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第50話:深淵の遺志、幽幻の守護者

第50話:深淵の遺志、幽幻の守護者

「……計算通りだ。ここがかつての超古代文明の中心地、王都の跡地だよ」

カイトがコンソールを叩き、魔導ホログラムをラウンジに投影します。

展望ガラスの向こうには、崩壊しながらも威容を保つ巨大な神殿群が広がっていました。しかし、その景色はあまりにも異様でした。

「ジンさん、見てください。あの街、透けてませんか?」

「ああ。建物だけじゃない。周囲の魚たちも『幽霊』みたいだ……」

リオンの指摘通り、海底に佇む都市は実体を持たない幻影のように揺らめいていました。

そこへ、街全体を覆い尽くすほどの、巨大な「白い影」がゆっくりと降臨します。

「――出たな。**『幽幻のクラーケンファントム・クラーケン』**だ」

それは、体長百メートルを超える巨大なイカの姿をしていました。しかし、その体は氷の彫刻のように半透明で、内側からは銀河のような魔力の脈動が漏れ出しています。

その巨大な瞳には、数千年にわたる深い孤独と、何かを頑なに拒絶する「悲しみ」が宿っていました。

解析:哀しき永久欠番ゴースト

「閣下、クラーケンが触手をこちらへ。……ですが、攻撃の衝撃波が検知されません」

セバスが冷静に報告しますが、カイトの【真理の演算鏡アカシック・シミュレーター】は、さらに異常な数値を弾き出していました。

「……リオン君、不味いぞ。こいつ、**『時空間の特異点(タイム・ラグ)』**そのものだ。このクラーケンは、古代都市が沈んだ瞬間の『記憶』を、魔力で現実に固定し続けている。……自分が守れなかった都市の最後を、永遠にリピート再生しているんだよ」

「……それって、一生悪夢を見続けてるってこと?」

「ああ。放置すれば、彼の精神は瘴気に食われ、この海域一帯を次元のブラックホールに引きずり込んで消滅させるだろう」

その時、クラーケンから放たれた思念波が、リオンの**【深淵の対話者(アビス-テイマー)】**に直接届きました。

『……去れ……。ここは……私の……墓場だ……。あの子たちを……二度と……失わせはしない……』

その声は、震える子供を抱きしめる親のような、痛々しいまでの愛に満ちていました。

クラーケンは、沈没時に守りきれなかった市民たちの魂を、自らの半霊体化した触手の中に抱え込み、必死に守り続けていたのです。

救済:深海の抱擁

「……もういいんだよ、クラーケン。君は、十分頑張った」

リオンが展望ガラスの前に立ちました。神の加護による「絶対乾燥領域」のおかげで、リオンとクラーケンの間には、冷たい海水も、凄まじい水圧も存在しません。

リオンはガラス越しに、クラーケンの巨大な触手にそっと手を当てました。

「君が守りたかった人たちの魂は、君の中でずっと凍りついたままだ。……でも、俺の『牧場』なら、みんなをもう一度、温かい太陽の下で笑わせてあげられる」

『……太陽……? ここは……冷たくて……暗い……底なのに……?』

「俺を信じて。――【神羅万象の絆(ユニバーサル・テイム)】・深淵共鳴!」

リオンの琥珀色の瞳が黄金に輝き、ノーチラス・アルカから放たれた慈愛の波動が、クラーケンの半透明な体を包み込みました。

カイトが調整する「魔力同調周波数」と、リオンの「救いたい」という純粋な願い。

それが重なった瞬間、クラーケンの体を縛っていたどす黒い瘴気の鎖が、霧散していきました。

「……キュィィィィィ……!!」

クラーケンが、歓喜とも号泣とも取れる鳴き声を上げます。

その巨大な体が白銀の光となって弾け、リオンの掌の中へと吸い込まれていきました。

『ピコンッ!』

幽幻のクラーケンファントム・クラーケンとのテイムが完了しました!』

『古代都市アトランテスの遺志を継承しました。箱庭に「海底都市エリア」が追加されます!』

結末:そして、沈黙の海へ

光が収まった後。海底にあったはずの古代都市の幻影は消え、そこにはただ、静かな砂地と無数の沈没船の残骸だけが残されていました。

しかし、リオンの隣には、小さな、半透明のクラゲのような姿になったクラーケンが、ふわふわと浮かんでいます。

「君の名前は、深海の真実を知る者……**『シルビア(しるびあ)』**だ」

シルビアは嬉しそうにリオンの周りを一周し、そのままリオンが展開したポータルを通って、箱庭の中へと消えていきました。

そこには今、レオが爆速で建設を開始した「クリスタルが輝く新しい海中都市」が待っています。

「……リオン君。君、とうとう幽霊ゴーストまでペットにしたのか。……まあ、あっちの世界の物理学者たちが見たら発狂するような現象だったけど、ハッピーエンドなら文句はないよ」

カイトが疲れたように笑いながら、予備の眼鏡をかけ直しました。

「ええ、リオン様。海の底に、あのような美しい守護神がいたなんて……。シルビアちゃんたちの新しいおうち、私も一緒にデコレーションさせていただきたいですわ」

ルミナスが満足げに扇子を広げます。

史上最も快適で、最もドラマチックな「お墓参り」は終わりました。

しかし、シルビアをテイムしたことで、リオンの図鑑にはさらなる「裏ページ」への導きが記されました。

「空の向こう:星を渡る鯨」。

一行の次なる舞台は、ついに海を越え、空を超え――世界の「頂」へと向かうことになります。

【これにて「深海の墓場編」完結!】

いかがでしたでしょうか? 幽霊となったクラーケンを救い、古代都市の魂ごと「箱庭」へと招待する、リオンらしい究極の救済となりました。

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