「静かな変革」 ドローン開発競争
中朝国が誇ると宣伝してきた「自律式ドローン」は、実際には高度なシーケンス制御に過ぎなかった。
飛行姿勢の維持と障害物回避だけを自動化し、隊形や演出はすべて中央の指令サーバーが逐一指示する――いわば“見せかけの自律”。ウクライナ戦争を見て、中朝国が自律制御に開発を転換したのが2025年。
その実態を知った日本とウクライナも、以下のドローンを開発していた。
ネットから切り離しても動作する AI端末としての自立制御。
陸軍向けの「索敵・観察・敵性判断・攻撃」を自動化する個体AI。
空軍向けの「多数編隊でステルス機を丸裸にする」群体AI。
今回の話では、その開発の裏側――
戦場で生まれた技術者たちの執念と、国家の限界を超えた協力の物語を描く。
ドニエプル川沿いの廃墟となった大学施設。
かつて研究棟だった地下室に、いまはウクライナ軍の臨時ラボが置かれていた。
日本から派遣された衛生兵たち――
その中には、夜になるとノートPCを開き、コードを書き続ける“ギーク”がいた。
「また敵のドローンか。姿勢制御だけで、あとは全部サーバー任せだな」
瓦礫の隙間から回収した中朝国製ドローンを分解しながら、
ウクライナの若い技術士官が呟く。
「自律式って言ってたけど、これじゃただのシーケンス制御だよね」
日本人衛生兵の一人が、基板をライトで照らす。
飛行姿勢、対物接触警戒――
それ以外は、中央サーバーから送られる“次の動作”を順番に実行するだけ。
「これじゃ戦場じゃ使えない。サーバー落としたら全部止まる」
「だからこそ、俺たちが作るんだよ。
ネットが死んでも動く“個体AI”を。」
技術士官の目が、薄暗い地下室で光った。
■ 第二節 個体AIの誕生
開発は、戦場の現実に合わせて進んだ。
索敵:熱源・動体・電磁波を統合して敵を見つける
観察:敵の装備・行動・向き・速度を解析
敵性判断:武装の有無、攻撃意思、危険度を自動評価
攻撃:最適な角度・距離・弾道を算出し、射撃を自動化
「これ、ネット切っても動くの?」
「動く。全部ローカルAI。
学習は事前に済ませて、戦場では推論だけだ」
「……中朝国のドローンとは別物だな」
「向こうは“見せるためのドローン”。
こっちは“生き残るためのドローン”だよ」
衛生兵たちは、負傷者の処置を終えた夜に、
廃墟の地下でコードを書き続けた。
■ 第三節 群体AIの構想
ある夜、ウクライナ空軍の大佐が地下室に現れた。
「君たちの個体AIは素晴らしい。だが、空軍は別のものが欲しい」
「別のもの?」
「ステルス機を丸裸にする編隊AIだ。」
大佐はホワイトボードに図を描いた。
数十〜数百のドローンが散開
それぞれが微弱な電波・赤外線・磁場変化を観測
個体AIが局所判断
群体AIが全体を統合し、ステルス機の“空間の歪み”を検出
「ステルスは姿を消すんじゃない。
空気の流れ、熱、電磁波――“痕跡”を残す。
それを多数のドローンで拾えば、必ず見える」
日本人衛生兵が息を呑んだ。
「これ……日本の空自も欲しがるやつだ」
「だから共同開発だ。
ウクライナと日本で、世界初の“群体AI”を作る」
■ 第四節 試験飛行
廃墟の街の上空に、十数機の試作ドローンが舞い上がった。
個体AIが自律的に散開し、
群体AIが全体の配置を調整する。
「敵機の模擬ステルス信号、送るぞ!」
ウクライナ技術士官が端末を操作すると、
ドローン群が一斉に反応した。
「捕捉した! 位置、ここ!」
群体AIが算出した座標が、画面に赤く表示される。
「……成功だ」
衛生兵たちは、夜空を見上げた。
廃墟の街に、静かにドローンの編隊が輝いていた。
■ 第五節 技術の行き先
その技術は、やがて日本へ渡る。
樹海ドーム周辺の民間武装勢力にも、
熊谷真実を経由して自衛隊の上層部にも、密かに共有される。
近い将来、国家が混乱し、官邸が機能不全に陥る中で、
この“真の自立制御ドローン”は、
日本の防衛の最後の砦となっていく。
現実社会の中国軍も”本物の自律AI兵器”へ急速に移行しています。
DeepSeek搭載UAVは“ネット切断でも推論可能な自律型”で、時速50kmで自律走行する軍用車両にも搭載、AIアルゴリズム競技会を開催し、空中戦AIを開発(防衛白書より)とのことです。
小説の中でも、中朝国とウクライナ+日本の開発競争が、激しくなっていきます。




