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第21話 ダンシングラジオ

♪アダージョ(現在)♪


「お客様! 美しいです」


 赤いパーティードレスを着せられた僕はくるりと回るとスカートのひらひらがふわりと浮かび上がり、鏡に映る僕を彩る。


「本当に、こ、こんなの着ていいのかな。恥ずかしいな」


「詳しくは存じ上げませんが、どこか晴れの舞台に上がるとお連れ様から聞いております。これくらいしっかりとしたものはお召しにならないと」


 た、確かに。お化粧も着こなしもちゃんとしないとポエットくんに恥をかかせちゃうな。


「あのぉ……」


「なんでしょうか?」


「お化粧とかしたことなくて。やり方ってどこで勉強するんですか?」


「うーん。そうねぇ⋯⋯。これとかどうかしら? 試供品だけど」


 A4用紙の楽譜を渡される。三分の三拍子。ワルツだねえ。


「お化粧魔法?」と楽譜のタイトルを読み上げる。


 そうか。お化粧って魔法でやるのか。そういえば、アレグロの母親もお出かけ前には、きれいな声で何か歌っていたが、あれが⋯⋯。なるほど。


「♪LA LA HA~」


 軽く唱えてみると、スポンジが突如現れファンデーションがぺたぺたと塗られる。


「おお! 便利!」


「手先の器用な人なんかは自分でお化粧するんだけど、苦手な人や若くて経験値低い人なんかにはお化粧魔法、大人気なんですよ。下の階の魔法書店コーナーにお化粧本コーナーあるけど、ここでも、一応、スタンダードな本は売っていて」


 ふんふんと説明を聞きながら、ページをめくっていくと、店員さんが特定のページを指差す。


「これとかいかがでしょう? お客様のパーソナルカラーって赤だと思うんですよね。赤の方のお化粧を最初から最後までやってくれるマクロ魔法。その名もローズワルツ。ドレスとセットでお安くしときますよ」


 た、楽しい。女の子のおしゃれがこんなに楽しいなんて。本当は男なのにいいのかな⋯⋯。


「こんなの楽しんでいいのかな⋯⋯」


「いいんですよ。あんまり詳しい事情は知らないですが、全国民が見ている晴れの舞台だとお聞きしています。これくらいのおしゃれしないと皆さんに失礼ですよ」


 うまく丸めこまれてしまった。


「ローズワルツください」


「お買い上げありがとうございます!」


 平均律でローズワルツを歌ってみると、下地からファンデーション、コンシーラ、眉、目元、チーク、リップとノンストップで次々とお化粧品が飛び出して来て、僕をきれいにする。


「す、すごい。まるでお姫様みたい⋯⋯」


「お綺麗ですよ。さあさあ、お連れ様がいらしてます」


 パンプスを履いて試着室の外へ出ると、思わずよろけてしまう。ポエットくんがタキシード姿で待ち構えていた。僕の姿をちらちらと見て、赤くなっている。


 タキシードのポエットくんと赤いドレスの僕が対になって並ぶ。これって⋯⋯まるで。


「こ、これは、だ、だんでぃずむだ!」


「??」


 僕の言葉に、ポエットくんは怪訝そうな顔をする。


「ポエット王子。君のタキシード姿はとてもダンディーだ。だから、私は、その引き立て役としてこんなものを着ているにすぎない! そ、そうだ。これは、すべて男らしさのためなんだ! これは、男らしい服装なんだ。私が今、心揺さぶられているのは、武者震いだ。断じて乙女心などといったふざけたものではないっ!」


 な、何の言い訳をしてしまったのだろう。思わず自分の台詞にのぼせてしまう。


 ポエットくんはしばらく黙り込んで考え込む。な、なに。思わせぶりなことをして。


 そして、満面の笑みを浮かべてこう言った。


「でも、かわいいよ」


 いやあああああああああああああああ! ぼくはへんたいだあああああ!


 スカートの裾を持って、パンプス脱いで、全力疾走してしまった。顔見られたくない。によによしている顔なんて絶対に!


 僕は、男なんだ! こんなことで嬉しくなるようなふしだらでエッチな人間であるはずがないんだ! 恥ずかしい人間すぎる。ダメ人間だああああ。


 その後の僕は、放心状態のまま、謎の列に並んでいた。ポエットくんもグロウルくんも普段着に戻っている。僕は、セーターと花柄スカートだ。


「こ、ここは?」


「あ、正気に戻った。色々、買い物したからさ。福引券をもらったんだよ。まあ、一等賞の旅行とか当たっても、困るけど、息抜きにね」


 順番が巡ってきたので、ガラガラポンとくじ引きマシーンを回す。ティッシュ、ティッシュ、歯磨き粉、ティッシュ。ろくなもの当たらないねぇ。ま、くじ引きなんてこんなもの。


 そう諦め、最後の1つを回したその時だった。黄色い玉が出る。3等って書いてあるねぇ。


「おめでとうございまーす! 3等のダンシングラジオが当たりましたー!」


 店員さんは、チリンチリンとスズを鳴らす。 ダンシングラジオ?


 よくわからないまま受け取り、デパートの外へ持ち出す。


「なになに? 世界中の思わず踊りたくなるBGMを24時間常時流しているラジオ局ばかり電波入るんだってさ」


 よくわからないまま、ボタン操作する。


「なになに? FMチャチャチャ?」


 音楽が流れると、体が勝手に動き出し、僕とポエットくんは社交ダンスをはじめてしまう。


「な、なにこれ! 本当に体が動く! チャンネル変えてー!」


 次は、FMサンバ。サンバのリズムに会わせて体が動く。


「変えて!」


 AMヒップホップ、FMテクノ、次々と音楽のジャンルが変わっては、それに合わせて体が踊りだす。


「やめてー!」


「この局が最後かな、AM盂蘭盆会」


「うらぼんえ?」


「つきがーでたでーたーつきがーでたーよいよい♪」


 盆踊りなる音楽が流れて、それに合わせて踊ってしまう。どんなラジオ局なの⋯⋯。

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