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魔法少女はじめました  作者: 鷹羽飛鳥


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1 魔法少女? 無理無理無理!

 学校帰り、変な生き物に出会った。

 生き物? 生き物ってよりは、生きたぬいぐるみみたいな。

 白くて、耳が外に垂れたウサギみたいな、目がビーズみたいな、手のひらには載りきらないサイズの、なにか。

 目の前で、手? 前足? を動かしてなかったら、ボクだって捨てられたぬいぐるみだと思ったよ。


庄司(しょうじ)満帆(まほ)、君は魔法少女になるんや」


 動くどころか、日本語で話しかけてきた。

 女の子みたいな声。

 ぬいぐるみを着せたロボットとかじゃないよね?


「聞いてっか?」


 全自動? それともどこかからリモコンで動かしてる?


「人から声を掛けられたら返事をするって学校で習わんかったか?」


 女の子みたいな声の割に、言ってることがおじさんくさい。

 しかも、微妙にエセ関西弁。

 どこかでボクのこと見てるのかな? それとも、このぬいぐるみにカメラが付いてるとか?

 目は、レンズっぽくはないけど。


「だから、聞いてる?って言ってるんやけど」


 うるさいなぁ。


「ボクは庄司まほじゃないよ。

 人違いだから、返事しなかったんだよ」


 そう言ったら、ぬいぐるみもどきが困った顔になった。

 すごい、表情が変わるんだ。

 え、ロボットじゃないの? でも、こんな生き物いないよね。

 ぬいぐるみもどきは後ろ足だけで立ち上がって、ボクに近付いてきた。

 歩けるんだ…。


「いや、この魔力の波動は、マホで間違いない。

 しらばっくれてもダメや。

 わいはウーマ。

 わいと魔力が共鳴するマホだけが魔法少女に変身できるんや。

 わいと一緒にこの世界を守ってくれ」


「言ってることが1ミリもわかんないんだけど」


「もしかして、マホは頭が悪いのか?」


「だから、マホじゃないってば!

 ボクの名前は庄司満帆(みつほ)

 人違いだよ!」


「え? ミツホ? そんなはずは…いや、でも、この魔力は間違いないし…」


 ぬいぐるみもどき──ウーマだっけ?──がブツブツ言い出したので、ボクは無視して帰ることにした。

 魔法少女ってなんだよ。ボクがそんなものになれるわけないじゃない。

 高校受験まであと半年しかないんだから、無駄な時間は使えないんだよ。

 ウーマからなるべく距離を取って通り抜けたら、首の後ろを引っ張られた。


「ひゃっ!?」


「なにいなくなろうとしとんねん。

 マホはわいのパートナーとして魔法少女になるんやって」


 首の後ろから声がする。

 ウーマが後ろから襟を掴んでるらしい。


「だから、ボクはマホじゃないって!」


「コードネーム決める時に手違いがあったようやけど、マホがパートナーで間違いないんや」


「ボクは受験生なんだよ! そんな訳わかんない話に付き合ってるヒマなんかないんだってば!」


「魔法少女やって魔力の使い方覚えたら、能力全部上がって受験なんて楽勝や。

 それに、マホが魔法少女にならへんと、世界が滅ぶ。そしたら受験もできなくなるで」


「え?」 


 ウーマは、背中から下りてボクの前に回った。


「この世界は、今、インキーの大量発生の危機に瀕しとる。

 インキーは人の悪意から生まれる負の想念の塊で、人の想念を食べながら成長し、やがて世界を覆う。もちろんそうなったら世界は終わりや。想念を食われた人間は生きる屍になってまう。世界を覆ったインキーはわいらの世界にも進出してくることになるから、わいはそれを防ぐために派遣されてきたんや。この世界では魔力は10分の1に抑え込まれるからこっちではインキーの力もそれほど大きくない。でもわいらの力もこの世界では10分の1になる。わいはこの世界由来の魔力と共鳴することで本来の力を発揮できるんや。インキーの10分の1の力とわいの本来の力なら、わいの方が強い。だからわいの魔力と共鳴できる魔力の持ち主を探した。それがマホや。インキーは想念の塊やから普通なら触れることもできんけど、魔法少女になれば触れることも消し去ることもできる。わいはマホをパートナーにしてインキーと戦うためにやってきたんや。大丈夫、魔法少女の体は君らの言うアバターみたいなもんで、どんなに傷ついても異空間にあるマホ自身の体は傷一つ付かん。もちろん想念を食われたりもせん。万一負けても、マホは無傷で安全な場所に出現する。マホが魔法少女にならんと、この世界は近いうちに滅ぶで。マホの家族もマホの友達もマホ自身も死んでまう。それでええんか?いいわけないやろ。だから魔法少女になるんや、わいと契約や」


 とんでもない勢いでまくし立てられて、何を言われたのか、全然わからなかった。

 ただ、ボクを魔法少女にしたいってことだけはわかった。思い込み激しすぎない?


「えっと、ウーマだっけ?

 見た目兎っぽいのに、馬なんだ?」


「ウーマは種族名じゃなくて個人名や」


 あ、そう。


「で、あのさ、ホントに人違いってことはないの?

 魔力がどうこうって言っても、確かめたわけじゃないでしょ?

 ボクの名前だって違ってるわけだし。

 しょうじまほって名前の人も、探せばいそうじゃない?

 さっきも言ったけど、ボクの名前はみつほだからね?」


「読み方なんて、大した違いやあらへんって。

 そうや! 試せばええ!」


 ウーマが突然シャキッ!となって言った。

 いやもう、「叫んだ」ってレベル。


「信用できへんってんなら、証拠を見せればええんや!

 さあ、契約や!」


 なんか…ダメな方に加速してる気がする。

 絶対人違いだって。


「あのさ、読み方よりもさ、もっと大事なとこが間違ってるんだよ。

 ボク、女の子じゃないから、魔法少女(・・)にはなれないよ」


 決定的な否定だと思ったんだけど、ウーマは平気な顔をしてる。


「そんなん、大した問題やない。

 わいと契約して、マホは魔法少女になるんや」


「なにそれ、ムチャクチャだよ!」


 言った瞬間、背筋がぞわぞわした。

 あれ? ウーマの雰囲気も変わった?


「残念。状況が変わったわ。

 契約するか、死ぬか、今決めてや」


「え? 死ぬ? なんで?」


「もうじきインキーがここに現れる。

 マホが魔法少女になる前に消すつもりやな」


「え?」


 あ、なんか嫌な感じが近付いてくる。

 なにこのぞわぞわ、これがインキー?


「強敵が生まれる前に潰す、当たり前や。

 どないする? 今すぐ契約せえへんのなら、わいは逃げるで」


「ちょ、戦わないの?」


「さっき言ったとおり、今のわいじゃ勝てへんからな。

 無駄死にはごめんや」


「ボクはどうなるの?」


「魔法少女になって戦うか、このまま殺されるか。好きな方選び」


「なるから助けて!」


「OK、契約成立や。

 左手を出してや」


「こう?」


「甲が上や」


 てのひらを上に向けて出したら、裏返しって言われた。

 裏返すと、ウーマが指を掴む。


「この者、我が半身なり 我が力を託し、分身を生み出さん

 降臨せよ、マジカル・マホ!」


 ウーマが呪文?を唱えたら、ボクの中にあったかい何かが入ってきた。

 入ってきた何かが、ボクの体から光になって出て行って、目の前で人の形になっていく。

 腰まである青紫色の長い髪がまとまって、ツインテールになる。

 女の子の後ろ姿。そこに、光の帯がまとわりついて服になっていく。

 急に目の前が真っ暗になって、あ、目をつぶってるなと思って開けたら、目の前には誰もいなかった。


「あれ、いなくなった?」


 あれ? 声の感じが違う?

 周りを見ようとしたら、自分の手が目に入った。

 ボクの手じゃない。

 なにこれ、手袋してるし、ボクの手よりちょっと小さい。

 下を見ると、フリフリのドレスみたいなものから覗く胸元…って!


「女の子になってる!?」


「魔法少女(・・)なんやから、そりゃ女の子やろ」


 ウーマが当たり前みたいに言ってくるけど…って、あれ、ボクがいなくなってる!?


「なんで!?」


「だから、魔法少女の体はアバターみたいなものやって言うたやろ。

 話聞いてなかったんかいな」


「そんなこと、聞いたような気も…」


「コードネームはマジカル・マホ。

 来るで、インキーや!」


 言われて振り返ると、黒っぽいモヤモヤが集まってムシバ菌みたいなのになった。

 今のボクの膝くらいまでの大きさ。


「クエーッ」


「マホ、こいつくらいなら、蹴り一発でいける。

 マジカルキックや」


「え、キック? って、どうやって…」


「どっか行けって思いながら、蹴り飛ばすんや」


 え、蹴り飛ばす? キックじゃないの?


「え、えいっ!」


 サッカーボール蹴るような感じで蹴ったら、インキーは青いキラキラした光になって消えた。


「よっしゃ、うまいで!」


「これで、終わり?」


「今の奴はな。

 インキーとの戦いは、始まったばかりや」


「なにその打ち切りマンガみたいなの」


「魔法少女マジカル・マホの活躍は、ここから始まるんや!」


「まさかホントに女の子になっちゃうなんて…

 あ、どうやって元に戻るの? まさか戻れないなんてことは…」


「勝利の宣言をすれば──そうやな、ちょっと離れるから、『マジカル・マホ、ウィン』って言うてみ?」


「なにその恥ずかしいセリフ」


「ええから。

 離れるから、十数えてから言ってみ」


 うええ、はずかしい。

 ウーマが近くにいないのはよかったのかも。


「マ、マジカル・マホ、ウィン…」


 言ったら、一瞬目の前が暗くなって、ウーマがいた。

 あれ、離れてるって……え、さっきの場所と違う。


「勝利宣言をするとアバターが解除されて、わいの近くに本体が出てくるんや。

 アバターが破壊された時も同じや。

 そやから、わいが離れてれば、誰にも見られずにすむってわけや。

 契約したから、これからは、君らの言うテレパシーみたいなもんで話もできるし、わいと離れてても降臨できる」


「あのインキーっていうの、これからも出てくるの?」


「普通に暴れる奴と、マホを狙ってくる奴と、両方出てくるはずや。

 マジカル・マホの戦いはこれから始まるねん」


 だから、それ、打ち切りマンガみたいだってば。

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― 新着の感想 ―
ワートリでの主人公の肉体か。 シンウルトラマンでの巨人態か。 とにかくそんな魔法少女システムなんですね! 変身者に優しくていいですね( ´∀` ) そしてだからこそ男でも無問題! こういう設定好…
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