徳間書店 二〇一三年
佐々涼子/紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている/早川書房 二〇一四年
愛葉常二/海よ、永遠に(3.11「東日本大震災」)/エリート情報社 二〇一二年
愛葉常二編著/被災地のこころと向きあって―復興への軌跡―(3・11東日本大震災 あれから五年)/エリート情報社 二〇一六年
三浦英之/南三陸日記/朝日新聞出版 二〇一二年
森絵都/漁師の愛人/文春文庫 二〇一三年
柳田國男/柳田國男全集 第二巻/筑摩書房 一九八九年
朝日新聞/少年の詩、女川の明日を照らす 「生まれ変わるんだ」/夕刊二〇一二年一〇月二七日
dancyu/仙台はなぜ「牛タンの街」となったのか/二〇一五年三月号
◆ウェブ資料(二〇一七年七月アクセス)
地理院地図(電子国土Web) http://maps.gsi.go.jp/
JR東日本/時刻表 http://www.jreast-timetable.jp/index.html
ミシャグジにまつわる「一年神主」について http://www.yatsu-genjin.jp/suwataisya/sinji/misyaguji.htm
東北に行こう! http://tohoku.itot.jp/
東北の鉄道震災復興誌編集委員会/よみがえれ! みちのくの鉄道/二〇一二年九月http://wwwtb.mlit.go.jp/tohoku/td/td-sub100.html
宮城大学地域連携センター 地域振興事業部 南三陸復興ステーション/東日本大震災 被害と復旧復興・四年/二〇一五年 https://www.myu.ac.jp/img/minami/book/suzuki-archive.pdf
麻生川敦/東日本大震災における戸倉小学校の避難について~児童の引き渡しが終了するまでの避難について~/発行年不明 http://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/12404.pdf
日本地理学会災害対応本部津波被災マップ作成チーム/2011年3月11日東北地方太平洋沖地震に伴う津波被災マップ2011年完成版/二〇一一年 http://danso.env.nagoya-u.ac.jp/20110311/map/index.html
6666AA P/【第11回MMD杯EX】かわいいと思ってはいけないMMD解説/二〇一三http://www.nicovideo.jp/watch/sm21964052
3・11 その日を忘れない為に/3.11南三陸町立戸倉小の命を守れた避難行動/二〇一三年八月四日http://blogs.yahoo.co.jp/dftcj547/9556052.html
河北新報オンラインニュース/〈アーカイブ大震災〉生きたかったら残れ/二〇一六年二月一三日http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201602/20160213_13075.html(リンク切れ)
日本経済新聞/被災の結婚式場、永遠に 南三陸町「高野会館」保存へ/二〇一三年八月七日 http://www.nikkei.com/article/DGXDASDG07007_X00C13A8CR0000/
BLOGOS/石巻の新たなソーシャルビジネス/二〇一三年三月一一日 http://blogos.com/outline/57844/
萬年 一剛(神奈川県温泉地学研究所)/神奈川県温泉地学研究所観測だより,第六三号,二〇一三.
http://www.onken.odawara.kanagawa.jp/files/PDF/tayori/63/onkendayori63-02.pdf
陸前高田市/陸前高田市東日本大震災検証報告
http://www.city.rikuzentakata.iwate.jp/kategorie/bousai-syoubou/shinsai/kshoukokusyo.pdf
陸前高田市/津波防災マップ
http://www.city.rikuzentakata.iwate.jp/kategorie/bousai-syoubou/bousai/map/map.html
ネイティブ・モリオカン/【希望のかけ橋】ベルトコンベア運用終了
http://nativemoriokan.blog.fc2.com/blog-entry-672.html
株式会社ジョイフル本田/店舗比較 https://www.joyfulhonda.com/shopcompare/
平塚市博物館 http://www.hirahaku.jp/
防潮堤.net http://sea-wall.net/
閖上復興だより http://yuriage.org/
ONAGAWA DAYS http://onagawadays.jp/
宮城県/現状・課題見える化シート https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/fukensui/h26sheet.html
電通報/女川町長が語る、復興の現実と未来。 二〇一六年三月一六日 https://dentsu-ho.com/articles/3821
ニッポン放送/「女川は流されたのではない。新しい女川に生まれ変わるんだ。」映画『サンマとカタール』の舞台、女川町へ行ってみた しゃベルシネマ【第11回】 二〇一六年五月二一日 http://www.1242.com/lf/articles/5738/?cat=entertainment&feat=cinema
北日本海事株式会社/当社所有の自由の女神像について 二〇一四年一月一七日 http://www.nomco.co.jp/news/webdir/9.html
産経フォト/「自由の女神」その後 石巻【東日本大震災パノラマ】Vol.424/二〇一六年四月二日 http://www.sankei.com/photo/panorama/news/160402/pnr1604020001-n1.html
朝日新聞デジタル/津波で片足失った自由の女神像 震災遺構の意味を問う旅/二〇一七年一月二八日 http://www.asahi.com/articles/ASK1V55SQK1VUNHB00B.html
◆主な散策地
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石巻市 http://www.city.ishinomaki.lg.jp/
石巻市役所 本庁舎案内 http://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10105000/7821/7821.html
高校生がつくるいしのまきカフェ「 」 http://doorwaytosmiles.jp/
石ノ森萬画館 http://www.man-bow.com/manga/
南三陸町 http://www.town.minamisanriku.miyagi.jp/
南三陸ホテル観洋 http://www.mkanyo.jp/
気仙沼市 http://www.kesennuma.miyagi.jp/
金港館 http://ameblo.jp/hsmrr-3211/
リアス・アーク美術館 http://rias-ark.sakura.ne.jp/2/
気仙沼海の市シャークミュージアム http://www.uminoichi.com/
復興屋台村気仙沼横丁 http://www.fukko-yatai.com/
岩手県 http://www.pref.iwate.jp/
陸前高田市 http://www.city.rikuzentakata.iwate.jp/
たがだ屋一本松店 http://rikutaka.jp/?mode=f6
横浜市 http://www.city.yokohama.lg.jp/
横浜赤レンガ倉庫 http://www.yokohama-akarenga.jp/
海の見える丘公園 http://www.welcome.city.yokohama.jp/ja/tourism/spot/details.php?bbid=182
横浜ランドマークタワー http://www.yokohama-landmark.jp/page/
遠野市 http://www.city.tono.iwate.jp/
遠野市観光協会 遠野時間 http://www.tonojikan.jp/
ホテル鍋城 http://www.hotel-kajo.com/
遠野伝承園 http://www.densyoen.jp/
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【かまなび】釜石観光物産協会 http://kamaishi-kankou.sakura.ne.jp/wp/
釜石大観音 http://kamaishi-daikannon.com/
釜石大観音仲見世リノベーションプロジェクト https://www.facebook.com/kamaishinakamise/
仙台市 https://www.city.sendai.jp/
せんだい旅日和-仙台観光情報サイト- http://www.sentabi.jp/
ハピナ名掛丁商店街 http://nakakecho.jp/
牛たん炭焼 利久 http://www.rikyu-gyutan.co.jp/
生田緑地 http://www.ikutaryokuti.jp/
女川町 http://www.town.onagawa.miyagi.jp/
おながわたび 女川町観光協会 http://www.onagawa.org/
シーパルピア女川 http://onagawa-mirai.jp/
ガル屋beer https://www.facebook.com/garuyabeer/
ホテルエルファロ http://hotel-elfaro.com/
名取市 http://www.city.natori.miyagi.jp/
名取市観光物産協会 http://www.kankou.natori.miyagi.jp/
ゆりあげ港朝市 http://yuriageasaichi.com/
◆スペシャルサンクス
現地でお会いした皆様(第二のふるさとです)
取材に協力して頂いた皆様(おかげさまで今の『イリエ』になりました)
添削やネタ出しの手助けをしてくれた友人たち(無茶ぶりしました。ごめん。ありがとう)
家族のみんな(最初の読者です)
愛車フィットハイブリットくん(今度きれいにしてあげるからもう少し待ってね)
金港館様(近々ごあいさつに伺います)
リアス・アーク美術館様(感謝を伝えそびれたまま完結させてしまいました。ありがとうございます)
さくら様(方言についてのアドバイスをいただきました。素敵です)
女川町本のさかい様(またあそびに伺います)
Kagati氏(三巻にわたってお世話になりました。新しいイラストを見た瞬間の感動忘れません。大切にします)
坂平高多良氏(毎度毎度〆切間際の注文ばっかりでごめんなさい。ありがとう)
読者の皆様(ラブコールを贈ります。本当にありがとうございます)