↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/8

よく晴れた日の、ぶつかられおじさん

杉山隆が初めて、自転車にぶつかられたのは梅雨には珍しい、よく晴れた日のことだった。


その日の昼休憩、同僚の吉岡は杉山に聞いた。

「その自転車、避けれなかったの?」

「避けれたよ」

「なんでぶつかったの?避ければ良かったじゃない」

「それが、おかしい」


経理の杉山は、会社の同僚だが、理屈っぽい。

営業部との相性は最悪だ。


杉山は弁当の蓋を開けながら聞いた。

「何がおかしいんだよ」

「危険な方が直進して、安全な方が避けるという仕組みだ」

「自転車が危険なら、なおさら避けろよ」

「それを繰り返すと、自転車側は学習する」

「何を」

「人間は避ける、と。」


杉山の主張はこうだった。

「横断歩道に歩行者がいれば、自動車やバイクは止まる。教習所で習うことだ。」

また杉山の謎の主張が始まった、と吉岡は思った。

「しかし、自転車は横断歩道に歩行者がいても止まらない。」

吉岡が口を挟もうとすると、杉山は続ける

「また、歩行者側にのみ信号がついている時も同じだ。車両側が赤信号でも、自転車はほとんど止まらない。減速すらしない。」


吉岡は箸を止めずに食べながら尋ねる。

今日は、弁当にほうれん草が入っている、歯に詰まるので嬉しくはない、と吉岡は思った。


「確かに自転車が間違っているかもしれないが、何も轢かれることはないだろう。

 危ないし。そこまでして避けない理由は何なの?」


「行動のあとに不利益がなければ、その行動は強化される」


「AIみたいな言い方だな」

「自転車乗りよりも、AIの方が安全倫理が高い」


この理屈っぽさと強引なこじつけが、いつも敵を作る。

最も、こじつけに関しては、仕事では抑えているようだ。


陰で、営業部の若手が「ウザすぎ山」と呼んでいるのを聞いたことがある。

吉岡は、若手をたしなめたが、きっと若手同士ではまだ、そう読んでいるに違いない。


杉山は味噌汁を飲んだ。

ズズズ。


「つまりだ、僕が避けるという行為は、一見すると事故を回避している」

「防いでるよ」

「短期的にはね」

「は?」

「それでも長期的には、危険走行自転車を育てている」


吉岡はしばらく杉山を見た。


「お前、自転車にぶつかられて頭でも打った?」

「肩だ」


「じゃあ元からか」



最初に聞いた時も、頭をぶつけたかな、と吉岡は思ったが、次週の話を聞いて、確信に近づいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。