1 えっ? これ夢よね
「はぁぁぁ~。休みだ~休みだ~♡」
私はお気に入りのパイプベッドに転がった。
風呂上がりで肩の出たネグリジェの上にもこもこのカーデガンをはおり、頭にはタオルを巻いている。
巻いたタオルから長い髪が覗く。
私 野中歩美25歳は、中学生教師だ。
外見は不本意ながら中学生にしか見えない。
でも胸はちゃんとあるぞ!!
誰だ?
合法ロリなんてぬかしやがるのは!!
お尻ペンペンですよ!!
風呂に入ってボーナスが出たので通販カタログのバックを眺め。
「どれ買おうかな~茶色のバックボロボロだから~あっ!! このオレンジのバックも可愛い~ウサ子もそう思うだろ」
私はウサギのぬいぐるみに同意を求めた。
ベッドの上でゴロゴロしていたら床が光り魔法陣が現れた。
余りの眩しさに。
「目が……目が……!!」
某アニメのギャグをかましてしまう。
私は異世界に転移された。
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「ん……」
光が収まり私は目を開ける。
私はベッドの上に座り込み。
何度も目をこする。
ん~どう見てもベルサイユ宮殿みたいな所にいた。
しかも謁見の間? みたいな所。
赤い絨毯が引かれ王様と王妃様が豪華な椅子に鎮座する。
ベッドは王様達から二メートルの所にドンと置かれている。
貴族みたいな人と騎士たちがいた。
王様と目が合った。
口元がひくついている。
王妃様の方を見る。
すっと目をそらされてしまった。
ん~私は腕組みをして考える。
「あっ!! これは夢か!! 納得。納得」
私はウサギのぬいぐるみを抱き、布団を被って寝ることにする。
「おい。お前……」
「何も聞こえない。これは夢。これは夢。大丈夫。大丈夫。寝たら皆消える」
「おい。起きろ」
「五月蠅い!! 夢の分際で話しかけるな!!」
布団を剥ぎ取ろうとする傲慢貴族ぽい男と布団の引っ張り合いをした。
夢の分際で何て無礼なんだ!!
レディの扱いがなってない!!
「誰がレディだ!!」
あれ?
聞こえていた?
男が私の右手首を掴む。
私は右手の親指を手前に向け、肘を曲げて引き抜いた。
貴族ぽい男は怒り私の首を絞める。
私は左足を後方に引くと体の回転を利用して相手の腕を強く引き寄せ。
腰を下ろし相手の腕を上方に持ち上げ固めた。
もちろん腕を固める時、相手の手首を下から押さえつけた。
これ護身術の常識。
「ひぎやぁぁぁ~!! 騎士達!! 何をしている!! 助けろ!!」
貴族のおっさんが喚くと。
バラバラと騎士達が、私を取り囲む。
しか~し!!
夢の世界で無敵状態の私に勝てるはずもなく。
私は、騎士達を千切っては投げ千切っては投げた。
最後に偉そうな団長ぽい奴が出てきた。
私は彼の顔を見た。白い髪に青い瞳の美形の騎士。
「あ~~~!! 白薔薇の騎士のオルフェンス!!」
「何故お前が私の名前を知っている? それになんだ? 白薔薇の騎士って!!」
「あ……隊長知らないんですか? 女官やメイド達が隊長の事をそう呼んでいるんですよ」
「なんだって!! 知らなかった!! なぜ? お前が知っているんだ?」
「【虹色の薔薇と竜神の巫女】っていう乙女ゲームに出てくるんだよ」
「白薔薇の騎士とか赤薔薇の魔導士とか青薔薇の神官様とかが出てきて竜神の血を引く巫女と一緒に竜神の神殿を周り竜神の呪いを解く旅に出るんだ。大ヒットの乙女ゲームで小説化や漫画化や映画化やアニメにグッズが出てる」
「漫画? 映画? アニメ? なんだそれ?」
「あ~~~なんて言うか~~」
私の右手にいつの間にか、コントローラーが握られていた。
「そうそう。こう言うコントローラーに線が繋がっていてこれがゲーム機でテレビに繋いでゲームデスクをゲーム機に入れると【虹色の薔薇と竜神の巫女】のオープニングになって……」
コントローラーにゲーム機にテレビが現れても私は不思議とは思わなかった。
だってこれ夢だもん♥
コンセントは何処だよって突っ込みは誰もしない。
オープニングの映像が流れて虹色の薔薇に例えられる騎士や魔導士や神官が現れる。
「ほら。この白い髪で青い瞳の騎士が、オルフェンス・ゲブリュル騎士団長だよ」
「あ……本当だ。似てる。でもなんか団長魔法使ってないか?」
「ああ。団長の家に一子相伝で伝えられている【咆哮残剣】って言う秘奥義だよ」
「貴様!! なぜ!! それを知っている!!」
「だって公式本に出ているもん♪」
いつの間にか私の手に本が出てきて彼に技のページを指示した。
「見たこともない文字だ」
「日本語は読めないの? 夢の癖に設定が細かいな~。【咆哮残剣】ゲブリュル家に代々伝わる秘奥義で今現在使えるのは父親のクリスト騎士伯とオルフェンスのみと書いてあるよ。因みに巫女と旅するうちにもっと強い秘奥義を使えるようになるんだ。他のみんなも色々必殺技を使うよ」
「この竜神の巫女って何者なんだ?」
「この世界が瘴気や魔獣に見舞われたとき、女神タリーズに召喚される異世界の住人だよ。巫女といることでパワーアップできるんだよ」
「この巫女……お前に似ているな……」
「失礼な!! 私の方が胸あるよ!! こんなチンクシャぺったん、頭お花畑のクソ女と一緒にすんなや!!」
「黒髪に黒い瞳だ」
「日本人は皆黒髪に黒目だよ!!」
「なあ……。この魔導師トリロビート様に似ていないか?」
「隣の国の天才魔導師の?」
「トリロビートとオルフェンスは幼馴染で恋敵だったけどアリヤ伯爵令嬢が王太子の婚約者になって二人共ふられるんだよ(笑)」
「貴様!! 何故!! それを知っている!!」
「他にも面白いエピソードあるよ。皆聞きたい?」
メイドや奥方がうんうんと頷く。
「あのね二人共腕白で馬の尻尾をちょん切ったり、落とし穴に神官様を落としたり、それで二人オルフェンスのパパさんに木に吊るされるんだよ。それからね~むぐっ……」
オルフェンスは私の口を塞ぐ。
個人情報の流出を防ぎたいらしい。
「お前余計なことをしゃべるな!!」
なにすんだ。これから二人がおねしょした事をばらそうとしてたのに。
「兎に角いかがなさいます王よ」
オルフェンスが振り向くと。
王はテレビやゲーム機を触っている。
「これはワシたちには触れぬのだな? このような音楽は初めて聴く。どのような楽器を使っているのか?」
「あなたこのベッドや本は触れましてよ。あら~!!」
「いかがした王妃よ」
「この本、絵が一杯だわ~凄くリアルに書いてありますわ。バックに服に靴? あら真珠のアクセサリーまであるのね~」
「なんと!! わしにも見せてくれ」
「駄目です。はしたない下着の絵まであります」
「母上~私にも見せて下さい。裏に玩具の絵がある~それにベッドの上のこの四角いのは何でしょう?」
王女が携帯をいじくる。
「姫様!! 無暗に触れてはなりませぬ!!」
侍女が取り上げようとする。
イヤホンのコンセントが外れオルゴールで【金平糖の踊り】が流れる。
うん。私はオルゴールの音色が好きで、よく眠る前にかけている。
「まぁまぁ音楽ですわ」
「綺麗な音色だ~」
「ふむふむ。これはどういう魔道具なのだ?」
「携帯だよ。魔道具じゃないよ。私の世界に魔法は無いよ」
バタン!!
その時ドアが開いた。
「おい!! オルフェンス!! こっちに竜神の巫女が来てへんか?」
「これのことか?」
オルフェンスが私を摘まみ上げる。
「おおっ!! せやせやすまんな~こっちで召喚したのに手違いか。妨害かはわからんがそっちにいっちまってな~ほなら回収するわ~」
「ちょい待て~~~~~!!」
オルフェンスが私を回収しようとしたトリロビートを止める。
「なにあんた!! 失礼にもほどがあるわ!!」
「これはお前の仕業か?」
王が尋ねる。
「瘴気が溢れて狂竜王が復活したんや」
「聞いてないぞ!!」
オルフェンスが、突っ込みを入れた。
「言うとらんからな。緊急事態やさかい。最も大神官様の許可は取ってあるんや。後で神殿から連絡が来るやろ」
「まぁ。さっきこの子が言っていた【ゲーム】の内容と同じですのね」
「【ゲーム】なんやそれは?」
「これですのよ。あなたも出ていてよ」
王妃はテレビを指す。
「おおっ!! これは凄い魔道具や!! えっ? 触れへんのか?」
「不思議だな。これが異界の道具か。予知をする道具なのか?」
王様はテレビを触ろうとするが、さっきと同じで触れない。
「異界にはそんな神道具があるのか?」
眠くなった私は興奮してしゃべくる皆を放置してベッドに入った。
この変な夢も起きたら消えているだろう。
まあ。美形の騎士オルフェンスが見れたから良しとするか。
魔導師は何故か大阪弁だったな。
ゲームでは普通に喋っていたが。
バグか?
まあいいか。
おやすみなさい。
ぐーっ。
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2018/6/5 『小説家になろう』どんC
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