不確かな味方
「ヴィルモスさ……っ」
声をかけようとした途端、氷狼が後ろへ飛んでヴィルモスさんから距離を取った。
クレマン様が再び魔力を地に這わせる。
アダンさんは、私達とヴィルモスさんとの間を遮るように氷壁を作り出した。
「っ……え?え!?」
倒れていた大剣の騎士さまが起き上がり、剣を納めて鞘ごと振りかぶる。
今度はヴィルモスさんが距離を取った。
「罠の可能性があります。それに、彼が本人かどうかも分かりません」
わ、罠!?
ほ、本人かどうか??
アダンさんの言葉に戸惑い、氷の先にいる人物を改めて確認する。
黒髪に眼鏡、赤い瞳。呆れるようにやや伏せられた瞼、不機嫌そうに引き結ばれた唇。
ヴィルモスさん本人にしか、見えない。
それに、一応客人である私を“あんた”と呼ぶ人だって彼しかいない。
「さきほどご覧になったように、あちらには幻影使いがいます」
「あ、え、げんえい!」
「……幻影?あぁ、あれか」
ヴィルモスさん?が邸の方へ目をやり、雪原と邸の間にある木々へ手を伸ばした。
炎が上がる。
針葉樹の葉を巻き込みながら、炎をまとった何かが倒れた。
「っ……!」
クレマン様が魔力を這わせ、いまだ燃えている何かへと注ぎ込む。
むくりと人影が起き上がると、合わせたように炎は消えた。
「永久騎士2名……幻影使いと大叔母、死霊術師だ」
呟いたクレマン様とアダンさんが、何かを確認するように視線を交わす。
え?何?
えっと……ヴィルモスさんは幻影かも知れなくて、でも今たぶん幻影使いさんが燃えて、クレマン様が蘇らせて……?
「協力させてください、クレマン様」
考えが纏まる前に、氷の向こう側でヴィルモスさんが微笑んだ。
「もちろん、協力と言っても二百体を端から燃やして行こう……なんて非効率的なことはご提案しません」
大げさに両手を開き、空へ向ける。
いくつもの炎を出した手は、やろうと思えば簡単に氷壁を溶かせるだろう。
けれど、そうしないでいる。
「…………居場所をご存知なのですか」
クレマン様が問いかけ、ヴィルモスさんは笑みを深くした。
「もちろんです」
出来すぎと言えるほど紳士的な笑みは、こんな場面じゃ不気味にすら見えた。
クレマン様とアダンさんが頷き、氷壁を解く。
ヴィルモスさんがくるりと振り返り、歩きだした。
迷いなく進む足取りを、クレマン様、私、アダンさんとついて行く。
幻影使いなど使役権をうばった者たちは、後から来た仲間がそれと分かるよう跪かせて置いて行った。
進んだ先は邸の中。
使用人たちが集まってガタガタ震えているのを横目に、ずんずんと進む。
辿り着いたのは、イノートル辺境伯の執務室だ。
外で永久騎士たちが騒ぎを起こしてる中、驚くほど静まり返っている。
話の筋は最後まで決めてあるのですが、雑念(某ゲームにハマった影響)で全く筆が進まず……。
そうこうしてる内に早数年、今見るとキャラデザから変えたい勢いで……。しかし全部書き直す気力はないっ……!
ので、今後のあらすじだけ書いて閉めたいと思います。
すみません!




